http://sportsnavi.yahoo.co.jp/special/soccer/jleague/2013/monthlymvp/columndtl/201309140004-spnavi
4試合連続6ゴールで月間MVPを受賞
リーグ戦4試合連続6ゴール。スルガ銀行チャンピオンシップのサンパウロ戦(8月7日)で達成したハットトリックも含めれば、8月は実に7試合で9得点を記録したことになる。これだけの結果を残したのだから、鹿島アントラーズのFW大迫勇也が、J1リーグの8月MVPに選ばれることに異論を唱える人はいないだろう。
リーグ戦6ゴールの内訳は、クロスボールから2つ、スルーパスから1つ、ドリブルシュートから1つ、セットプレーから2つ(PKを含む)と、多岐に渡る。とりわけ印象的だったのが、第22節の横浜F・マリノスで決めた2つのゴールだ。0−1とリードされて迎えた69分、本山雅志からのスルーパスに反応すると、マークに付いていた横浜FMの元日本代表DF中澤佑二を振り切り、左足で同点ゴール。そして78分にも、ドリブルで中央に切り込み、立ちはだかる中澤をあざ笑うかのように、カーブをかけたコントロールショットでネットを揺らした。2つのゴールを演出した本山が「今日は何よりもサコ(大迫)がすごかった。大迫、半端ねえ」と絶賛したように、この日見せたパフォーマンスは鮮烈なインパクトを与えた。
もっとも当の本人は至って冷静。「まず、勝つことが大事。次、負けたらホームで勝った意味がないので、次も勝ちたい」と、あくまでチームの勝利を最優先に考えているようだった。
ザッケローニ監督も評価するFWとしての資質
リーグ戦4試合連続6ゴール。スルガ銀行チャンピオンシップのサンパウロ戦(8月7日)で達成したハットトリックも含めれば、8月は実に7試合で9得点を記録したことになる。これだけの結果を残したのだから、鹿島アントラーズのFW大迫勇也が、J1リーグの8月MVPに選ばれることに異論を唱える人はいないだろう。
リーグ戦6ゴールの内訳は、クロスボールから2つ、スルーパスから1つ、ドリブルシュートから1つ、セットプレーから2つ(PKを含む)と、多岐に渡る。とりわけ印象的だったのが、第22節の横浜F・マリノスで決めた2つのゴールだ。0−1とリードされて迎えた69分、本山雅志からのスルーパスに反応すると、マークに付いていた横浜FMの元日本代表DF中澤佑二を振り切り、左足で同点ゴール。そして78分にも、ドリブルで中央に切り込み、立ちはだかる中澤をあざ笑うかのように、カーブをかけたコントロールショットでネットを揺らした。2つのゴールを演出した本山が「今日は何よりもサコ(大迫)がすごかった。大迫、半端ねえ」と絶賛したように、この日見せたパフォーマンスは鮮烈なインパクトを与えた。
もっとも当の本人は至って冷静。「まず、勝つことが大事。次、負けたらホームで勝った意味がないので、次も勝ちたい」と、あくまでチームの勝利を最優先に考えているようだった。
ザッケローニ監督も評価するFWとしての資質
この8月の爆発が、9月にグアテマラ、ガーナと対戦する日本代表への選出につながった。7月の東アジアカップでは、オーストラリア戦で2ゴールを決めるなど、日本の同大会初優勝に貢献したものの、海外組が復帰した8月のウルグアイ戦では招集すらされなかった。メンバー発表(8月8日)の前日、サンパウロ戦でハットトリックという最高の結果を残しただけに、悔しさもひとしおだったはずだ。日本は、ウルグアイに2−4で完敗し、1トップで出場した柿谷曜一朗(セレッソ大阪)も、途中出場した豊田陽平(サガン鳥栖)も不発に終わった。
そうした状況の中で、大迫に再びチャンスが回ってきたのは、必然だった。日本のアルベルト・ザッケローニ監督は、こう大迫を評価している。
「ボックス内に入っていく動き、フィジカルの強さ、ダイナミズムやポストプレー、守備と絡める動きが優れている。最近はゴールに向かう姿勢も出てきた」
ザッケローニ監督が評すように、大迫にはFWとして必要な資質が多く備わっている。指揮官が挙げた以外にも、ボールを持った時には、ゲームメークもできるし、ミドルレンジからのシュートも得意としている。東アジアカップのオーストラリア戦では、豊田との2トップで出場しながらも、途中からは1.5列目に下がって、最前線と中盤をつなぐ役割も果たした。「本当はトップでやりたい」と試合後に語っていたが、こうしたさまざまなプレーに適応できるのも、“万能型FW”たるゆえんだろう。
しかし、この器用さが時としてマイナスに働いてしまうこともあった。U−23日本代表が44年ぶりのベスト4進出を果たした2012年のロンドン五輪。予選では主力として全8試合中7試合に出場していた大迫だが、本大会に臨む18人のメンバーには選ばれなかった。FWで選出された永井謙佑(名古屋グランパス)、大津祐樹(VVV/オランダ)、齋藤学(横浜FM)、杉本健勇(C大阪)は皆、スピードや高さ、ドリブルといった際立った個性を持っており、関塚隆監督も「前線の組み合わせを考えた時に、日本の良さである距離感やサイドからの突破が大事になってくるし、高さも重要になってくる」と、選考理由を説明している。
万能型FWという言葉は、得てして曖昧な表現になりやすい。何でもできるが、裏を返せば個性がないとも置き換えられる。もちろん同じ万能型FWでも、ズラタン・イブラヒモビッチ(パリ・サンジェルマン)のように、圧倒的な結果を残していれば、数字で判断されるポジションであるだけに、そのすごさは簡単に理解ができる。しかし、昨年までの大迫は、リーグ戦で2けたゴールを記録したことがなく、やや物足りない成績に終わっていた。万能型FWとして、世界で戦うには実力不足と判断されても仕方がなかった。
そうした状況の中で、大迫に再びチャンスが回ってきたのは、必然だった。日本のアルベルト・ザッケローニ監督は、こう大迫を評価している。
「ボックス内に入っていく動き、フィジカルの強さ、ダイナミズムやポストプレー、守備と絡める動きが優れている。最近はゴールに向かう姿勢も出てきた」
ザッケローニ監督が評すように、大迫にはFWとして必要な資質が多く備わっている。指揮官が挙げた以外にも、ボールを持った時には、ゲームメークもできるし、ミドルレンジからのシュートも得意としている。東アジアカップのオーストラリア戦では、豊田との2トップで出場しながらも、途中からは1.5列目に下がって、最前線と中盤をつなぐ役割も果たした。「本当はトップでやりたい」と試合後に語っていたが、こうしたさまざまなプレーに適応できるのも、“万能型FW”たるゆえんだろう。
しかし、この器用さが時としてマイナスに働いてしまうこともあった。U−23日本代表が44年ぶりのベスト4進出を果たした2012年のロンドン五輪。予選では主力として全8試合中7試合に出場していた大迫だが、本大会に臨む18人のメンバーには選ばれなかった。FWで選出された永井謙佑(名古屋グランパス)、大津祐樹(VVV/オランダ)、齋藤学(横浜FM)、杉本健勇(C大阪)は皆、スピードや高さ、ドリブルといった際立った個性を持っており、関塚隆監督も「前線の組み合わせを考えた時に、日本の良さである距離感やサイドからの突破が大事になってくるし、高さも重要になってくる」と、選考理由を説明している。
万能型FWという言葉は、得てして曖昧な表現になりやすい。何でもできるが、裏を返せば個性がないとも置き換えられる。もちろん同じ万能型FWでも、ズラタン・イブラヒモビッチ(パリ・サンジェルマン)のように、圧倒的な結果を残していれば、数字で判断されるポジションであるだけに、そのすごさは簡単に理解ができる。しかし、昨年までの大迫は、リーグ戦で2けたゴールを記録したことがなく、やや物足りない成績に終わっていた。万能型FWとして、世界で戦うには実力不足と判断されても仕方がなかった。
代表戦では悔やまれる場面も
08年度の全国高校選手権で大会記録となる10得点を挙げ、鳴り物入りで鹿島に加入した大迫も今年で23歳。同い年の酒井高徳(シュツットガルト/ドイツ)や酒井宏樹(ハノーファー96/ドイツ)、1つ上の清武弘嗣(ニュルンベルク/ドイツ)らU−23で共に予選を戦った選手たちは、すでに海外でプレーし、代表にも定着している。また、代表で1トップの座を争う同い年の柿谷も昨年ブレイクを果たし、東アジアカップでは日本を優勝に導く活躍を披露した。柿谷はウルグアイ戦にも招集され、1トップで先発している。
彼らに遅れをとっていた大迫だが、Jリーグで継続的にプレーし、ゴールという目に見える結果も残してきたことで、徐々にチャンスは与えられてきている。9月6日のグアテマラ戦では先発で45分間出場。ペナルティーエリア外からミドルシュートを狙うなど、ザッケローニ監督も評価するゴールへの姿勢や、巧みなポストプレーを見せた。本人も「最初に考えることはシュートを打つことなので、そこはブレずにやっていた。あとはもうちょっと(シュートやパスを)使い分けることができれば、もっと厚い攻撃ができたと思う」と、手ごたえをつかんでいるようだった。
しかし、ガーナ戦では悔やまれる場面もあった。83分、ドリブルでペナルティーエリア付近まで進んだ大迫に2つの選択肢が生まれる。1つはそのまま自分でシュート、もう1つはダイアゴナルに走る本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)へのスルーパス。大迫が選択したのは後者だった。状況としては、前述した横浜FM戦の決勝ゴールのシーンと似ていた。確実に点を取れる方を選択したのかもしれないし、遠慮もあったのかもしれない。だが、アピールする立場の選手であるならば、思い切って自らシュートを狙ってもいい場面だった。
もっともザッケローニ監督は、大迫の働きに満足していた。
「ペナルティーエリア内で存在感を発揮したし、トレーニングに臨む姿勢も良かった。(ガーナ戦では)良い形で動き出したときに試合終了のホイッスルが鳴り、審判に対して怒りをあらわにしていたが、そういうメンタリティーも悪くない」
選手としての階段をひとつ上がろうとしている
彼らに遅れをとっていた大迫だが、Jリーグで継続的にプレーし、ゴールという目に見える結果も残してきたことで、徐々にチャンスは与えられてきている。9月6日のグアテマラ戦では先発で45分間出場。ペナルティーエリア外からミドルシュートを狙うなど、ザッケローニ監督も評価するゴールへの姿勢や、巧みなポストプレーを見せた。本人も「最初に考えることはシュートを打つことなので、そこはブレずにやっていた。あとはもうちょっと(シュートやパスを)使い分けることができれば、もっと厚い攻撃ができたと思う」と、手ごたえをつかんでいるようだった。
しかし、ガーナ戦では悔やまれる場面もあった。83分、ドリブルでペナルティーエリア付近まで進んだ大迫に2つの選択肢が生まれる。1つはそのまま自分でシュート、もう1つはダイアゴナルに走る本田圭佑(CSKAモスクワ/ロシア)へのスルーパス。大迫が選択したのは後者だった。状況としては、前述した横浜FM戦の決勝ゴールのシーンと似ていた。確実に点を取れる方を選択したのかもしれないし、遠慮もあったのかもしれない。だが、アピールする立場の選手であるならば、思い切って自らシュートを狙ってもいい場面だった。
もっともザッケローニ監督は、大迫の働きに満足していた。
「ペナルティーエリア内で存在感を発揮したし、トレーニングに臨む姿勢も良かった。(ガーナ戦では)良い形で動き出したときに試合終了のホイッスルが鳴り、審判に対して怒りをあらわにしていたが、そういうメンタリティーも悪くない」
選手としての階段をひとつ上がろうとしている
今後も代表に選ばれ続けるためには、鹿島での活躍が必要不可欠となる。リーグ戦第26節終了時点でチームは首位の横浜FMと勝ち点7差の4位と、09年以来となる優勝は射程圏内。そこで当然求められてくるのは、エースストライカーのゴールだ。大迫の出来が、チームの浮沈を左右するのは疑いようがない。
リーグ戦で6ゴールを記録した8月は、ストライカーとしての嗅覚が研ぎ澄まされていた。第23節の清水エスパルス戦では相手の集中力が高まっていない前半開始わずか12秒でゴール。続く第24節でもCKからのこぼれ球に瞬時に反応し、振り向きざまのボレーを突き刺している。「こぼれ球や、相手の隙は常に狙っている」。第26節終了時点で14得点と、今季に入ってゴール数が飛躍的に伸びたのも、こうした意識改革によるところが大きい。Jリーグで見せているプレーを代表でも披露できれば、ワールドカップ・ブラジル大会へのエントリーは十分に可能だろう。
最近では、試合中に手をたたいて味方を鼓舞(こぶ)するシーンも見られるようになった。プロ5年目を迎え、スーパールーキーから鹿島のエースストライカーとなった大迫には、チームをけん引する役割も求められている。思うように結果が出ず、五輪代表から落選するなど挫折も味わった。しかし、ようやく覚醒の時を迎え、選手としての階段をひとつ上がろうとしている。「代表は1人ひとりがすごくうまいし、その中で自分がひとつのオプションになれれば、僕自身のレベルアップにもつながる。もっとそこに絡んでいければ」。大迫の視界には今、明るい未来が開けている。
<了>
(文・大橋護良/スポーツナビ)
リーグ戦で6ゴールを記録した8月は、ストライカーとしての嗅覚が研ぎ澄まされていた。第23節の清水エスパルス戦では相手の集中力が高まっていない前半開始わずか12秒でゴール。続く第24節でもCKからのこぼれ球に瞬時に反応し、振り向きざまのボレーを突き刺している。「こぼれ球や、相手の隙は常に狙っている」。第26節終了時点で14得点と、今季に入ってゴール数が飛躍的に伸びたのも、こうした意識改革によるところが大きい。Jリーグで見せているプレーを代表でも披露できれば、ワールドカップ・ブラジル大会へのエントリーは十分に可能だろう。
最近では、試合中に手をたたいて味方を鼓舞(こぶ)するシーンも見られるようになった。プロ5年目を迎え、スーパールーキーから鹿島のエースストライカーとなった大迫には、チームをけん引する役割も求められている。思うように結果が出ず、五輪代表から落選するなど挫折も味わった。しかし、ようやく覚醒の時を迎え、選手としての階段をひとつ上がろうとしている。「代表は1人ひとりがすごくうまいし、その中で自分がひとつのオプションになれれば、僕自身のレベルアップにもつながる。もっとそこに絡んでいければ」。大迫の視界には今、明るい未来が開けている。
<了>
(文・大橋護良/スポーツナビ)