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クラブW杯決勝(2016年12月18日 横浜国際)
惜しくも大金星を逃した。アジア勢で初の決勝進出を果たした鹿島(開催国)が、欧州王者レアル・マドリードに延長戦の末、2−4で敗れた。0−1の前半44分にMF柴崎岳(24)が同点ゴール。1−1の後半7分には再び柴崎が2点目を奪った。しかし、Rマドリードのポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(31)にハットトリックを決められるなど、最後は力尽きた。Rマドリードは前身のインターコンチネンタル杯(トヨタ杯)を含めて5度目のクラブ世界一で最多記録を樹立した。
それは、Jリーグ史に残る歴史的瞬間だった。鹿島の背番号10が、世界を驚かせた。まずは0−1の前半44分。柴崎は左サイドのFW土居のクロスにニアで反応した。胸トラップから左足を勢いよく振り抜き、同点ゴール。さらに1−1で迎えた後半7分には、中央で数人の相手に囲まれると、一度ボールを左に持ち出して自身の左側にフリーのスペースを生み出した。直後、左足を一閃(せん)。鋭い弾道の逆転弾が、左ネットに突き刺さった。「歓声で入ったのが分かった」。驚がくの2得点。それでも勝利が確定していないため、あえて喜びの感情はしまい込んだ。
「鹿島アントラーズというクラブを未来へ、歴史的なものにするために戦いたい」。まさに言葉通りの大活躍だった。大会で3番目に活躍した選手に贈られるブロンズボール賞も獲得。だがCロナ、モドリッチと表彰式の壇上で肩を並べても、表情は晴れない。「歴史ではRマドリードの名前が残るだけ。自分たちの名前を刻みたかった」。本気で世界の頂点を目指したから、本気で悔しがった。
周囲を驚かせるほどの向上心を持っている。12年12月3日。20歳の柴崎はJリーグのベストヤングプレーヤー賞を受賞した。その時に放った言葉は、華やかな授賞式を凍り付かせた。「受賞に値する選手は0人だった。世界に目を向けると、ACミランのエルシャーラウィ、Rマドリードのバラン、サントスのネイマールらがいる。彼らのような活躍をしたかといえば、そうではありません」。あれから4年。相手がRマドリードであっても、その相手を脅かす活躍を見せても己が満足できなければ笑うことはできなかった。
昨オフに移籍を模索したように、かねて強い海外志向を持つ。すでにスペインの複数クラブが興味を持っているとの情報もある。冬の移籍市場が開く前に、自らの実力を世界に知らしめる絶好のチャンスで、アピールには十分すぎる存在感を見せた。Rマドリードのジダン監督からは「鹿島の選手の何人かはスペインでプレーできると思う。とても良い選手だからだ」と賛辞を送られた。だが、決して満足はしていない。「通用した部分がフォーカスされるかもしれないけど、課題はまだまだたくさんある。また挑戦できるように頑張りたい」。銀河系軍団を慌てさせた主役は、再挑戦を誓って静かに舞台を去った。