日刊鹿島アントラーズニュース

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2013年9月16日月曜日

◆【J1:第25節 甲府 vs 鹿島】レポート:プロビンチア王道の勝利。甲府の最大値が“格上”鹿島を上回って勝ち取った勝点3(J's GOAL)


http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00161735.html

9月14日(土) 2013 J1リーグ戦 第25節
甲府 3 - 0 鹿島 (18:35/中銀スタ/15,137人)
得点者:7' 柏好文(甲府)、31' 佐々木翔(甲府)、44' パトリック(甲府)
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第21節の浦和対大分のこともあったから、2-0になっても3-0になっても何となく不安な気持ちだった。甲府の先発11人のゴール数を合わせた数(14)を1人で決めている大迫勇也の裏を取るタイミングと走力を含むフィジカルの強さ、柴崎岳の決定的なパス、ジュニーニョのドリブル、遠藤康のミドルシュートなど、もうちょっとで1点になりそうなシーンを前半から何度も見せられれば、ミスター楽天家でない限り当然。
しかし、3-0という結果で終わってみると、第25節の鹿島戦は城福浩監督のストロングポイントがわかりやすい形で結果として現れた試合だと確信できた。積み重ねている段階では内容でも結果でもそれが見えにくい時期もあったが、個々の力が上の鹿島を相手に失点につながりそうなヒヤっとする場面も、与えた決定機も少なく、甲府は少ない決定機に決めることができた。内容でも、鹿島の個に対して慌てることも少なく、ジウシーニョのアグレッシブな守備や青山直晃のカバーのうまさで与えた決定機は――どちらに勝ってほしいと思って見ているかで数え方は変わるが――2回くらい。最後の場面では山本英臣や佐々木翔が身体を寄せて自由にヘディングをさせていなかったし、こぼれ球も福田健介や保坂一成が高い集中力で拾い集めた。できることはほとんど全部やって、出せるものは全部出して、“格上”の鹿島と10回やって1回~2回恵まれる“運”ではなく“実力”できちんと勝った。「甲府の3-4-2-1は浦和や広島と違う」と言われ、弱者の戦い方のように言われることもあるが、ここ何節かを見ていると、今いるメンバーで最大値を出すためのサッカーだという城福監督の表現がしっくりくる。

甲府サポーターがキックオフ直後からアフターバーナーに点火して声を出し跳ねた前半、その3分。大迫に裏を取られそうになるが青山が山本をカバーしてシュートを打たせなかった。ただ、この日はこういうシーンが何度かあった。「誰からのパス?」と思って出どころに視線を戻すと、大抵は20番(柴崎)。プロ野球なら5~6チームがドラフトで1位指名したような注目を浴びて鹿島に入った選手だが、確かにすごいテクニック。この感じが続くのか…なんて心配し始めようとしていたが、その4分後に甲府の韋駄天が先制ゴールを決める。その人は、10年後も播戸竜二(鳥栖)のような存在感を放つ選手としてJリーグの世界で生き残りそうな迫力が出てきたスーパー柏好文。ジウシーニョが左サイドから入れたクロスにゴールラインぎりぎりの角度のないファーサイドで合わせた。大迫には及ばないが、直近6試合で4ゴール。今年のオフはスーパーカーを一括で買っても生活に困らない契約を勝ち取りそうな勢いだ。

甲府が先制する→鹿島が前掛かりになる→甲府がカウンターで追加点、というのが理想的な展開だったが、前掛かりになる鹿島の圧力を甲府が受ける時間が続いた。しかし、この時間帯にイエローカードを4枚もらいながらも甲府は耐えた。ここで浮足立たなかった点は成長だし、ここ数試合の結果から来る自信もあるだろう。
柴崎を起点とする18分の大迫のシュート、22分のポストに当たった遠藤のミドルシュートなど、鹿島が同点に追いつくチャンスはあったが、ここで決め切れなかったことが試合を分けたと、結果論として言えるのではないだろうか。逆に、甲府はこの難しい時間帯に手にしたコーナーキックから追加点を挙げることができたことが大きい。それも、ここまでヘディングでいいシュートを何本も打ちながらもゴールの枠が小さすぎて決まらなかった佐々木が決めたことが今後にもつながる。溜めて飛び込むダイビングヘッドは“突き刺さる”という表現がオーバーでないパンチのあるシュートになった。ただ、心配症の甲府サポーターの多くは「サッカーは2点差が一番危ない」と思ったのではないだろうか。相手が相手だけに。相手は10個のタイトルを1つの大きな星にまとめないとユニフォームの胸が星条旗みたいになってしまうアントラーズ。

しかし、まさかの2点差になったことで鹿島が少し慌てた。大迫あたりは落ち着いていたようだが、攻撃の組み立てのところで少し雑になりかけた印象を受けた。そして、44分にパトリックが山本のFKから駄目押しの3点目を頭で決める。ジウシーニョと競り合ったみたいになっていたのはパトリックの天然なところなのだが、この日はスペースのあるカウンターでは彼のストロングポイントが十分に発揮されていた。天皇杯2回戦の福島戦ではウィークポイントを発揮したが、この先は全試合“格上”が相手なのでパトリックはストロングポイントを活かすことに重点を置いて、ウィークポイントの改善は3年計画で進めればいい。

3-0になっても、心配症の甲府サポーターは後半の45分を不安な気持ちで迎えたかもしれない。トニーニョ セレーゾ監督が会見で言ったように、“甲府が前半の45分で3点取れるなら、鹿島も後半の45分で少なくとも3点取れる”はずだからだ。ダヴィを投入し、2トップにシステム変更してきた鹿島。城福監督は前日練習後の囲み取材で、「大迫の1トップの鹿島と、ダヴィとの2トップの鹿島の両方と90分間で対面する可能性もある」という趣旨の話をしていたが、まさにその通りになった。ダヴィと代わる選手が土居聖真ではなく遠藤だったのは意外だったが、どちらにしても鹿島がアントラーズであることには変わりない。
51分には甲府のゴール前でパチンコみたいになってヒヤっとしたし、54分にはまたもや柴崎から大迫に決定的なパスが通ったが、山本が身体を寄せて自由にヘディングをさせなかった。鹿島の選手は高いポテンシャルを持っているがそれを発揮させず(できず)、甲府は自分たちのポテンシャル(最大値)をほぼ発揮して、チームとしてその差を埋めていた。そのためのシステムであり、日々の練習であり、鹿島対策。睫毛の長いヴァンフォーレクィーンが55分頃に持って来てくれたハーフタイムコメントには、「ここからは自分達との戦い、スタートから謙虚にプレーし続けること」と城福監督の言葉が印刷されていた。トニーニョセレーゾ監督の言葉は「まだ45分戦うチャンスがある。パワー、スピード、コントロール、全ての面で質を高めろ!」。
このぶつかり合いとなった後半は、鹿島が優勢な時間が長かったが組み合ったままという印象。決定機は86分に大迫が頭でゴールネットを揺らしたもののオフサイドでノーゴールだった場面くらい。78分に投入された添加物なしでも腐らないFW・平本一樹のゴールが決まっていればパーフェクトな勝利だったけれど、甲府が3-0という状況を上手く使って鹿島をいなして無失点で勝利を手にした。素晴らしい、誇らしい勝利。シーズンはまだ続いているが、プロビンチアの王道を行く勝利。海野一幸会長は城福監督との契約延長を大幅に増やしたくなっているのではないだろうか。

4位・鹿島にとって横浜FMは少し遠くなったが、ACL圏内は目の前。最終コーナーの立ち上がりは差し合いになっている感じなので、課題のアウェイをどう修正するかで、来年の国際線で貯まるマイルの数が左右されるだろう。甲府は守備の堅さを活かし、相手が格上という条件までも活かして最大値を発揮して16位の湘南に勝点差8をつけた。ただ、湘南の曹貴裁監督も選手も、磐田もまったく諦めていない。一戦必勝の戦いは続く。甲府の次戦は埼玉スタジアム2002に乗り込む2位・浦和戦(9/21)。ホーム、国立の対戦では桃も勝点も持っていかれたので、日本で一番難しいアウェイで回収するという、やりがい300%の一戦。JFK甲府の最大値がどこまで進撃できるのか、来週末は埼スタに集合だ。

以上

2013.09.15 Reported by 松尾潤

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