ページ

2015年3月1日日曜日

◆C大阪・アウトゥオリ監督「厳しい要求受けるシーズン…若返りは簡単ではない」/独占インタビュー(1)(サンスポ)


http://www.sanspo.com/soccer/news/20150226/jle15022619100007-n1.html



 2014年にクラブ3度目のJ2降格を強いられたセレッソ大阪にとって、2015年はクラブ再建のための重要なシーズン。再生請負人として招聘されたのは、百戦錬磨のブラジル人指揮官、パウロ・アウトゥオリ監督だ。過去25年間に母国ブラジルをはじめとしてポルトガル、ペルー、日本、カタールで指揮を執った彼は、サンパウロ時代には2005年FIFAクラブワールドカップ制覇も経験。2006年にはJリーグの常勝軍団・鹿島アントラーズを指揮し、新人だった内田篤人(シャルケ)を抜擢している。チームの底上げとともに若い力を伸ばせる指導者として大きな期待を寄せられている。そのアウトゥオリ監督にここまでのチーム作りと今季のビジョンを伺った。

 ――9年ぶりの日本での指揮となりますが、セレッソ大阪の動向は見ていましたか?

 「鹿島の後、いろんな国へ行きましたが、自分が仕事をした国のことはつねにチェックしていました。セレッソがどれだけ偉大なクラブかというのは、もちろん理解していましたし、今回再来日してみて、組織力や環境も含めて絶対にJ1にいるべきクラブだなと再認識しましたね。J1に復帰するために、今季はタフな1年を戦い続けなければいけないと強く思いました。昨季のセレッソは監督が3人変わって、選手たちには本当に難しい状況だった。コンセプトが分かりかけた時に監督が交代し、全然違う新しいものを求められるというのが、シーズン中に3回も起こることは日本ではなかなかない。僕自身にとってもサプライズでした。選手たちも頭が混乱したでしょう。だからこそ、彼らは自信を取り戻していかければいけない。そう仕向けられるように、僕も言葉をかけていきたいと思っています」

 ――キャンプ中の練習試合ではメンバーを固定することが多かったようですが。

 「歴史を振り返ると、セレッソというクラブは何が起きるか分からない。その過去と同じような波を作ってはいけない。まずはチームとして固いベースを作らないといけない。そのベースがあってこそ、初めて若手も自分の持ち味を出せるようになる。実際、若い選手もすごくいい練習をしています。今回のキャンプでは試合出場機会が少なかったかもしれないですけど、シーズン開幕後はリーグ戦後に沢山の練習試合を組み込んでいきますし、彼らの台頭は必ずあると思いますよ」

 ――鹿島時代に高卒ルーキーだった内田篤人選手をいきなり抜擢したアウトゥオリ監督には、若手の底上げも期待されています。

 「当時の鹿島はチーム移行期でしたね。内田篤人がデビューして、チームを若返らせるという意味では1つ、いい仕事ができたのかなとは思います。ただ、全ての若手をすぐ公式戦に送り込めるわけじゃない。やはり選手の成熟度次第なんですよね。内田篤人はあの時まだ17歳だったと思いますけど、練習を3回見ただけで、もうプロとして成熟した選手だなと僕はすごく感じたんでね。今季のセレッソはJ1昇格という大きな責務があるし、厳しい要求を受けるシーズンでもあるので、若返りはなかなか簡単には行かない部分もあります。でもポテンシャルの高い若手は沢山いる、それは間違いないなと。チームの現実と若手の成長を見極めながら、タイミングを図っていきたいですね」

 ――目下、チーム全体に植えつけている攻守両面のコンセプトは?

 「サッカーには全く違う局面が2つある。それはオフェンスとディフェンスですね。さらに攻撃から守備の切り替えと、守備から攻撃の切り替えという局面もあります。そういったところでバランスが取れれば、どんなシステムであってもチームは機能する。選手たちにはまずそこを理解してもらいたいです。それからセットプレー。今のサッカーではセットプレーの重要性がより一層、高まっていますからね。もう1つ大切なのは、チームとしていかに連動して動くか。横幅を使いながらタテを意識するとか、プロセスを踏みながら今、組織を作り上げているところです」

 ――今季J2ではセレッソに対して引いて守ってくるチームが多くなりそうですが、そのあたりの対策は?

 「選手たちにも、今シーズンは単純に昇格が難しいというだけではなくて、我々に対して守りを固めてくるところが多くなる分、より難しいと話しています。ただ、相手が非常に守備的だとしても、負けた理由には一切ならない。相手が守備を固めてカウンター狙いで来るなら、我々はどう攻めるのかを考えなければならない。『いいサッカーをしたけど、相手がずっと守ってばかりいたから勝てなかった』というコメントをよく聞きますが、打開する術を身につけておかないとそういうことになってしまう。勝ち切るためには戦術、技術、フィジカルと全てが求められますけど、一番重要なのはメンタルの部分。まずはそこかなと思います」

 ――フォルラン、カカウ、パブロを筆頭に攻撃陣に求めるものは?

 「彼ら3人だけはなくて、玉田(圭司)はクオリティが高くて経験もあるし、クニ(関口訓充)もいます。チーム内で健全な競争が生まれるように僕もつねに導いていきたい。我々の求めるものに対して理解度が高い選手が試合に出ることになると思います。フォルランはキャンプ合流が遅れましたが、昨年のフロントとそういう話をしていたので今いえる事は特にない。ただ僕は今、彼のことを最高に素晴らしいプロフェッショナルの選手だと思っています。いい練習をしているし、選手としてはポテンシャルについては僕がコメントする必要は全くない。彼自身も自分に求められている事を一番自覚しています。今季は彼が活躍してくれること、チーム躍進の原動力になることを強く期待しています。カカウもフォルラン同様、ホントに経験豊富な選手。パブロは若いけどポテンシャルが高いし、チームのために献身的に働いてくれる。そこはホントに重要な要素です。彼らの中から得点源になってくれる選手、チャンスを効率的にゴールにつなげられる選手が出てくれば、チームの躍進に必ずつながると確信しています」

 (インタビュー収録日2015年2月19日)

文/元川悦子

 1967年長野県松本市生まれ。94年からサッカー取材に携わる。Jリーグ、日本代表、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は練習にせっせと通い、アウェー戦も全て現地取材している。近著に「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由」(カンゼン刊)がある。