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2017年1月12日木曜日
◆日本はACL出場枠を維持できるか。ポイント算出方法が変更。高まる「爆買い」中国の脅威(フットボールチャンネル)
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に臨む、アジア各国の出場枠を決める際の基準となるポイント算出方法が、大きく変更されたことが明らかになった。代表チームの成績が占める割合が現状の30パーセントから最終的にはゼロとなる一方で、ACLにおける成績が一気に重要視される。2月に幕を開ける2017シーズンのACLで、Jクラブ勢が果たすべきミッションがますます大きくなってくる。(取材・文・藤江直人)
ACL出場枠決定にあたってはクラブの成績が重視されることに
シーズン終盤に無類の強さを発揮した鹿島アントラーズが川崎フロンターレを振り切り、J1年間王者に続く二冠を獲得した元日の天皇杯決勝をもって、Jリーグは全チームがオフに入っている。
もっとも、次なる戦いの足音はすぐそこまで迫ってきている。2シーズンぶりに1ステージ制へ回帰するJ1の開幕が2月25日。それに先駆けるスケジュールで、今シーズンもACLがスタートする。
日本からはアントラーズ、浦和レッズ、フロンターレのJ1年間順位の上位3チームがグループリーグから、同4位のガンバ大阪がプレーオフステージからそれぞれ出場することが決まっている。
特にガンバはバンコク・ユナイテッド(タイ)とジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)の勝者と、2月7日にホームで対戦する。全体の始動は21日で、早急なチーム作りが必要になってくる。
加えて、2017シーズンのACLでのJクラブの成績は、今後のACLにおける出場枠を日本が現状のままでキープしていくうえで、極めて重要なポイントを占めることも明らかになった。
AFC(アジアサッカー連盟)は12月1日に開催した理事会で、2017、2018シーズンにおけるACLの各国出場枠を決定。日本はこれまで通り「3+1」となり、前述の出場チームが出そろった。
ここでいう「3」とはグループステージ参加枠、「1」とはプレーオフステージ参加枠をそれぞれ意味する。日本は韓国、UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア、イランと並んで最多となる「3」を確保した。
出場枠は各国代表チームとACLに出場したクラブの成績をポイント化して、合算したものの多寡で決まる。今回の決定は2013シーズンから2016シーズンまで、合計4年間の成績が対象となった。
詳しい算出方法は省くが、合算ポイントには代表チームの成績が30パーセント、ACL出場クラブの成績が70パーセント反映される仕組みになっている。この割合が大きく変わることもAFC理事会で決まった。
2019、2020シーズンにおけるACL出場枠は、代表チームが10パーセントに対してACLの成績が90パーセントに変更。続く2021、2022シーズンにおいては後者が100パーセント反映される方式になった。
中国とオーストラリアに肉薄されたポイント
しかも、2019、2020シーズンの出場枠決定には、2015シーズンから2018シーズンまでの4年間の成績が対象となる。すでに半分を終えている点に、Jリーグの村井満チェアマンは危機感を募らせている。
「2015シーズンは中国の広州恒大が、2016シーズンは韓国の全北現代がそれぞれACLのタイトルを取っています。日本は特に2016シーズン、ベスト8にひとつのチームも勝ち進めませんでした。
これらの成績が90パーセントも占めるわけですから、2017シーズンと2018シーズンのACLで、Jクラブがどれだけ上位につけられるか。特に2017シーズンは、絶対に譲れない戦いになると思っています」
東アジアにおける最新のポイントを比較すると、日本は2位ながらトップの韓国には20ポイント以上も引き離されている。しかも、中国とオーストラリアには約3ポイント差にまで肉迫されている。
ACLにおけるJクラブの不振をカバーしているのは、言うまでもなく代表チームの成績となる。そこには全日程の半分を終えた、ワールドカップ・アジア最終予選の成績ももちろん反映されている。
9月1日の初戦でUAE代表にまさかの苦杯をなめた日本代表だが、その後に何とか息を吹き返し、2016シーズンの最終戦ではサウジアラビア代表に勝利。グループBの2位で折り返している。
翻って中国代表は5戦未勝利でグループAの最下位にあえいだままで、名将マルチェロ・リッピを急きょ招聘した。オーストラリア代表も、日本戦を含めた最後の2試合を引き分けで終えている。
代表チームのこうした戦いから算出されたポイントが占める割合が、大きく引き下げられる。対照的に重視される過去2シーズンのACLの結果を踏まえれば、特に中国との差はないに等しいと見ていい。
2016シーズンのACL準決勝、つまり東アジアブロックの代表を決める顔合わせは全北現代とFCソウルの韓国対決となり、準々決勝で韓国勢と対峙したのは上海上港と山東魯能の中国勢だった。
2015シーズンのACLではガンバが準決勝、柏レイソルが準々決勝にそれぞれ進出しているとはいえ、圧倒的な戦力を整えた中国の広州恒大が2度目の優勝。日本勢を大きく上回る結果を残している。
脅威となる中国勢の「爆買い」
果たして、巻き返さなければいけない2017シーズンのグループリーグの組み合わせを見ると、Jクラブはいずれも韓国、中国、そしてオーストラリア勢といきなりエンジン全開で戦わなければいけない。
二冠王者のアントラーズはグループFに入った。初戦は2月21日で、ホームにプレーオフステージ1の勝者を迎える。おそらくは韓国の済州ユナイテッドが勝ち上がってくると見ていいだろう。
グループFの最大のライバルは、プレーオフステージ4を勝ち上がってくるであろう中国の上海緑地申花。32歳の元アルゼンチン代表FWカルロス・テベスを、世界最高年俸となる2年総額94億円で「爆買い」するなど、新シーズンへ向けた補強へ躍起になっている。
2007シーズン以来となるACL制覇を目指すグループFのレッズは、昨シーズンの決勝トーナメント1回戦でPK戦の末に苦杯をなめた、因縁のFCソウルと再び同グループとなった。
アントラーズとの富士ゼロックススーパーカップを戦い終えた2月18日の夜に、そのままオーストラリアへ移動。中2日でウェスタン・シドニー・ワンダラーズとの初戦に臨む強行スケジュールも待つ。
加えて、ブラジル代表MFオスカルをチェルシーから「爆買い」して意気揚がる中国の上海上港も、プレーオフステージ3を突破。「日・韓・豪」の争いに加わってくるはずだ。
グループGのフロンターレの前には広州恒大、韓国の水原三星の強豪が立ちはだかる。体制が変わり、エースストライカーの大久保嘉人も抜けたなかで、2月22日の初戦でホームにいきなり水原三星を迎える。
ガンバはプレーオフステージ2を勝ち抜けば、グループHで王者・全北現代、中国の江蘇蘇寧と同組となり、2月22日の初戦はアデレード・ユナイテッド(オーストラリア)の敵地に乗り込む。
過去2シーズンを振り返れば、日本からはともに4クラブが出場したものの、半分はグループステージで姿を消している。シーズン序盤とあってエンジンがかからない点に、村井チェアマンも奮起を促す。
「日本勢はどうしても相手に合わせて適応していくというか、チームを熟成させるのに時間がかかる。最終的にはいい状態となるんだけれども、出鼻をくじかれるような状況が続いてきたので、リーグとしては初戦からフルスロットルを入れられるかどうかという点に関与していきたい。クラブの高いテンションと私たちリーグが車の両輪をなして、スタートダッシュをかけられる雰囲気に資していきたいと考えています」
鹿島の奮闘がJクラブ勢に与えた好影響
これまでにも、たとえば平日にACLが開催されるときには、当該チームに限って週末のJ1の開催を土曜日からその前後にずらすなど、スケジュール面で配慮を重ねてきた。
リーグとしてスカウティング担当をACLへ派遣し、次の対戦相手に関する映像データなどを収集・提供してきた。資金的な援助も行ってきたが、2008シーズンのガンバを最後に優勝から遠ざかっている。
今シーズンもACLとYBCルヴァンカップのグループリーグの日程を重複させて、日本を代表してACLを戦う4クラブが週末のJ1に臨むうえで、コンディション面で不利益を被らないような施策も講じた。
ある意味でリーグとして打てる支援策は出し尽くされた感もあるが、2017シーズンにおいては「いままでとはレイアウトが少し変わってきている」と村井チェアマンは続ける。
「特効薬があるわけではありませんが、ひとつ幸いなのは、FIFAクラブワールドカップの決勝でレアル・マドリーに負けた鹿島が心の底から悔しい思いを抱いていること。次回こそはACLで優勝して、自力でクラブワールドカップへの出場権を獲得したいと選手全員が強く思ってくれている。
年間勝ち点で鹿島よりも上位にいた浦和と川崎の選手たちも、おそらくは『自分たちがあの場にいるべきだった』という思いを重ねながら、クラブワールドカップを見ていたはずです。今回のクラブワールドカップにおける鹿島の頑張りで、リーグ全体がかなり強くモチベートされていると認識しています」
クラブワールドカップは2017シーズンから2年間、UAEで開催される。世界と真っ向勝負に挑める舞台に立つには、ACLの頂点に立ったうえでAFC代表として出場権を勝ち取る以外に道はない。
実際、先のクラブワールドカップを戦い終えた直後から、アントラーズの選手たちは異口同音に「来年のACLを制して、もう一度クラブワールドカップで戦いたい」という目標を掲げていた。
人気の面でも期待されるクラブW杯効果
2016シーズンのJリーグアウォーズで、史上最年長となる36歳でMVPを獲得したフロンターレのMF中村憲剛も、式典終了後の質疑応答でクラブワールドカップに対して偽らざる本音を打ち明けている。
「正直なところ、悔しさとうらやましさが半々の心境で試合を見ていた。日本を代表してレアル・マドリーを相手にあそこまで戦ってくれたことは本当に誇らしかったけど、決勝で負けた悔しさは実際に戦った鹿島の選手にしか味わえない。あの舞台に自分たちが立てなかったことは、すごく悔しかった。
ただ、鹿島がJリーグの力というものを見せてくれたと思うし、来シーズン以降は世界の目がさらにJリーグへ向けられてくるとも思う。自分たちも来シーズンこそは鹿島に負けないようにしたいし、ともにしのぎを削り合って、Jリーグそのもののレベルをあげていきたいと思っている」
その後に準々決勝、準決勝と勝ち上がり、元日に再び邂逅を果たした天皇杯決勝でもアントラーズに返り討ちにあった。それだけに、王者を軸にしたレベルアップの構図は、さらに熱さを増していくはずだ。
決勝戦を除いて、ACLは原則として火曜日もしくは水曜日に開催される。平日の場合はナイターとなり、集客面でも苦戦を強いられるが、村井チェアマンはここでも「クラブワールドカップ効果」を期待する。
「あのレアル・マドリーと戦った大会につながっている、ということがファンやサポーターの方々にも伝われば、グループステージでももう少し人気を集められるかもしれません。クラブワールドカップにもたらされた灯を消さないためにも、非常にいろいろな意味でACLが重要となる1年になると思っています」
「東アジアのベスト4を日本勢で独占したい」(村井チェアマン)
仮定の話をするのは心苦しいが、2017、2018シーズンのACLで日本勢がふるわず、代表の結果が反映される割合が激減する4シーズンのトータルで中国とオーストラリアの後塵を拝したらどうなるのか。
現行の規定のままならば、東アジアで3位に転落した場合はグループステージ参加枠が「2」、プレーオフステージ参加枠も「2」の「2+2」に、4位の場合はグループステージ参加枠こそ「2」で変わらないものの、プレーオフステージではなくその前段階となる予選2回戦に1チームしか出場できない。
ACLに臨める日本のチーム数そのものが減少するわけで、しかも予選2回戦は1月下旬に試合が行われるケースが多い。その場合は天皇杯決勝をなかなか元日から動かせないスケジュール問題と相まって、オフの期間の在り方も再び問われてくるはずだ。
しかも、代表の成績がまったく反映されなくなる2021、2022シーズンのACL出場枠は、2017シーズンからの4年間が対象になる。二重の意味で重要となるだけに、村井チェアマンはこんな希望を描いている。
「目指すのはもちろんACLのチャンピオンですけれども、その前提として東アジア側の決勝、つまり大会の準決勝を日本勢同士で戦う、あるいは東アジアのベスト4を日本勢で独占したいというのはあります」
日本サッカー界の未来がかかる大きなミッションをも託された4クラブは、つかの間のオフで疲れた体を癒し、新シーズンへ向けて新たな鋭気を養ったうえで、今月中旬以降から続々と始動する。
(取材・文:藤江直人)
【了】
https://www.footballchannel.jp/2017/01/11/post193494/