<ギアがサッカーを変える(3)>
強豪イタリアが出ないワールドカップロシア大会でも靴下に隠れた“主役”はイタリアだ。目立たないが重要なすね当て。イタリア・パルマ郊外に工房を構える小さなカンパリ社が、世界の巨人として君臨している。
完全ハンドメード。F1フェラーリのボディー加工技術を生かしたカーボンでできており、耐久性は群を抜く。愛用する日本代表DF昌子源(鹿島アントラーズ)は「めっちゃくちゃ頑丈って聞きました。ピストルの弾やったら貫通しないぐらいだって」と絶大な信頼を寄せている。
同社の代表エンリコ・カンパリ氏は元フェラーリの技術者。F1のギア部門にいた。昌子のコメントをぶつけると「弾をはね返す? そんなことはない。うちのすね当ては確かに耐久性はあるが、カーボンは、ひどいショックを受けたら形が変わったり、ヒビが入ったりする。それで脚を守っている。そうでなければ、大事な脚の方が壊れてしまう。ここはとても重要な点だ」と製品と同様、まじめに答えた。
同社は好きな絵柄を表面に自在にデザインすることで違いを出した。カンパリ氏は「何でもやる。ただ、政治的なものや差別的なメッセージは断るが」。この自由なデザイン性も人気の秘密。今では大手も追随する。
現在もアグエロ、ブフォンら世界の超一流が使用し、日本代表でも本田圭佑らが使い主流。カズ愛用のルパン三世がデザインされた逸品を、りさ子夫人がブログで紹介したこともある。アグエロやポドルスキは、人気漫画「キャプテン翼」のキャラクターをデザインしてもいた。
かつて利用していたメッシとロナルドは、現在いずれも巨額の契約を結ぶアディダス社、ナイキ社のものを利用しているようだ。これもカンパリ社の勢力拡大で、見えないすね当てにも競争が生まれ、契約メーカーによる縛りがきつくなったからだとみられる。
アディダスやナイキなど大手ブランドの最高級品でも1万円でお釣りがくるが、カンパリ社製は最高級品で30万円超と破格。だが、大事な商売道具で、耐久性とデザイン性にも優れるとあって、高給取りの選手たちは、ほとんどが高いと言わない。見えない部分への工夫が、オシャレ心をくすぐっているのかもしれない。
すね当ての歴史は、比較的新しい。現在は競技規則でも着用が義務付けられているが、昔は違った。「闘牛士」と呼ばれたアルゼンチンのケンペスは母国開催の78年W杯で優勝し、MVPと得点王に輝いた。当時のケンペスはソックスを足首まで下げ、すねをむき出しにしてプレーした。あの印象的なシーンは、安全上の観点からも現代ではもうあり得ない。
電撃解任されたハリルホジッチ氏が言い続けたデュエル(球際の攻防)では、激しいせめぎ合いが起きる。まさに弁慶の泣きどころを守るプロテクター。見えない安心が一瞬のプレー、そして勝負を分ける。【波平千種通信員】
イタリア不在のW杯でも「すね当て」主役はイタリア
【参考】
暑い夏でしたね:->(設楽りさ子オフィシャルブログ)
https://ameblo.jp/miura-risako/entry-11608131815.html
↑三浦カズ愛用モデルだそうです。