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2017年4月14日金曜日

◆鹿島撃破のC大阪、好調を支えるものとは? 新監督の大胆な采配と光る“伏兵”たち(サンスポ)


鹿島撃破のC大阪、好調を支えるものとは? 新監督の大胆な采配と光る“伏兵”たち

 3月18日のサガン鳥栖戦で今季初勝利を挙げ、4月1日の横浜F・マリノス戦でも連勝と今季J1で躍進の予感を漂わせているセレッソ大阪。彼らにとって1つの大きな試金石になるのが、4月8日の鹿島アントラーズ戦だった。昨季J1王者に敵地で挑むとあって、柿谷曜一朗、山口蛍ら主力メンバーも気合を入れていた。鹿島はAFCチャンピオンズリーグとの連戦を視野に入れ、小笠原満男ら中心選手数人を温存。20歳の若手ボランチ・三竿健斗ら中盤を総入れ替えして、今季昇格組を迎えた。

 C大阪は序盤こそ、その鹿島にボールを支配されて守勢に回る時間が長かったが、リーグ2試合連続無失点の堅守が光った。鳥栖戦途中から最終ラインに入ってマテイ・ヨニッチとセンターバックコンビを組む木本恭生が開始早々の3分、三竿健の強烈ミドルシュートを、体を張ってブロック。全員の士気を大いに高める。「あのプレーで落ち着けたのはないですけど、ああいうところで体を投げ出せるっていうのは自分のコンディションがいい状態なのかなと思います」と本人は前向きに話したが、こういった新戦力台頭もチーム活性化につながっているのだろう。

 腰痛が癒えて前節から復帰した守護神、キム・ジンヒョンの働きも大きかった。42分にはペドロ・ジュニオールと一対一を冷静にストップ。昨季王者の前に堂々と立ちはだかる。「ジンヒョンは後ろにいるだけで安心感があるし、コーチング含めてすごく声も出してる。今年だけじゃないけど、ジンヒョンに助けられている部分は多い」と山口の神妙な面持ちで話したが、彼を含めて守備陣の落ち着きが今の快進撃を支えている。

 後ろの援護射撃を受け、前線のアタッカー陣も奮闘する。C大阪が喉から手が出るほどほしかった先制点を奪ったのは、後半開始40秒。関口訓充が奪い、杉本健勇からソウザへとつながったボールを関口が再び受け、右サイドの奥深いところまで持ち込んで中央に折り返した。そこで待ち構えていたのが山村和也。打点の高いヘッドがゴールの枠を捉え、古巣・鹿島に大きな衝撃を与えた。

 「飛ばすことを考えて打ったんで、入って良かったなと思います。鹿島の選手からは『決めんなよ~』と笑いながら言われましたけど(苦笑)。彼らは僕がトップ下っていうのは違和感があると思いますけど、前に入ったからにはシュートを決めないといけない。後ろがいつも頑張ってくれているので、得点という形で応えられるようにしたいと思っています」と背番号24をつける男はしてやったりの表情を浮かべた。

 2012年ロンドン五輪代表や鹿島時代はDFやボランチを主戦場としていた山村だが、今季就任した尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督に前へとコンバートされて以来、一段と輝きを増している。鳥栖戦に続くリーグ2点目を挙げただけでなく、前線で杉本と絡みながらタメを作ったり、チャンスメイクをしたりと、多彩な役割を担っているのだ。

 「健勇がどういうところでプレーするかは試合を重ねるごとにちょっとずつ分かってきた。健勇を含めてボランチ、サイドの選手と連係しながら、もっとうまくやっていけたらいい」と彼も手ごたえをのぞかせた。

 その山村のゴールをアシストした関口のスピードとクロスも絶妙だった。

 「ボールを取った位置はちょっと低めだったんですけど、健勇に当てて、落としたボールが自分に戻ってきた。ああいう長い距離を走るとチャンスになるかなと。中を見たら和也が1枚いた。狙った通りの得点だったかなと思います」とセレッソ3年目の31歳のベテランアタッカーも喜びを口にした。

 関口にしてみれば、清武弘嗣が負傷離脱している今、インパクトを残さなければ、今後どうなるかさえ分からない。そういう危機感を常日頃から抱いてピッチに立っている。だからこそ、ダイナミックなアップダウンを繰り返すことができ、肝心なところで相手より一歩先に出られるのだ。

 「今日、(小笠原)満男さんに言われたんですよ。『負けんなよ』って。キヨが戻ってきてもポジション争いに負けるなって意味だとよく分かりました。あの年になっても鹿島でレギュラーを張っている、有言実行の満男さんの言葉は非常に力がこもっていた。その言葉をかみしめて日々の練習から戦いたいなと、あらためて思いましたね」と関口は、J1・500試合出場にあと1と王手をかけている、38歳の大ベテランの激励に大きな刺激を受けていた。

 結局、C大阪は鹿島を1-0で完封。3試合連続無失点で3連勝を飾ることができた。順位も6位まで急上昇。尹監督が就任当初に掲げた一桁(9位以内)を大きく上回る状況になっている。最大の要因は6試合通算4失点という手堅い守備にある。この数字は首位に立つヴィッセル神戸、3位・鹿島と並んでリーグ最少。「セレッソの攻撃的なところから大きく変わってしまっている部分もあるけど、守備で手ごたえがあるから、こうやって連勝できていると思う。鹿島戦の勝利は本当に大きな1勝だった」と山口蛍もサッカーの質的変化を前向きに評していた。

 加えて言うと、柿谷、杉本、山口ら生え抜き組のみならず、山村、木本、関口といった外部加入組の貢献度の高さも見逃せない点だ。彼らはスター性のある柿谷や山口に比べると目立たない存在ではあるが、間違いなく地味に光っている。そういった選手を思い切って引き上げて起用できる、尹監督の大胆な采配力もやはり大きい。

 あらゆる面で好循環となっている今のセレッソだが、4月16日の次節・ガンバ大阪とのダービーに負ければ勢いが止まる可能性もゼロではない。「ガンバには最近代表に入った(倉田)秋君もいるし、ヤット(遠藤保仁)さんも、(井手口)陽介もいる。厳しい試合になるのは間違いないし、そこで負けたら連勝してきた意味もなくなってしまう」と山口も危機感を募らせた。そういうピリピリ感を持ってライバルに挑めるか否か。高い壁を乗り越える勇敢なC大阪セレッソ大阪をぜひ見たい。(文=元川悦子、Goal.com)

http://www.sanspo.com/soccer/news/20170413/jle17041318390009-n1.html