日刊鹿島アントラーズニュース

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2019年12月18日水曜日

◆最多クロス&ドリブル数を記録。 日本代表・相馬勇紀の推進力(footbballista)



相馬勇紀 Yuki.Soma


スタッツで振り返るE-1選手分析#2

韓国の地で開催中の「EAFF E-1 サッカー選手権」(E-1選手権)決勝大会。その日本男子代表チームの中で印象的な活躍を披露した選手のパフォーマンスについて、現地で大会を取材中の河治良幸さんにEAFF E-1サッカー選手権 オフィシャルWebブラウザ 「Brave」で更新される選手スタッツも交えつつ分析してもらう。

文 河治良幸

  香港戦の日本代表は中国戦から11人を総入れ替えして臨み、結果は5-0の勝利。小川航基のハットトリックをはじめU-22の選手が躍動した試合だったが、プレーで最も目を引いたのが右ウイングバックの相馬勇紀だった。

 右サイドからどんどん積極的にドリブルを仕掛けてクロスを上げ切る形から攻撃に勢いが生まれ、多くのCKを獲得することにも繋がった。データを見ても、相馬からのクロスは実に14本。チーム全体として37本のクロスを記録したことは試合内容を表しているが、その中でも相馬の数字は突出している。

シャドー仲川の影の貢献

 「持ち味を出したというか、あれが自分のスタイルであるし、やっぱああやって個人で剥がすことができると優位に戦況が働くと。そういう意味では良かったと思います」

 そう振り返る相馬は三菱養和から早稲田大学に進み、特別指定選手として登録された名古屋グランパスに加入。今年は鹿島アントラーズに期限付きで移籍している。そのキャリアを通して、どちらかというと左サイドのイメージが強いが相馬だが、「どっちもできるという感じです」と本人は語る。

 「左だったらカットイン(の選択肢)も持ちつつ縦に行くのが好きだし、右だったらキックもありつつ、そうすると重心が右寄りになるので、カットインした時には相当フリーになる。コンビネーションだったり左のクロスだったり、いろんなパターンを出せるので。そこで両方できるというのはチームに適応する時もいいですし、自分の武器ではないかなと思います」

 高い位置でボールを持ったら仕掛けてクロスに持ち込むというシンプルな形ではあるが、相手のSBが1対1で付いてそこから剥がす場合と、ボールを受けた勢いそのまま上げ切る形が見られた。そうしたバリエーションについて、相馬はこう説明する。

 「相手の立ち位置を見て、しっかりシャドーのテルくん(仲川輝人)が相手をつってくれている時はそのままガーッと行けるし、逆に相手のSBが僕に食いついた時はテルくんを使って流してと、うまく連係しながら、状況判断しながら仕掛けられていたのかなと思います」

 日本は[3-4-2-1]、香港は [4-5-1]という非対称のシステムで、相手の3ボランチが日本の2シャドーを見る関係になっていた分、ウイングバックの選手はもともと相手のSBと1対1になりやすい。そこから「(仲川が)SBを少し寄せながら僕にスペースを空けてくれていた」と相馬が語るように、シャドーの選手が少しワイドに動くことでSBの意識を引きつけると、大外のウイングバックはフリーでそのまま縦にボールを運べるシチュエーションができる。

 ドリブルのデータを見ると、相馬は7回トライして7回成功という驚異的な数字を残している。仲川などインサイドの選手が相手を引き付けた状況で、「小学生の頃から一緒にプレーしてた」(相馬)という3バック右の渡辺剛がタイミング良く相馬にパスすることで、前を向いてボールを受けてから相手SBに対して有利な態勢で仕掛けられていた結果だろう。

「成功数」と「インサイドへの仕掛け」

 縦の仕掛けからクロスを上げ切るという形はパーフェクトに近かったが、14本中で直接の成功が2本に終わったことは相馬も課題と捉えている。ただ、前半のアディショナルタイムに相馬のクロスがファーに流れたボールを菅大輝が折り返し、小川が決めて4-0としたシーンはアシストこそ付かないものの相馬のクロスが導いたゴールであり、86分に上田のダイビングヘッドがポストに直撃したシーンのクロスは見事なピンポイントだった。

 「結果的にアシストできてないし得点も取れてないのでそこは見直さなきゃいけないですけど、(上田)綺世に出したボールは良かった。(全体としても)上げるところはそこまで悪くないかなと思うんですけど、そこを点で合わせるのが世界の一流プレーヤーだと思うので課題かなと思います」

 相馬が右から仕掛けてクロスを上げるというのが日本のメイン攻撃になっていた中で、その他のバリエーションも効果的だった。特に目立ったのが相馬が起点になり、仲川がそのインサイドでクロスに持ち込むシーン。その1つが左サイドからゴール前に攻め上がって来た菅の先制ゴールに結びついた。クロスそのものはブロックに阻まれたが、直後のクリアボールが小さくなったところを菅が見事なボレーで突き刺した形だ。

 一方で、インサイドに切り込んでシュートに持ち込むシーンがなかったことについて相馬は「相手がシャドーのところにマンマークで来てたので僕が幅を取って、攻撃の横幅を広げなきゃいけない試合展開だった」と前置きしながらこう語った。

 「普段だったら4バックの相手だとシャドーのところに誰がマークにつくのかというズレが生まれると思うので、そこで斜めのダイアゴナルとかもっとできるようになれば、もうちょっとゴールに近いところでプレーできるようになると思っています」

 左ウイングバックの菅とのバランスに関しては「あんまりそこは考えずに、両方とも走って戻ればいいと思っていた」と相馬は振り返る。

 「前半は相手が引いてたので。後半の最初の方はけっこう来たんですけど、(両サイドから)押し込んで前にポジション取っても、あんまり裏を取られるリスクがなかった」

 実際に相馬のクロス数にこそ及ばないものの、菅からも8本のクロスが上げられている。基本的に左右のサイドが高めの位置を取り続けられていたことが5得点に繋がったことは間違いない。香港は9番を付けるCFのサンドロが脅威ではあったが、サイドMFが引いたポジションを取っていたために、日本が高い位置でボールを失ってもサンドロにロングボールが収まらなければ3バックが攻撃を遅らせた上で、ウイングバックの2人が自陣に戻って対処できていた。

 今回は香港という相手に対して終始、日本が押し込む状態から相馬の突破力が目立った試合になったが、より攻守の強度が強い韓国が相手となれば勝手が違って来る部分も大いにあるだろう。そこで起用された場合にどういうパフォーマンスを残して、今後に向けたアピールができるか要注目だ。






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