http://www.sanspo.com/soccer/news/20141211/jpn14121111300007-n1.html
私事で恐縮だが、11月に一般スポーツを扱う運動部に異動した。1997年の入社1年目から、2002年の日韓W杯までサッカーを担当したが、それ以来の“復帰”である。
離れていた間、サッカー界で気になるフレーズを何度か耳にした。「代表引退」。文字通り、選手が日本代表から離れるというものだ。
日本では06年ドイツW杯後に中沢(07年に復帰)、10年南アW杯後に中村(ともに横浜M)、同7月に楢崎(名古屋)が表明した。また、すぐに翻意したが今年6月のブラジルW杯後に内田(シャルケ)が示唆したのも記憶に新しい。
「ちょっと待て」と、いいたい。メンバーを選ぶのは監督だ。そこに選手の“拒否権”は存在しない。監督は日本の勝利のために最善のメンバーを招集している。選ばれし者は、そこに誇りを感じてほしい。
どの選手も初めて日の丸のユニホームに袖を通したときの喜びと責任感は覚えているだろう。引退発言は、それらの思いが希薄になったといわれても仕方のない行為ではないか。「代表に呼ばれなくなった」となる前に、ある程度のパフォーマンスを維持しているうちに身を引くことで、面目を保っているようにも感じる。
サンケイスポーツ専属評論家で元日本代表MFの本田泰人氏は「詳しい事情は分からないけど、代表が軽視されている感じはする。ベテランが日本サッカー界の将来を思い、若手のために身を引く、というのは百歩譲って分かるけど、それでも自分が現役の頃には考えられなかった」と苦言を呈した。
今でもカズこと三浦(横浜FC)や、今季のリーグMVPの遠藤(G大阪)、女子の澤(INAC神戸)ら「現役でいる限りは代表を目指す」と代表にこだわり続けるベテランだっている。
日程とコンディションの問題などもあるのだろうが、代表の常連組は若手が乗り越える壁となるべきだ。自分を超える新鋭にレギュラーの座を奪われたとき、安心して身を引けばいいのではないか。もちろん、奪い返すくらいの気迫はほしいところだが-。
湯浅 大(ゆあさ・だい)
1997年入社、サッカー、プロ野球、大リーグ、芸能などを担当。五輪、サッカーW杯、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)、ワールドシリーズ、紅白歌合戦を取材しているのが小さな自慢。11月から一般スポーツデスク。