日刊鹿島アントラーズニュース

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2018年9月2日日曜日

◆【PR】NMB48磯佳奈江×soccer junkey サッカーがつなぐアイドルとアパレルブランドのコラボ(Football Zone)







生誕TシャツのコラボはAKBグループ初 「最初はえっ、本当に!?って固まりました」


 サッカーアパレルブランド「soccer junky」は、J2横浜FCのユニフォームサプライヤーとして知られ、モノトーンで描かれたフレンチブルドックがトレードマークとして定着している。奇抜な発想とデザインで今までにない世界観を演出してきたなか、新たにアイドルグループNMB48のチームMで副キャプテンを務める磯佳奈江さんとコラボ。小学校時代に全国大会ベスト8に輝き、独自の目線から注目選手を紹介する「いそっぺFC」をツイッターで配信するなど、“サッカー大好きアイドル”の磯さんにコラボグッズ(生誕記念Tシャツ、iPhoneケース)のいち押しポイントを訊いた。

◇   ◇    ◇

 小学3年生の頃から7年間サッカーに打ち込んで、今も定期的にフットサルをやっているので、「soccer junky」さんのことは知っていました。でも、まさかサッカー好きが高じて、人気ブランドと個人でコラボさせて頂けるなんて! あまりに驚いて、最初は「えっ、本当に!?」って固まっちゃいました(笑)。私の誕生日が8月なんですが、生誕Tシャツのコラボ版は(AKBグループでも)初めてだそうで、ファンの方も一緒に喜んでくださいました。



生誕祭コラボグッズはTシャツ(税込¥3950)とiPhoneケース(全5種。税込¥3780)が展開されている。


 「ISODON」はsoccer junkyさんのトレードマークでもある犬と私を、明治維新150周年という今年に大河ドラマで放送されている「西郷どん」にかけました。私もNMBでサッカーというジャンルで革命を起こしたいなって。両面ブラックプリントで、日常でも着れるデザインなのがポイントです。最近は握手会で「磯どん」と呼ばれるようになって、今ファンの方の間でも浸透しつつある名前になっています。

 iPhoneケースはイラストやメッセージにこだわりました。日本でサッカーと言えば、カズ(三浦知良)選手ですよね。キングカズのゴールパフォーマンスである「カズダンス」をモチーフにしました。“かわいいポイント”は、犬も一緒にポーズをしているところです。鹿島アントラーズが好きなので、ユニフォームの色が昨シーズンのモデル風になっているのが隠れエピソードです。


サッカー好きが高じて、アパレルブランドとのコラボが実現した【写真:荒川祐史】


「女性に持ってほしいのがピンクの日本代表版。男性はクールにカーンモデルですね」

 ぜひ、女性に持ってほしいのがピンクのデザインです。今年はワールドカップ(W杯)もあったということで、日本代表のユニフォームと犬型のトロフィーを掲げていて、「私たちには夢がある。いつの日にかチャンピオンに」と英字が添えてあります。これはNMBのマネージャーさんの中で一番人気ですね(笑)。

 逆に、男性でもクールに使えるのが、ゴールポストにもたれかかって哀愁漂う私が描かれたデザインです。これは、元ドイツ代表GKオリバー・カーン選手からインスパイアしています。小学4年生の時、地元・茨城のカシマスタジアムで日韓W杯グループリーグのドイツ対アイルランド戦(1-1)を見て、カーン選手が印象に残りました。大会中、キャプテンとしてチームを牽引したなか、決勝のブラジル戦(0-2)で敗れると、ずっとゴールポストにもたれて座り込み、一人静かに歓喜に沸くブラジルの選手たちを見つめていたのは有名な話ですよね。カーン選手と言えばこのシーンで、日韓W杯を思い出すので、サッカー通なら分かってくれるはず、という思いも込めました。(NMB48の)メンバーの内木志ちゃんと私も使っていて、ファンの方にも好評です。

 最後に、「VAMOS!」(スペイン語で頑張れ!)と描かれたデザインは、サッカーの集合写真をイメージしています。犬がズラっと並ぶなかに私が一人いるというシュールさが面白いかなって(笑)。これもユニフォームは鹿島風にしています。小学校の頃にチームメイトだった(FW京川)舞を介してINAC神戸レオネッサの選手と交流があって、(MF仲田)歩夢ちゃんが持ってくれているそうです。ベースカラーが白と黒なので、男性の方も手に取りやすいと思います。

 今回、デザイン案は自分で出しました。「大迫半端ないって」がロシアW杯で再流行したから上手く取り込めないか、とかなかなか難しくて(苦笑)。「誰でも見たら分かる」を重視して、分かりやすく仕上げたつもりです。個人的には、カーンが会心の一品です。

 握手会でも「グッズ買ったよ」「このデザインいいよね」と言ってくれたり、ちらっと実物を見せてくれたりします。生誕Tシャツを着ると告知したら、私のレーンがISODONを着た方で埋まったのは本当に嬉しかったですね。私自身、コラボが初めてだったので、まだの方はぜひゲットしてください! 



■磯佳奈江×soccer junkyコラボ

(Football ZONE web編集部)


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◆昌子源の悔しさに学んだ高校3年生。 “鹿島のCB”を背負う男、関川郁万。(Number)



関川郁万 Ikuma.Sekigawa


 8月下旬の猛暑の残る中、ある高校生に会うために千葉県にある流通経済大柏高校サッカー部グラウンドに足を運んだ。

 その高校生とは……来季の鹿島アントラーズ入りが内定している3年生CB関川郁万。

 屈強なフィジカルを持った選手達が多い流通経済大柏の中でも、関川の存在感は際立っている。熱気をはらんだピッチでの練習風景を見学していても、その負けん気の強い表情と佇まいは異彩を放っていた。

 練習後、グラウンド横の仮設スタンドでジックリと彼に話を聞いたのだが、インタビューの最後、妙に印象的な言葉を残していった。

「CBとして鹿島アントラーズに入団するということが、どういうことなのかを改めて感じました」

 この言葉の真意に触れる前に……関川にとってプロ内定が決まってから今日に至るまでが、決して平穏で楽しい日々ではなかったことを伝えておきたい。


輝かしい経歴で楽しいはずの日常が……。


 関川は身長は182cmとCBとしては大柄ではないが、並外れた跳躍力とフィジカルの強さを活かしたヘッドが武器で、対人能力も高く、気迫を全面に出して守備を統率するハイレベルな選手だ。

 名門・流通経済大柏で1年生の頃からCBとしてレギュラーを張り、一昨年度はインターハイ準優勝し、AFC U-16選手権(インド)に出場する日本代表に高体連から唯一選ばれるも、直前合宿で負傷し、辞退を余儀なくされている。

 昨年度はインターハイ優勝に貢献し、選手権でも決勝進出の立役者の1人となっていた。

 輝かしい経歴を築きながら、ついに高校最後の年となった2018年。

 選手権で負った膝の怪我を手術したことで、6月上旬まではプレーすることができなかったが、5月には高体連に所属する選手としては一番乗りとなる鹿島への入団が内定。早々の鹿島入りは、それだけ大きな期待の現れでもあった。

 だがその頃から関川には、昨年までは感じていなかったプレッシャーが重くのしかかるようになってきたのだという。


これまでにない注目を浴びる恐怖が。


「1、2年生の頃は自分が日々成長している実感があったし、周りの評価も気にすること無く、自分のことだけに集中できていた。正直『自分のプレーを出して、チームに貢献できればそれでOK』とだけ思っていました。今年に入ってからも、怪我でプレーできていなかったので、リハビリに集中することができた。でも、いざ復帰してみると……周りの雰囲気が全然違った。

 すでにプレミアリーグが始まっていて、インターハイ予選も始まる直前の重要な時期での復帰だったので、正直戸惑いました。チームの期待、関係者の方々の期待、相手選手からの目……。これまで経験したことが無いほど、敏感に感じました」

 彼が実戦復帰したのは、インターハイ予選準々決勝の市立柏戦のこと。

 選手権決勝の前橋育英戦から実に5カ月ぶりの実戦とあって、試合勘を取り戻せていない彼のプレーは精彩を欠いた。その試合はなんとか勝利をものにしたが、続く準決勝の習志野戦では、大きな落とし穴が待っていた。


敵の作戦は「関川を狙え!」。


 習志野との試合は、勝てばインターハイ出場(今年まで千葉は2校がインターハイ出場)という重要な一戦だったが、立ち上がりから関川は不調に見えた。身体が重いようで、簡単にかわされたり、裏を取られるシーンが目立った。

「練習に復帰した週は身体も軽くて、『このまま行ける』と思っていたのですが、実戦に復帰したら思うように身体が動かないと感じました。徐々に身体の重さを感じるようになって、それを一番感じたのが準決勝でした……。

 プレー的にもそうなのですが、まだ目が慣れないと言うか、選手権のときのように頭は働いているのに、目や身体がついて来ないという状況でした」

 関川のコンディションの悪さを習志野はすぐさま見抜き、ベンチからの指示も「関川を狙え」。その習志野の狙いは的中し、試合を決定付けた決勝弾は関川のゾーンが起点となって生まれてしまった。

 0-1で迎えた前半アディショナルタイム1分でのこと。

 味方が自陣で敵MFにボールを奪われ、ドリブルで仕掛けてきたのに対し、関川は反応が遅れた。そのまま不用意に食いついていってしまい、かわされてから裏のスペースを突かれての失点。

 後半に1点を返すも、このゴールが決勝点となり、流通経済大柏は1-2の敗戦。前年度王者がインターハイに出場できないという波乱が起こったのだ。


「狙われたのは、自分の弱さがあったから」


「僕自身何もできなかったし、すべてで負けた印象です。

 ボールを運んできた相手選手に対して、『クリアできる』と安易に思ってしまい、あまりにも不用意に行き過ぎてしまった……。(前半アディショナルタイムという)時間帯もそうだったし、もっと全体を考えて冷静に判断をしてプレーすべきでした」

 復帰直後の難しさを感じると共に、周囲から自分にのしかかっていた巨大なプレッシャーも痛烈に感じる試合となった。

「習志野は明らかに僕のところを狙ってきているのが分かった。復帰直後だということに加えて、僕がイライラしてしまう性格であることを分かっていたので、余計に狙ってきたのだと思います。狙われたのは、自分の弱さがあったから。

 自分はアントラーズに内定している分、試合を観に来てくれている人に『さすが関川だな』と言ってもらえるようなプレーをしなきゃと思ってしまった。でもとにかく身体が重いし、思うようにプレーできない。試合が経過していくにつれて、『まずい、まずい……』と思っていきました」


“鹿島内定の関川郁万”への期待。


 心と身体がバラバラで、気持ちばかりが焦っていく。

 春先から試合に出ていれば、そこまでの混乱は起きなかったはずだ。しかし、ずっと実戦から遠ざかっている内に、「選手権でのインパクトがより大きくなってしまったのだと思います」(関川)。

“鹿島内定の関川郁万”に対する注目度と期待値が信じられないほど膨らんでしまっている周囲の状況に、関川は冷静さを保つことができなかったのだ。

「関川ってこんなものなんだね」

 試合後、周囲の厳しい声が彼の耳にも届いてきた。

「もう情けないというか、『あ、俺ってこんなに簡単にやられてしまうんだ』と思いましたし、習志野戦からしばらくは……正直いろんな感情がわき起こりました」

 だがそんな時、鹿島の偉大な先輩が、そのプレーをもってして関川に大きな「教え」を与えてくれたのだ。

 ロシアW杯で見た鹿島のCBである昌子源が見せたプレーが、関川にとって大きな衝撃となったのだ。


昌子源と自分の気持を比較すると……。


「当初は(昌子選手は日本代表の)スタメンじゃなくて。W杯初戦で事実上スタメンを獲ったばかりという状況だったはずで、想像を絶するプレッシャーがあったと思う。

 でも、コロンビア戦、セネガル戦と素晴らしいパフォーマンスを見せて、『さすがアントラーズの選手だな』と思いました。

 アントラーズは伝統的に優秀なCBを何人も育てている。大岩剛監督もそうですが、その人たちに共通するのが『メンタルの強さ』。プレッシャーをはね除けて、かつ勝利への執着心を前面に出す。『これが鹿島のCBが持たなければならないメンタリティーなのか』と痛感しました。

 それに……ベルギー戦の決勝ゴールを浴びてしまった後に、昌子選手が悔しさを身体全体で表現していた。あそこまでの感情表現は本気を出し切った人にしか出せないものだと思いました。

 練習参加やリハビリの時にも昌子選手とは一緒だったのですが、Jリーグの試合では負けた後のロッカールームでは無口になっている印象が強かった。なので、あそこまで泣き崩れるとは思わなかった。じゃあ自分が習志野戦に負けた後に、あそこまでの感情表現ができたか、と聞かれると……。

 昌子選手は敵のゴールの直前に、コーナーからのボールを決めて試合を終わらせる気持ちで上がって行っていた。クルトワにそのボールをキャッチをされてから、全力疾走で自陣のゴール前まで走って……。(GKを除いて)最後の1人になるまで追いかけ続けたけど、あと一歩が届かなかった。だからこそ、あの悔しがり方になったんだと思う。あのシーンを、追いかけなくて遠目で観ていただけだったら、あそこまでの感情表現にはならなかったと思うんです。

 もし習志野戦の時の僕のように、何もできなくて、しかも失点の原因にもなったのに、あの昌子選手と同じような悔しがり方をしたら『ただのカッコ付け』というか、『悔しがっているフリ』になってしまうと思うんです。

 本気の、心からの悔しさじゃない。はっきり言えば、悔しがるに値する『本気のプレー』ができていなかったんじゃないかって」

 昌子が示したスピリットに、関川は震え上がった。

 あの姿こそ、日の丸を背負うということ、鹿島のCBになるということなのだと――。

「意識が変わりました。心構えと言うか、なぜ自分がアントラーズからオファーをもらって入ることになったのかを、もう一度考え直す機会になりました」


「さすが関川」のプレーを連発!


 インターハイ予選の後、シーズン前期のラストゲームとなった7月15日のプレミアイースト第9節・鹿島アントラーズユース戦で、関川は気迫のディフェンスを見せた。

 結果、1-0の完封勝利。

 まさに「さすが関川」というプレーを見せたわけだが、この試合で今度は左足首をねん挫する。だが、この怪我で1カ月近く離脱した後の再復帰戦となった8月25日のプレミアイースト第10節の清水エスパルスユース戦でも、DFラインをしっかりと統率して0-0のドローと2試合連続の完封を果たした。

「どんなに点が入らなくても焦れずに守り続けるのがCBの仕事。ゼロで抑えれば、延長戦を含めて、90分、120分間の試合で負けることは絶対にない。それぞれの状況に応じた意識と頭の回転の速さが大事になって来ると思う。その状況に適したプレーでチームを引き締められる存在になりたいです」


昌子、そしてチョン・スンヒョンの気迫。


 冒頭で紹介した彼の言葉を覚えているだろうか。

「CBとして鹿島アントラーズに入団をするということが、どういうことなのかを改めて感じました」

 会話の中で一番熱がこもっていたこの言葉は、昌子だけでなく、新加入した韓国人CBのプレーにも反映されていた。

「目標でもあった植田直通選手がベルギーに移籍をしてしまったことは残念なのですが、代わりに加入したチョン・スンヒョン選手のプレーを観て、心から『凄い選手だな』と思ったんです。入団したばかりなのに、『前からずっとこのチームにいるよ』と思わせるくらいフィットして、DFラインを統率している姿は凄く刺激になりました」

 秋田豊、大岩剛、岩政大樹、昌子源、植田直通、そしてチョン・スンヒョン。この系譜に関川郁万の名前を刻むべく、「偉大な教え」を胸に彼は今を精一杯生きている。

 何事にも屈せず、闘志をむき出しに戦う鹿島のCBの血を滾らせて――。




◆昌子源の悔しさに学んだ高校3年生。 “鹿島のCB”を背負う男、関川郁万。(Number)


◆清水への移籍を迷った森岡隆三。 鹿島と対等での戦いに違和感があった(Sportiva)



森岡隆三 Ryuzo.Morioka


遺伝子~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(26)
森岡隆三 後編

◆土居聖真「ボールを持つのが 怖くなるほど、鹿島はミスに厳しかった」(Sportiva)
◆中田浩二「アントラーズの紅白戦は きつかった。試合がラクに感じた」(Sportiva)
◆中田浩二は考えた。「元選手が 経営サイドに身を置くことは重要だ」(Sportiva)
◆スタジアム近所の子供が守護神に。 曽ヶ端準とアントラーズの幸せな歩み(Sportiva)
◆曽ヶ端準「ヘタでも、チームを 勝たせられる選手なら使うでしょ?」(Sportiva)
◆移籍組の名良橋晃は「相手PKに ガックリしただけで雷を落とされた」(Sportiva)
◆名良橋晃がジョルジーニョから継ぎ、 内田篤人に渡した「2」への思い(Sportiva)
◆レオシルバは知っていた。「鹿島? ジーコがプレーしたクラブだろ」(Sportiva)
◆「鹿島アントラーズは、まさにブラジル」 と言い切るレオシルバの真意(Sportiva)
◆「ジーコの負けず嫌いはハンパなかった」。 本田泰人はその魂を継いだ(Sportiva)
◆「アントラーズの嫌われ役になる」 本田泰人はキャプテン就任で決めた(Sportiva)
◆ユースで裸の王様だった鈴木優磨が 「鼻をへし折られた宮崎キャンプ」(Sportiva)
◆鹿島・鈴木優磨のプロ意識。 いいプレーのため、私生活で幸運を集める(Sportiva)
◆岩政大樹の移籍先は「アントラーズと 対戦しないこと」を条件に考えた(Sportiva)
◆三竿健斗は感じている。勝たせるプレーとは 「臨機応変に対応すること」(Sportiva)
◆三竿健斗は足りないものを求めて 「ギラギラした姿勢で練習した」(Sportiva)
◆森岡隆三が鹿島で過ごした日々は 「ジレンマとの闘いだった」(Sportiva)


「本当は負け試合だった。点を獲れそうで獲れないというゲームって、結構負けるじゃん。そうなるかなって思っていたけど、後半よく獲ったよ」

 約1カ月ぶりの先発でフル出場を果たした内田篤人がそう振り返った、8月28日ACL準々決勝第1戦の対天津権健戦。鹿島アントラーズは、60分レオシルバ、72分セルジーニョのゴールで2-0と勝利した。

 開始15分で3、4回ビックチャンスを迎えたが、シュートすら打てないシーンもあった。その後7度のコーナーキックを得るなど、試合の主導権を握ったが無得点で迎えたハーフタイム、選手たちは動じなかったという。

「変わらずやっていこう、とにかく失点をしちゃいけないという話を中心にしていました。前半決定機がたくさんあったので、ちょっと嫌な流れでしたけど、後半の早い段階でレオが得点を決めてくれたので。試合運びはやりやすかったかなと思います。1点入ってからのほうが集中しました。ここから絶対にやらせてはいけない。狙いがあれば2点目を獲っていこうと。全員がそう思っていて、同じベクトルを向けていられたのが良かったと思います」と語った安西幸輝は、この日はサイドバックではなく、サイドハーフとしてプレーしている。

 何度もチャンスを演出したが、「ジュビロ戦のことがあるから」と楽しさ以上に緊張感を抱き続けていた。8月24日のリーグ戦対ジュビロ磐田戦で、同点弾となってしまうPKを与えるハンドのファールを犯していたからだ。「この3日間はとにかくチームに貢献したいということだけを考えていたので、それができて良かった」と小さく微笑んだ。

 移籍加入後初ゴールを決めたセルジーニョも小さな安堵感を見せていた。

「第一印象が大事なので、出来れば、最初の試合で点を獲りたかったんですけど、残念ながら、うまくはいかなかった。でも、自分が真摯に練習に取り組んだ成果というのが、この大事なACLという大会で点を獲ることで出せたんじゃないかな」

 得点直後の失点、終了間際の失点、大量失点など、今年の鹿島の失点は”らしくない”ものが少なくない。そういうチーム状況を踏まえたうえで、ピッチに立った内田は、「ホームアンドアウェイって絶対にホームで失点しちゃいけない」と何度もチームメイトに訴えた。

「試合中もDFラインを集めて話しました。そのうえで、あわよくば、3点目、4点目を狙っていこうと。最後はシュートを打って終わる。当り前のことをやっていかないと勝てないというのがあるし、そこらへんは散々、ホームアンドアウェイをやってきたんで。わかっているつもりではいます」

 シャルケ04時代、欧州チャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの決勝トーナメントでの試合を毎シーズンのように経験してきた内田。右サイドに立ちながら攻守に渡り、チームをコントロールする。その姿には、文字通り”ベテラン”の風格が漂う。周囲のベテラン選手に支えられ、引っ張られるようにプレーし、育まれていた8年前の内田が懐かしく思い出された。

「(小笠原)満男さんだったり、マルキ(マルキーニョス)だったりの後ろ姿でね、教わってきた。今の選手は若いけれど、ちゃんと、やっていこうって話せば、ピッチで表現できる技術があるから。いいチームだと思う。でも、そういうやるべきことをACLだけじゃなくて、Jリーグとか、他の試合でも詰めていかないと、本当の強さは出てこない。それが出ないと鹿島じゃないから」

 アントラーズの一員として、あるべき姿を伝えるべき立場になった内田の言葉が、重く響いた。

 天津権健とのセカンドレグは9月18日。そこまでの間には、Jリーグだけでなく、ルヴァンカップも控えている。ACL後には天皇杯もあり、どの試合も落とせるものではない。当たり前のことを当たり前にやれるかどうか。正念場は続く。





 1994年に高卒ルーキーとして、鹿島アントラーズ入りを果たした森岡隆三さんは、翌年夏に清水エスパルスへ半年間のレンタル移籍を果たしている(のちに完全移籍)。移籍直後から、エスパルスのレギュラーとして活躍。ファーストステージ12位だったチームはセカンドステージ4位と順位を上げる。移籍を決意するに当たり、森岡さんは「出場機会を求めて」「試合経験を積むために」というだけではない、覚悟を抱いていた。

 その後、長年ライバルという関係になった鹿島だが、森岡さんのキャリアにとって、鹿島での日々はどんな影響をもたらしているのだろうか。

――プロ1年目は1試合に出場しただけで、苦しい時間が続いたわけですが、2年目の1995年夏、清水エスパルスへのレンタル移籍を決断しました。

「2年目を迎えるにあたって、楽しもうと思ったんです。身体を鍛えること以上にボールを使い、自分の良さを出していきたいと。両親とは『3年間』という約束をしていたし、もう残り2年しかないわけですから。そういう気持ちになれたせいか、だんだん自分のプレーにも自信が持てるようになり、成長を感じることができたんです。まだ試合には出られていないけれど、可能性はあるんだと。そんなときに清水から『トップのレギュラーとして起用したいから』という話を頂きました。最初は鹿島で勝負したいという気持ちが強かったんです。でも、まだ19歳の僕に清水は大きな期待をかけてくれている。その年のファーストステージで、清水は失点がすごく多かったんですよ。そのディフェンスの補強に僕を選んでくれたんだと思ったときに、挑戦してみたいという気持ちに180度変わったんです。エスパルスは新しいクラブだけれど、サッカー処の清水にあり、それこそ高校サッカーのヒーローがたくさん在籍していたし、いい選手も多い。そのなかでチームのために力になれるという自信も自分には芽生えていたので、移籍を決意しました」

――最初はレンタル移籍でした。半年後に鹿島へ戻るということはイメージしていましたか?

「『経験を積んで、戻ってきて』と言ってくださる方もいたんですが、僕自身はそういう気持ちは正直なかったんです。というのも、僕がエスパルスへ加入するというのは、エスパルスの選手の仕事を奪いに行くことだと考えていたからです。『レギュラーとしての補強』と言われていたけれど、もちろんポジションが約束されていたわけではない。文字通りポジションを奪う、誰かの仕事を奪う覚悟がないとダメだと思っていました。それこそ、半年間、誰とも仲良くなれなくてもいいというくらいの気持ちです。だから、『半年経験を積む』という感覚にはなれなかった」






――退路を断っての移籍だったんですね。

「だから、鹿島の寮の荷物もすべて、清水へ運びました。でも、清水の寮の部屋が鹿島の3分の1くらいの広さしかなくて(笑)。結局、寮生活をせずに一人暮らしを始めたので、寮では段ボールをすべて開けることもなかったんですけど」

――鹿島との対戦のときはどんな気持ちでしたか?

「対等な立場での対戦というのは、やっぱり不思議な感じがありました」

――今までは紅白戦といえども、追いかける立場でしたからね。その後はライバルとして戦うクラブとなったわけですが、森岡さんにとって、鹿島アントラーズでの1年半はどのような影響を与えてくれましたか?

「在籍はわずか1年半で1試合にしか出場していないので、僕が鹿島にいたことを知らない方も多いと思います。でも、僕の選手としてのキャリアを振り返ったとき、鹿島の影響というのは非常に大きいと思います。ピッチ上はもちろんのこと、ピッチ外でもたくさんの思い出があります。先輩や同僚から受けた刺激は、思いのほか、僕のなかに染みていますね。やっぱり初めてのプロ生活はエキサイティングでしたよ。しかも前年度に優勝している選手といっしょに過ごすわけですから。たとえば、ロッカールームやサウナでの会話とかも思い出しますし、大人への入り口になったんだと思います」

――チームメイトもレベルの高い選手が多かった。

「当時サイドバックだった僕にとって、ジョルジニーニョは世界最高のサイドバックだと思っていました。高3のとき、ドイツ遠征でバイエルン・ミュンヘンの練習場へ行ったときに見たジョルジーニョ(1995年1月移籍加入)がチームメイトになったんですから、それは興奮しました。いっしょに過ごしたのは短い時間でしたけど。練習前に体幹を締めるトレーニングを毎日黙々とやっている姿を目にして、一流の選手のすごさを知りました。鹿島にはいろんなタイプのプロフェッショナルが揃っていたと思います。ハセさん(長谷川祥之)は、ヘディングも足元も巧いゴールゲッターでしたけど、ピッチに降り立つと柔らかい雰囲気を漂わせながらも男気の強い人でした。(大野)俊三さんは、お酒の大好きな優しい人なんだけど、スライディングをかわされたときに、頭でボールを奪い返しに行ったことがあるんです。絶対に抜かせないぞという気迫を感じました」

――プロとはなにかというのを学んだわけですね。

「プロとは? という問いの答えはいっぱいあると思うんです。鹿島には選手だけではなくて、それを突き詰めている人がたくさんいました。フロントやスタッフもそうですが、たとえば雄飛寮の寮監だった高野(勝利)さんをはじめ、クラブに関わっている人、ひとりひとりが自分の仕事に厳しさと責任を持っていると感じました。そういう個が強いからひとつになったときの結束力も強い。仲はいいけれど、馴れ合うこともない仕事人の集団という印象があります」

――選手だけではないと。

「はい。だから選手も同じですよね。俊三さん、石井(正忠)さん、奥野(僚右)さん、賀谷(英司)さん……徹底的に自分の仕事をまっとうする、プロとはこういうことだなとたくさんの人たちが教えてくれました」

――6月まで指揮を執っていたガイナーレ鳥取では、「選手同士で要求をし合う空気」を求めているとお話しされていましたが、それは鹿島での経験が影響しているのでしょうか?

「そうですね。文句を言い合うのではなく、『こうしてほしい』という要求です。周囲にそれを求めるためには、自分がしっかりとやらなくちゃいけないという責任が生まれます。鹿島に限らず、強いチームというのは、そういう空気があるものです」




――現在は監督業から離れていますが、将来鹿島で指揮を執るというような気持ちは?

「イヤ、僕は鹿島と戦いたいですね。やっぱり鹿島といえば、『強い』というのが僕のなかでは大きいから」

――今、「鹿島は強い」というお話しでしたが、その強さの秘密というのは、先ほどのプロ意識以外にどんなところにあると思いますか?

「チームにはピッチ上でのルール、カルチャーというのがあります。この局面ではボールを外へ出すのか? 繋ぐのか?とか。それらをもたらすのは監督である場合が多いので、監督が代わればルールも変わってしまうことがあります。しかし、ベテランと言われる選手がそれを作り、中堅若手とつないでいくこともできる。それでも選手の入れ替わりや年齢構成などによって、そのカルチャーを継承できなくなる時期が生まれるものですが、鹿島は絶妙なスカウティングで、そういう魂を繋ぎ続けているんだと思います。タフなセンターバック、ボールを持てる中盤、強いフォワードがいて、サイドバックが上がってくる。そこに鹿島のサッカーの面白さと堅さがあります。そういう基盤に応じた選手を獲得しているし、育てているのが強さなんだと思います」

――ワールドカップのロシア大会では、大迫勇也、柴崎岳、昌子源とその鹿島でプロデビューした選手が日本代表のセンターラインを構築しましたね。

「日本代表のほとんどの選手が海外でプレーするという時代は、今後も続いていくのかもしれません。何人Jリーグの選手がいるのかという感じになったとき、鹿島の選手がそこに入ってくるように、鹿島にはJリーグを引っ張って行ってほしいと思います」


◆清水への移籍を迷った森岡隆三。 鹿島と対等での戦いに違和感があった(Sportiva)



◆柴崎岳、ヘタフェ残留へ…ボルダラス監督は姿勢を評価も適性ポジションはなしか(GOAL)






バジャドリー戦で出場機会のなかった柴崎岳。ボルダラス監督の見解は?


スペインの移籍市場が閉まり、ヘタフェに所属するMF柴崎岳の残留が決定的となった。

ヘタフェは8月31日、リーガ・エスパニョーラ第3節でバジャドリーと対戦。柴崎はベンチ入りしたものの、出番は訪れず、チームはスコアレスドローに終わっている。ホセ・ボルダラス監督は試合後の会見で柴崎について言及。出番を与えていない日本人MFに対する評価を明かした。

「現状、ボランチでプレーしているのは(ネマニャ)マクシモヴィッチ、マウロ(アランバリ)で、それは彼らの状態が最も良いからだ。ガクはハードワークしているし、どんなときでもチームに貢献してくれるはず」

さらに、柴崎の最も得意なポジションは「4-3-3や4-1-4-1でのインサイドハーフ」としながら、基本システムは4-4-2であることを強調。「現在はそういったシステムは使用していない」と今後も柴崎のためにフォーメーションが変わることはないことを示唆した。

「彼は必要とされたときのために努力を続けているし、いずれ我々の助けになると確信している」と締めくくったが、ヘタフェは移籍市場最終日にフィオレンティーナからMFセバスティアン・クリストフォロを獲得。残留が決定的となった柴崎だが、今後もボランチとしてのポジション争いは厳しい戦いが待ち受けていそうだ。





◆柴崎岳、ヘタフェ残留へ…ボルダラス監督は姿勢を評価も適性ポジションはなしか(GOAL)



◆ブレーメン新加入の大迫 開幕2戦目で初ゴール(スポニチ)






 ブレーメンの大迫がリーグ戦2試合目で今季初ゴールを決めた。前半20分ごろ、斜めに走って相手守備ラインの裏を突くと、浮き球のパスを受けて落ち着いて右足で蹴り込んだ。副審はオフサイドと判断したが、最終的には得点が認められた。

 今季からブレーメンに新加入し、この日は3トップの左で先発。開幕戦後に「もうひと工夫で、もっと点が取れそう」と手応えを口にしていた通り、目に見える結果を出してみせた。




◆ブレーメン新加入の大迫 開幕2戦目で初ゴール(スポニチ)



◆代表初招集のDF佐々木翔が逆転弾!パトリックも2ゴールで広島が鹿島に逆転勝ち(ゲキサカ)





[9.1 J1第25節 広島3-1鹿島 Eスタ]

 J1リーグは1日、第25節を各地で行った。エディオンスタジアム広島では首位に立つサンフレッチェ広島と7位の鹿島アントラーズが対戦し、広島が3-1で勝利。2連勝とした。一方、鹿島は4試合ぶりの黒星を喫した。

 広島は前節・C大阪戦(1-0)と同じ11人を送り込み、日本代表に初招集されたDF佐々木翔らがスタメン入りした。28日にホームで行われたAFCチャンピオンズリーグ準々決勝第1戦で天津権健を2-0で下した鹿島は、中3日での試合となったが、先発1人の変更にとどめ、DF内田篤人に代わってDF西大伍が起用された。

 入りが良かったのは広島だったが、先制点は鹿島に生まれる。前半15分、自陣ハーフェーライン付近でFW鈴木優磨がボールをおさめ、FWセルジーニョがドリブルで中央を突破。並走していた鈴木がPA左から中央へ折り返し、セルジーニョが難なく右足で流し込んだ。

 だが、広島がすぐさま同点に追いつく。前半29分、PA右角あたりでFKを獲得すると、キッカーの柴崎が柔らかいクロスを上げる。これをFWパトリックが打点の高いヘッドで合わせて1-1。試合を振り出しに戻すと、43分にはFKからこぼれたボールをMF青山敏弘がダイレクトでゴール前に送り、GKクォン・スンテが弾いたボールを佐々木が左足で押し込み、2-1と逆転した。

 佐々木の今季3点目により前半を1点リードで折り返した広島は、後半5分に追加点。FW渡大生のパスをセンターサークル内で受けたパトリックが縦に仕掛け、DF犬飼智也をかわしてGKと1対1の状況に。相手DFが懸命に戻る中、パトリックが冷静に右足で流し込み、3-1。いい時間帯にリードを広げた。

 痛恨の失点を喫した鹿島は後半9分にチャンスが訪れる。PA右脇からDF西大伍がファーサイドにクロスを送り、味方が中央に落としたボールをセルジーニョが体をひねりながら難しい体勢でシュートを放つ。しかし、惜しくも右ポストに阻まれ、反撃の一撃とはならなかった。

 鹿島は後半15分にMF安部裕葵、26分にはFW金森健志を投入。直後にPA右脇から西がシュート性のクロスを送り、鈴木がバイシクルシュートを放つが、わずかに枠を外れてしまう。最後の交代カードでDF内田篤人を入れ、攻勢を強めたが、後半はゴールネットを揺らせなかった。試合は広島が3-1で勝利。首位をキープした。





◆代表初招集のDF佐々木翔が逆転弾!パトリックも2ゴールで広島が鹿島に逆転勝ち(ゲキサカ)


◆3失点の鹿島、逆転負け 大岩監督「失点の仕方は非常に残念だった」(サンスポ)



セルジーニョ Serginho


 明治安田J1第25節第2日(1日、広島3-1鹿島、Eスタ)鹿島はアウェーで前半15分に先制したものの、3失点と守備が崩れた。ロングボールを鈴木が収めてセルジーニョへ。ブラジル人アタッカーはドリブルで持ち込んで左の鈴木に預け、折り返しを右足で決めた。鮮やかなカウンターで、リーグ戦初得点を挙げた。

 しかし14分後にFKから追い付かれ、勝ち越しも許した。後半開始早々にも失点し、4試合ぶりの黒星。大岩監督は「前半の入りは良かったが、失点の仕方は非常に残念だった」と肩を落とした。






◆3失点の鹿島、逆転負け 大岩監督「失点の仕方は非常に残念だった」(サンスポ)


◆2018明治安田生命J1リーグ 第25節(オフィシャル)



安部裕葵 Hiroki.Abe




明治安田J1 第25節

首位の広島に3失点。鹿島、逆転で惨敗。

4つの大会を並行して戦う、9月の幕開け。首位相手のアウェイゲームで、鹿島が逆転負けを喫した。J1第25節、サンフレッチェ広島戦。エディオンスタジアム広島に乗り込むと、セルジーニョのJ1初得点で先制したものの、セットプレーから2失点を喫して逆転を許す。後半立ち上がりにも追加点を奪われ、反撃の得点を挙げることはできず、1-3と屈辱の結果に終わった。

4日前、鹿島はアジアの頂へ続く道を力強く進んだ。ACL準々決勝第1戦、2-0と完封勝利。聖地での“前半90分”で天津権健を圧倒し、アウェイゴールを許すことなく先勝してみせた。前半は決定機を逃し続けてしまったものの、60分にレオ シルバの強烈なボレーがゴールネットを揺らす。さらに72分、セルジーニョに待望の初得点。敵陣中央でボールを持った背番号18が迷うことなく得意の左足を振り抜くと、ワールドクラスのミドルシュートがゴールに突き刺さった。「チームメートや自分が真摯に取り組み続けたことが、結果につながった」。新戦力はそう言って笑顔を見せ、カシマスタジアムを後にした。

8月は7試合を戦い、4勝1分2敗という結果に終わった。来たる9月は4つの大会を並行して突き進み、8試合に臨むこととなる。鹿島の歩みが止まることはない。8月最終週の鹿嶋は真夏の再来を思わせる暑さに見舞われたが、選手たちはひたむきに準備を進めていった。29日には伊東が負傷により、長期離脱を強いられることが発表された。「メンバー外の代表というわけじゃないけど、みんなの顔が浮かんだ」と、久々の先発で勝利を掴んだ8月15日の長崎戦後に明かしていた背番号24。ピッチに立てない無念、険しき道のりに挑む仲間への思いとともに、一丸で突き進んでいかなければならない。

試合前日、青空のクラブハウス。リカバリー中心のメニューを経て、大一番に向けた最終調整に臨んだ。フル稼働を続ける犬飼が充実を滲ませ、負傷からの復活を遂げた安部が明るい表情でボールを追う。大幅な先発変更を繰り返しながら連戦に臨んでいる指揮官は「全ての試合で勝つつもりで、状況を踏まえて選手を選んでいる。控えている選手がいい状況でいてくれる」と、チーム全体への信頼を語っていた。



前日練習を終え、三竿健斗は「広島は全員がハードワークをするし、球際が強い印象がある」と、警戒を口にした。3月10日、ホームでの激突では痛恨のミスから決勝ゴールを招いてしまった背番号20がリベンジを誓う。長崎戦以来の試合メンバー入りとなった安部も「準備はできている」と静かに闘志を燃やしていた。



中3日でのアウェイゲームへ、大岩監督が施した先発変更は1名のみだった。右サイドバックに西を起用し、31歳を迎えた背番号22にゲームコントロールを託す。その他、GKはクォン スンテ、センターバックはチョン スンヒョンと犬飼がコンビを組み、左サイドバックは山本。ボランチはレオと健斗のペアで、2列目には遠藤と安西が並んだ。そして前線では、セルジーニョと鈴木が虎視眈々とゴールを狙う。ベンチにはGKの曽ケ端、内田、町田、永木、安部、土居、金森が座る。



前夜には雷も轟いていた広島だが、大一番の土曜日は秋の訪れを感じさせる穏やかな気候となった。曇り空に覆われたエディオンスタジアム広島に、アントラーズレッドが続々と足を運んでいく。人数では及ばなくとも、ビジタースタンドから注がれる情熱は紫を凌駕していた。首位と対峙するアウェイゲームで、鹿島の矜持を示してみせる――。ウォーミングアップに向かう選手たちに大きなチームコールが送られ、ボルテージが高まっていった。そして19時3分、ホイッスルが鳴り響いた。

立ち上がりから激しいボディコンタクトの応酬となり、中盤でルーズボールの奪い合いが繰り返される展開となった。主導権を握るべく、互いの意地がぶつかり合う。鹿島はなかなか前線でボールを収めることができずにいたが、鈴木が体を張って基準点になろうと腐心し、セルジーニョもパスの経由点としてしっかりと機能。広島が最終ラインでパスを回す場面ではブロックを組み、縦パスを入れてきたところで激しいプレスをかける。拮抗した展開で、開始10分が経過した。







少しずつ縦パスが通るようになっていた鹿島。15分、前線の2人が鮮やかなカウンターでゴールを陥れてみせる。センターサークル左側で鈴木がボールを収め、右側を走っていたセルジーニョへ。背番号18は縦へと加速して敵陣を切り裂き、対面する相手を引き付けてから左前方へスルーパスを送る。走り込んでいた鈴木は、ペナルティーエリア左側から丁寧なラストパス。鮮やかなパス交換、その終着点はもちろんセルジーニョ。右足ダイレクトで正確にインパクトされたボールが、広島のゴールネットを揺らした。1-0。セルジーニョの公式戦2試合連続得点で、鹿島が均衡を破ってみせた。









会心のゴールで先手を取った鹿島は、勢いに乗って追加点を狙う。20分にはレオがペナルティーエリア左側から中央へラストパス。走り込んでいた遠藤が左足ダイレクトで狙ったが、枠を越えてしまった。20分経過後は再びルーズボールの奪い合いが続き、互いにカウンターを狙い合う展開に。ボールが落ち着かない中、少しずつ広島に押し込まれる時間が長くなっていった。





すると26分、セットプレーから同点ゴールを許してしまう。スンヒョンが打点の高いヘディングでクリアしたプレーでファウルを取られると、ペナルティーエリア左手前からファーサイドへ飛んだボールをパトリックに頭で決められた。1-1。痛恨の失点で、試合は振り出しに戻った。

リードを失った鹿島は攻勢を強め、勝ち越しのスコアを狙いに行った。30分経過後はセカンドボールを確保する回数も増え、ボールポゼッション率を高めていく。しかし、なかなか決定機を作れずにいると、次の得点もホームチームのものだった。43分、ペナルティーエリア左側へ飛んだ相手のFK。競り合いからエリア左手前へこぼれたボールをゴール前へ入れられると、スンテが競り合いながら弾いたものの、詰めていた佐々木に押し込まれた。1-2。セットプレーから2失点を喫し、逆転を許した。ビハインドを負ったまま、ハーフタイムへ突入することとなった。



ビジタースタンドへ向かって攻撃を仕掛ける後半、意地を示さなければならない。しかし、次のスコアも広島のものだった。50分、カウンターに対応した犬飼がボール奪取を試みたものの、背後を取られて独走を許す。スンテが立ちはだかったが、パトリックのシュートがゴールネットを揺らしてしまった。1-3。重い失点で、鹿島のビハインドは2点になってしまった。

それでも、まだ40分以上が残されている。失点から5分後、波状攻撃を仕掛けると、クロスに反応したセルジーニョがペナルティーエリア左奥からボレーシュート。テクニックの結晶が枠を捉えたが、無情にも右ポストを直撃してしまった。こぼれ球に詰めたレオのシュートも枠を越え、1点差に迫ることができなかった。









大岩監督は61分、復帰を果たした安部を投入。攻撃陣の活性化を図る。65分には相手のセットプレーをクリアしてカウンターを仕掛け、中盤右サイドでの競り合いからレオがこぼれ球を拾って背後のスペースへ。しかし、競り合いでの広島のファウルで笛が鳴り、プレーが止まってしまった。レオは独走してペナルティーエリアに入ることができる状態にあったが、アドバンテージの判定は下されなかった。





2点差のまま、残り20分を切った。大岩監督は金森を前線に配してゴールへの希望を託すが、広島の守備を崩すことができない。71分、鈴木が放ったバイシクルショットは枠の左へ。77分に仕掛けた波状攻撃、ペナルティーエリア内での密集から西が放ったシュートも相手GKに阻まれた。終盤には内田を投入して西を2列目にあげ、スンヒョンが前線に残るパワープレーも敢行。しかし、最後までゴールは生まれなかった。









1-3。逆転での惨敗で、鹿島が今季9敗目を喫した。首位との差は19ポイント、残りは9試合。暫定8位に転落した。次戦は4日後、5日のルヴァン杯準々決勝第1戦だ。カシマスタジアムで再び迎える“前半90分”で、川崎Fと激突する。タイトル獲得への道のり、新たな扉を開くホームゲームだ。チームは明日、鹿嶋へ帰還する。屈辱を胸に刻んで這い上がるしかない。





【この試合のトピックス】
・J1でのアウェイ広島戦で、2012年以来の敗戦を期した。
・セルジーニョがJ1初得点。公式戦2試合連続得点を記録した。
・西が公式戦2試合ぶりの先発復帰を果たした。
・安部が8月15日のJ1第22節長崎戦以来の試合メンバー入り。途中出場でピッチに立った。





監督コメント

[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・相手の守備のアプローチに対し、サイドの幅を使って、もっと相手を広げること。
・一人ひとりの運動量をもっと上げよう。
・集中して試合に入り、絶対に逆転しよう!

サンフレッチェ広島:城福 浩
・攻撃はボランチがタイミングよくボールを受けてやること。
・守備はボールサイドで厳しくいくこと。
・ここからだぞ!

[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
前半の入りは非常に良かったが、前半のうちにセットプレー2つで失点をして相手に勢いを与えてしまったことが非常に残念だった。後半立ち上がりの失点も含めて、相手に勢いをつけさせてしまった。失点の仕方が非常に残念だった。

Q. ACLの天津権健戦から先発をほとんど変更しなかったが、理由は?

A. ACLで非常にいい形で勝利をしたこともあって、本人のコンディションを判断しながら決めた。少し重いだろうと想定していたが、後半になって流れが来ることを予想しながら起用した。前半のうちに失点をしてしまったので、プラン通りにはいかなかった。

Q. 前半から相手のタイトなマークに苦しんだが、どのような経路でボールを運ぼうとしていたのか?そして選手交代の意図は?

A. ビルドアップについては、相手のハイプレッシャーに対してサイドを使いながら、サイドの選手をおびき出す形を狙っていた。交代については、失点をして点差が開いていたので、積極的に背後を狙おうとした。背後を突くことで相手のラインを下げようと考えていた。




サンフレッチェ広島:城福 浩
最近、ホームで勝てていなかったので、このスタジアムに応援に来てくださったサポーターの方々と喜び合いたいと思っていた。それは選手たちも同じ。日本代表に選ばれた2人も、この試合に集中しているという証が欲しかったと思う。いい形で送り出したかったので、結果が出て良かった。最初の失点は相手のストロングポイントが出たが、プレスに強く行けなければあのような形になる。抑えきれずに反省しなければいけない。ただその後、試合の中で修正できたことは非常に大きい。得点は流れるようなパスワークではなかったが、今日は裏(を狙うパス)と足下(へのパス)のバランスが非常に良かった。何よりも、相手が前掛かりになった時にしっかり中を閉じて、2失点目をせずに勝ち点3を取れたことは非常に自信になる。これを続けていきたい。


選手コメント

[試合後]

【山本 脩斗】
前半は先制した後も自分たちのペースでプレーできず、ボールの失い方も悪かった。カウンターで押し込まれてしまった。低い位置での守備でパワーを使ってしまった。後半は逆転しようという気持ちで臨んだけど、悔しい負けになってしまった。

【安西 幸輝】
ボールを受けた回数が少なかった。4-4-2でブロックを組む相手に、もっとサイドで起点を作ることができれば良かった。ボールに触る回数を増やしてリズムを作っていければ良かった。

【鈴木 優磨】
パトリック選手にレベルの違いを見せ付けられた。自分が点を取れず、パトリック選手は決めた。勝たせられる選手としての比較で、完敗だった。

【犬飼 智也】
相手の圧力が強いことはわかっていた。セットプレーから2失点をして、取り返すチャンスはあったけど、自分の対応の悪さで3点目を失ってしまった。もっとやり方があったと思う。

【安部 裕葵】
個人でプレーするわけではないけど、そこを突き詰めることでチームプレーにつながると思う。自分がやれば、周りのみんなもついてくる。そこは年齢などは関係ない。




◆2018明治安田生命J1リーグ 第25節(オフィシャル)






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