日刊鹿島アントラーズニュース

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2020年11月16日月曜日

◆開催も危ぶまれた一戦を鹿島と川崎はどう戦ったのか。ピッチには心温まる光景も(サッカーダイジェスト)






試合前に陽性者が出るも熱い一戦に


[J1第27節]鹿島1-1川崎/11月14日/カシマ

 試合当日、14日の午前8時頃、鹿島から発表されたのは前日13日に選手ひとりの新型コロナウイルスへの感染が判明し、翌14日に選手、チーム関係者を対象にPCR検査を実施したことだった(結果は全員が陰性)。

 鹿島は保健所へ報告し、濃厚接触者の有無の特定を進め、その後、キックオフの4時間前となる13時過ぎには永戸勝也の新型コロナウイルスへの感染を発表。濃厚接触者には選手6人(杉岡大暉、荒木遼太郎、町田浩樹、関川郁万、山田大樹、常本佳吾)が挙げられたが、Jリーグのプロトコルに照らし合わせ、Jリーグ及び川崎と協議のうえ、当該選手および濃厚接触者と判断された選手7人を除き、試合が開催されることが決定した。

 そんな特異なシチュエーションで行なわれた鹿島と川崎の一戦。もっとも周囲の心配とは裏腹に、ゲームは「両チームともサッカーをし、ゴールを目指した。観る側として見応えのある試合だったと思います」と鹿島のザーゴ監督が振り返ったように、迫力のある一戦となった。

 試合は18分、鹿島のファン・アラーノのパスミスを自陣で奪った脇坂泰斗が一気にドリブルで敵陣を突き進み、絶妙なコースを突いたミドルを決めて、川崎が先制。その後も川崎は持ち前のパスワークで追加点を狙い、鹿島は球際の強さ、クロスからの攻撃で打開を図る。

 球際では両チームの選手が激しくぶつかり合い、強度の高いサッカーを披露。4-2-3-1でスタートした鹿島は後半から2トップ、中盤の形も変化させ、同点を狙いにいく。すると75分、途中出場の遠藤康の落としから同じく途中出場の広瀬陸斗が右サイドからクロス。

 中で待っていたエヴェラウドがヘッドで狙い、GKが弾いたところをエヴェラウドが詰めて鹿島が同点に追い付く。その後は両チームともにチャンスを作るが、試合は1-1のドローで幕を閉じた。

 同日に2位のG大阪が敗れ、川崎は最速優勝へ王手をかけるため、鹿島は来季のACL出場権などを得られるトップ3へ入るため、勝点3が欲しかったゲームである。それでも両指揮官が勝点1をポジティブに捉えたのは、どちらが勝ってもおかしくないレベルの高いゲーム内容で、選手の頑張りを称えたかったからこそだろう。

 もっとも数時間前まで試合開催の可否が出なかった状況である。そのイレギュラーな条件の影響はなかったのか。川崎の鬼木達監督に素朴な疑問をぶつけると、選手たちを振るい立たせながら、その気持ちを慮ったと話す。

「難しい状況で始まるというところで、自分たちのやるべきことをしっかりやろうと(選手たちには)話をしました。試合に対しては、ピッチに立つ以上は気持ちを込めてというところを。もちろん、そのなかで心配になる選手は自分に言ってきなさいという話もさせてもらいました。

 ゲーム自体にそれが影響したかというと、それはなかったんじゃないかと思っています。最後まで集中を切らさず、1点は失ってしまいましたが、戦ってくれました」

 そして指揮官は、入場規制が緩和され、アウェーに駆け付けたサポーターへの感謝も口にする。

「やっぱりサポーターの方々の気持ちが伝わって、勝点1ですが、勝点を持って帰れるので、そこは選手にもサポーターの方々にも感謝しています」

 周囲への感謝は、川崎の選手、関係者が常々、示している想いである。改めて脇坂泰斗に想いを訊いても、同様の言葉が返ってくる。

「こういうアクシデントがあったにも関わらず、ゲームにこうして入れたのは、鹿島アントラーズさんのスタッフの方々、フロンターレのスタッフの方らが僕らに試合に集中できる環境を作ってくれたからだと思います。感謝してゲームだけに集中できたので、そこに尽きるかなと思います」

 またサポーターの後押しが力になったと振り返る登里享平も「まずは陽性が出た選手の早い回復を祈っていますし、これ以上広がらないことを願っています。素早く対応していただけましたし、両チームともそういうところの不安はなく、気持ちを切らさずに戦えました」と語る。

 一方で鹿島のザーゴ監督も難しい対応だったことを明かしつつ、選手を労う。

「昨夜から起きてしまい、検査をするのは皆、不安だったと思う。永戸選手はかかりたくでかかったわではなく、感染対策をしていてもかかってしまう。そういう意味で難しい社会情勢になっている。濃厚接触者も出て、町田選手、永戸選手、荒木選手らは、これまで先発や試合に絡んできた選手なので、準備のところでドタバタしてしまった部分もあった。選手たちも恐らく寝不足の状況であったと思う。

 ただ逆に代わりに出場した選手がこのチームの、グループの凄さをピッで示したと思うし、しっかり表現する部分、体現する部分を示したと思う。そこは選手を称えたい」


試合後には温かい光景が





 また熱いゲームとなった一戦では、ピッチ外でも微笑ましいシーンがあった。

 ひとつは昨季まで川崎に所属し、古巣との初対戦となった鹿島のCB奈良竜樹と元チームメイト、サポーターとの交流だ。

 奈良は気合十分にピッチに入り、失点シーンでは難しい対応を強いられたが、その後も気持ちのこもったプレーを披露。

 ハーフタイムや試合後には戦友たちとの親交を深め、川崎サポーターへ挨拶に向かうと温かい拍手が送られた。





 一方で試合後に反対方向の鹿島サポーターのもとへ駆け寄り、深々とお辞儀をしながら挨拶をしたのは、今季限りでの現役引退を決めている中村憲剛だ。

 Jリーグで多くの功績を残してきた男に対しては、これまで幾度となく激闘を繰り広げてきた“ライバル”とも言える鹿島のサポーターも盛大な拍手を寄せたのだ。

 試合が終われば互いの健闘を称え合う。直前にアクシデントに揺れた一戦であったが、ピッチにはフットボールの素晴らしさが感じられるシーンが詰まっていた。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)



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