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2016年12月10日土曜日
◆セミプロ相手に薄氷の勝利。 クラブW杯で鹿島の「内弁慶」がまた出た(Sportiva)
https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/football/jleague_other/2016/12/09/___split_33/
これもまた、違う意味での鹿島アントラーズらしさが出た試合、ということになるのだろう。
12月8日に開幕したクラブワールドカップ。開催国枠で出場したJ1王者の鹿島は、1回戦でオセアニア王者のオークランド・シティと対戦し、2-1で勝利。準々決勝へ駒を進めた。
後半に入った50分に先制を許す苦しい展開となりながら、その後、2点を奪って逆転。浦和レッズを下して王座に就いた、Jリーグチャンピオンシップ決勝の第2戦に続く鮮やかな逆転勝利は、一見すると、鹿島らしい勝負強さを発揮した試合のように見える。
だがしかし、対戦相手のレベルを考えれば、この逆転勝利をポジティブなものととらえてもいられない。
オークランド・シティはニュージーランド王者にして、OFC(オセアニアサッカー連盟)が主催するOFCチャンピオンズリーグの優勝クラブ。今大会が6年連続8回目の出場と、オセアニアでは圧倒的な力を誇る絶対王者だ。
とはいえ、その実力を日本のクラブも出場しているAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に置き換えれば、グループリーグに出場するためのプレーオフに勝てるかどうか、という程度だろう。つまり、仮にもACL制覇を狙うクラブであれば、「ここだけには絶対に勝ち点は落とせない」というレベルの相手である。
そんな相手に前半から攻めあぐみ、あげくに先制点まで許した。結果的に逆転勝利を収めたとはいえ、これをして勝負強いと言っている場合ではないだろう。鹿島の石井正忠監督は言う。
「相手陣内でボールを回していても、シュートが少なかった。シュートの意識がもっとあったほうがよかった。1点を失ってからギアが上がったが、これが続くと、(もっと強い相手になれば)負けてしまう。チームとして修正しながらやっていきたい」
実は、鹿島が海外勢に弱いのは今に始まったことではない。それはACLの成績を見れば明らかだ。
過去、日本のクラブでACLを制したことがあるのは、浦和とガンバ大阪。ほかでは名古屋グランパス、柏レイソルがベスト4まで進出している。
ところが鹿島は、川崎フロンターレ、セレッソ大阪と並び、ベスト8が最高成績。ベスト8なら悪くないと思われるかもしれないが、鹿島の場合、日本国内で圧倒的な強さを見せている分、ほかのクラブとはそもそも出場回数が違う(通算6回出場)。それを考えれば、むしろ鹿島はACLでの弱さが際立っている。
以前のACLは出場クラブ数が現在より少なく、大会方式も異なっていたため、一概に過去の成績との比較はできないが、鹿島が一度もベスト4以上に進出していないことだけは確かだ。
さらにいえば、ACLの前身であるアジアクラブ選手権にさかのぼっても、鹿島はベスト4以上の成績を残していない。ジュビロ磐田が優勝1回、準優勝2回の成績を残している一方で、鹿島はグループリーグ(4チーム中2チームが準決勝に進出する準々決勝リーグ)すら突破したことがないのだ。
国内では、もはや説明不可能なほどの勝負強さを見せる鹿島も、海外勢が相手となるとからっきし勝負弱い。まさに内弁慶なのである。この日のオークランド・シティ戦に関していえば、Jリーグチャンピオンシップから続く過密日程の影響はあっただろう。石井監督は「前半は選手の体が重かったかなと感じた」と見立て、MF永木亮太は「体の疲れは正直ある」と吐露した。
だが、日本開催のこの大会は、いわば鹿島のホームゲーム。相手が長距離移動に加え、慣れない環境で調整していることを考えれば、「それは言い訳にならない」(永木)。
実際、昨年の大会では似たような日程で臨んだサンフレッチェ広島が、同じオークランド・シティを相手に2-0で危なげなく勝利している。永木が続ける。
「余裕がある分ボールを持ちすぎて、普段ならしないミスをして、カウンターからシュートまで持ち込まれることが何回かあった。最後(逆転した試合終盤)の内容でやれるなら、それを最初からやらないといけない」
オークランド・シティとは力の差があったため、結果的に逆転することができた。だが、相手の力がもう少し上なら、先に与えた1点が致命傷になっていた可能性は十分にある。決勝点をアシストしたFW土居聖真は、「失点してから返せたのは、力があるからできることだが」とつけ加えたうえで、こう語る。
「失点してからギアが一段階上がったが、失点する前に自分たちからギアを上げていかないといけない。試合が決勝に近づくと(相手が強くなると)、1点の重みが増す。(逆転勝ちではなく)先制して追加点を取り、2-0、3-0で勝つのが理想」
日本国内の大会では際立つ勝負強さを発揮しながら、これまで何度となくACLで「裏の顔」を見せてきた鹿島。オークランド・シティ戦ではまたしても裏の顔、すなわち内弁慶ぶりを垣間見せた。
Jリーグ屈指の常勝軍団として君臨する鹿島は来季、7回目のACLに挑む。そこで新たな勲章を得るためにも、今大会は海外勢に対する免疫を作る絶好の機会となるはずだが、果たして鹿島はこれを生かせるのだろうか。
多くの選手がサッカーのほかに仕事を抱えるセミプロチームを相手に、薄氷の勝利。内弁慶が前途多難のスタートを切った。