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2017年1月1日日曜日
◆ゲキつよっ!!vol.5「際立った鹿島の完成度。憲剛はレジェンドの境地へ」(ゲキサカ)
解説者の元サッカー日本代表・北澤豪氏による新コラム「ゲキつよっ!!」。日本代表からJリーグ、海外サッカー、育成年代、フットサル、障がい者サッカー……、幅広くフットボールに精通する北澤氏が、テレビでは語り切れない魅力を綴っていきます。
鹿島に見た、世界との化学反応
明日行われる天皇杯決勝にも進出し、鹿島アントラーズがまた一歩タイトルへと近づいている。Jリーグチャンピオンシップにはじまり、鹿島の12月の躍進は目を見張るものがある。
日本で開催されたクラブワールドカップでの躍進は、世界に驚きを与えた。それと同時に、世界と戦う機会があればチーム、そして選手は成長できるということを、我々日本人に証明してくれた。
アジア、ヨーロッパ、南米、アフリカ、オセアニア……、サッカーというひとつの競技でも、そこにはフィジカルや戦術の違いがある。いざピッチで対面したときに、どのように順応していくか。それは身をもって体験することでしか培うことはできない。
昌子源選手や植田直通選手ら鹿島の守備陣は、試合の中で順応し、成長している姿を見せてくれた。相手の前線で縦のポジションチェンジがあった時に、鹿島のCBのマークの受け渡しが上手くいかなかった。それならばらと、下がったFWにCBがそのままついて行って、空いてしまったCBのスペースはSBが埋める。守り方を変えて対応していく姿は頼もしく見えた。それは世界で戦うことを目的に考えたら大切なことだ。
「サッカーは守備から」という認識を改めさせてくれた鹿島の活躍だったが、とはいえサッカーは点を取らないと勝てない。鹿島の攻撃陣で光ったのは、柴崎岳選手の存在だ。
あのレアル・マドリーから2ゴールを奪ったのは評価されて然るべき結果だが、ボールを持ったときの彼からは「チャレンジしよう」という意思が感じられた。ドリブル突破を図ったところで、DFにツブされてしまう。次のプレーはどうするのか、と思って見ていたときに、パスを選択するのではなく、もっと速いドリブルで仕掛けていた。
今季はケガで戦列を離れていて、戻ってきてからもくすぶっている印象を否めなかったが、ようやく吹っ切れた印象がある。「クラブW杯をたんなる1試合にしない」。鹿島の10番からは、そんな気概も感じることができた。
「世界に向けた選手育成」という観点が必要だ。たとえば、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)だけでなく、韓国との交流戦をやってみたり。鹿島の活躍は、アジアのチームにも刺激になったと思う。ACLに出られるのは最大で4チームしかない。国内のクラブに所属しながら、選手を成長させる手段が、代表の強化にもつながるはずだ。
憲剛がかつての日本の10番とダブって見えた
今月20日に行われたJリーグアウォーズをもって、今季のJリーグは終幕した。大会方式に異論を唱えるつもりはないが、年間3位の鹿島が優勝したことで、MVPを決めるのがむずかしくなったことは間違いない。とはいえ、中村憲剛選手(川崎F)がMVPになったのは、納得のいく結果だったと思う。もちろんいままでも素晴らしい選手だったが、今季はまさに“神っていた”。テクニックだけでなく、ゲーム全体のコントロールも含めて、そのプレーぶりはラモス(瑠偉)さんとダブって見えた。
川崎Fは中村憲剛選手を中心に、パスで崩し切る魅力的なサッカーを展開、風間八宏監督体制最終年ということもあって優勝を獲りに行ったシーズンだったが、年間3位に終わってしまった。やはりプロたるもの結果を最重要視すべきなのだが、内容にも目を向けるべきだ。日本人の特徴を活かすという意味では、チャレンジしてみるサッカーだはないだろうか。
2位の浦和レッズの阿部勇樹選手も、個人的にはMVPに値した活躍をしていたと思う。同じ浦和の槙野智章選手も素晴らしいプレーを見せていたが、チャンピオンシップ決勝第2戦でPKを与えたシーンはいただけなかった。「終わりよければすべて良し」というわけではないが、シーズン最後のあのプレーが、「今季のすべて」になってしまったのは残念だった。来シーズンも浦和を中心に優勝争いは推移していくはず。リベンジに期待したい。
第2ステージで2位に躍進したヴィッセル神戸は、来季もおもしろい存在になるだろう。上位3クラブに比べて外国人選手の活躍の比率が大きかったという向きもあるかもしれないが、それも監督の手腕。ネルシーニョ監督は、勝つためには何をしなければいけないのかということをわかっている。とびきり難しいことや、新しいことをやろうとしているわけではなくて、守備を整えて攻守の切り替えを速くしたり、切り替わった瞬間の選択肢に迷わないようにしたり。柏レイソル、古くはヴェルディ川崎の時代から結果を残し続けているネルシーニョ監督は、教本にしてくべき存在ではないだろうか。
横浜F・マリノスはピッチ外の契約の話題で賑わせてしまっているが、チームとしては指針をハッキリ示していかなければならない。「向こう1年を見ているのか、その先の10年を見据えているのか」。チームの新陳代謝は必要不可欠だが、一気に行うべきことではないと思っている。チームには継承していくべき“色”があるからだ。若手選手の成長には、ベテラン選手の存在が欠かせない。Jリーグ発足から24年間、チームの伝統を継承できている鹿島は、そういった意味でもリーグ随一の完成度といえるだろう。
http://web.gekisaka.jp/news/detail/?206691-206691-fl