明治安田J1 第10節
金崎が値千金の決勝弾!鹿島が浦和との大一番で会心の完封勝利、暫定首位浮上!
鹿島が敵地での大一番を制し、暫定首位に浮上した。J1第10節、埼玉スタジアムで浦和レッズと対戦すると、24分に金崎のゴールで先制に成功。後半は追加点こそ奪えなかったが、リードを守り切って会心の完封勝利を収めた。鹿島は勝ち点を21に伸ばし、暫定首位に立った。
鹿島は4月30日、J1第9節で鳥栖に2-1と逆転勝利。ホームで先制を許したものの、金崎がPKを沈めて同点に追い付き、ハンドで失点を招いてしまった昌子が値千金のヘディングシュートを決めた。カシマスタジアムでの今季2勝目、週末の勝利は昨年9月以来。聖地が歓喜に包まれ、背番号12と向き合い続ける姿勢を結果で示してみせた昌子を呼ぶ声が鳴り止むことはなかった。殊勲の背番号3は「とにかく、勝てたことが良かった」と安堵の表情を見せた。
4月を勝利で締めくくった鹿島は、休む間もなく次なる戦いへ向かう。中3日で迎えるアウェイゲームは、1ポイント差で追う首位・浦和との大一番だ。5月4日に組まれたJリーグの公式戦はこの試合だけ。埼玉スタジアムのチケットは完売と発表され、ビッグマッチへの注目度は日々高まっていった。石井監督は「何も言わなくても、選手たちはこの試合の重要性をわかっている」と、懸ける思いを明かした。
試合前日のトレーニングでは、数々の横断幕やフラッグがチームを鼓舞した。ゴールデンウィークの真っただ中ということで、多くのサポーターがクラブハウスに駆け付ける。恒例のレクリエーションゲームやセットプレー練習を終え、レオ シルバは「気持ちは非常に高まっている」と、大一番を心待ちにしていた。
「明日はこの試合しか行われない。非常に大事な試合で、経験豊富な選手が重要になる。期待している」と語っていた石井監督は言葉通り、キャプテンの小笠原を公式戦3試合ぶりに先発メンバーに指名した。そして右サイドバックには伊東を起用し、西を左サイドへ。それ以外の9選手は前節と同じメンバーで、GKはクォン スンテ、最終ラインは伊東と西のほか、センターバックでは植田と昌子が不動のコンビを形成する。ボランチは小笠原とレオ、2列目には遠藤と土居、そして前線では金崎とペドロがゴールを狙う。ベンチには、GKの曽ケ端、三竿雄斗、健斗、永木、レアンドロ、鈴木、金森が並んだ。
埼玉は穏やかな青空に恵まれた。ビッグマッチを前にした高揚感と緊張感が、スタジアムに充満していく。ビジターサポーターへ割り当てられたスタンドは限られた数のみだが、アントラーズレッドの情熱が埼玉スタジアムのピッチへ降り注がれる。ウォーミングアップに向かう選手たちを出迎えた大きなチームコール。フラッグの海と化したビジターゴール裏、そしてメインスタンドのビジタースタンドからも大きな手拍子とコールが響き渡った。
チーム一丸で臨む90分。14時2分、キックオフのホイッスルが鳴り響いた。鹿島は立ち上がりから浦和にボールキープを許したが、しっかりとブロックを組んで対応。ペドロと金崎は機を見て鋭いプレスを敢行し、相手GKの自由を奪って攻撃のリズムを作らせない。両サイド深くで起点を作られてクロスを上げられる場面はあったが、センターバックの植田と昌子が粘り強く競り合って応戦。伊東と西も集中力を保ち続け、献身的なカバーリングでピンチの芽を摘んだ。
なかなか浦和ゴール前まで迫ることができずにいた鹿島だが、少しずつ中盤でボールをキープする時間を増やしていく。19分にはペドロが最終ラインの背後を取り、ペナルティーエリア右奥から中央へクロス。20分には敵陣でボールを失った直後に高い位置でプレスをかけ、金崎のミドルシュートへつなげた。得点には結びつかなかったが、敵陣へ押し込む場面が増えたことで、歓喜の時を迎える予感が漂い始めた。
そして、24分。ビッグマッチ最初のスコアは鹿島のエースが記録した。ペナルティーエリア手前でパスを受け、強靭なフィジカルと粘り強いポストプレーでボールを確保した金崎が左前方へ強引に突破。左足を振り抜くと、相手DFに当たったシュートがゴールへ吸い込まれた。背番号33を歓喜の輪が包む。沸騰するアントラーズレッド。1-0。鹿島がアウェイで先制に成功した。
スコアが動き、試合の潮流は激しいものとなった。ファウルのたびに両ゴール裏のサポーターが怒号を上げ、大きなコールがピッチを包み込む。上位対決にふさわしい濃密な時間が続いた。30分以降は少しオープンな展開に推移していったが、31分に植田が相手のスルーパスをスライディングで阻めば、34分にはボールを奪った昌子が鋭い切り返しを繰り返して相手を翻弄。格の違いを見せ付ける守備で、攻撃の芽を摘んでいった。
1点リードで前半を終え、勝負の行方は後半へ。互いがサポーターの待つゴールへと攻め合う45分は、より激しく熱いものとなった。浦和のボールキープが続く展開は前半と変わらないが、鹿島は研ぎ澄まされた集中力でボール奪取を繰り返し、激しいボディコンタクトでバトルを続けた。スペースが空き始めると、ショートカウンターの応酬となってさらなる運動量を要求されることとなった。昌子は「ボランチの2人に助けてもらった」と、無尽蔵のスタミナと状況判断で中盤を支配し続けたレオと小笠原への感謝を口にしている。総力戦で、1点リードのまま残り30分を切った。
後半最初の決定機は61分、ペナルティーエリア左側でボールを収めたペドロのシュートは枠のわずか左へ。64分にもペドロの力強い突破からレオのシュートが枠を越えるなど、惜しい場面を作り出した。そして最大のチャンスは65分、ペドロのドリブルからスルーパスに抜け出した金崎が最終ラインの背後を取って相手GKと1対1に。ペナルティーエリア左側に流れながら右足でファーサイドを狙ったコントロールショットは、無情にも右ポストに弾かれてしまった。
追加点の絶好機を逃しても、鹿島は綻びを作らない。石井監督は70分、遠藤に代えて永木を投入。鋭い出足でボール奪取を繰り返す背番号6を左サイドハーフに配し、中盤に運動量と守備の安定をもたらした。74分にはペドロに代わって鈴木がピッチへ。背番号9は前線での献身的なボールキープで時計の針を進めていった。
スペースが空き、互いのゴール前での攻防が繰り返される白熱の一戦。判定を巡って小競り合いとなる場面もあったが、鹿島の選手たちは冷静に熱く、勝利だけを目指して戦い続けた。終盤は土居がスペースを何度も突いてドリブル突破を敢行。チームを助ける献身的なプレーを見せた。87分に投入された三竿健斗もクローザーとしての役割をしっかりと果たし、4分と表示されたアディショナルタイムにも、ホームチームのスコアが刻まれることはなかった。
1-0。優勝を争うライバルを敵地で破り、埼玉の夕空にアントラーズレッドの歓喜が鳴り響く。王者の誇りと矜持を示してみせた90分。鹿島が勝ち点3を積み上げ、暫定首位に立った。小笠原は「良い形で勝てた」と手応えを掴みつつ「勝ち続けていきたい」とさらなる向上を誓っていた。
鹿島の次戦は6日後、ACLグループステージ最終節でムアントンと対戦。グループE首位通過を懸けたホームゲームに臨む。そしてリーグ戦の次節は14日、神戸をカシマスタジアムに迎える。19日の川崎F戦も含め、ホームゲームが続く5月。勝利を積み重ねるべく、チームは歩みを続けていく。
【この試合のトピックス】
・埼玉スタジアムでの浦和との公式戦で3連勝を果たした。
・今季の浦和との公式戦は2戦2勝となった。
・金崎が公式戦3試合連続のゴールを決めた。
・伊東がリーグ戦4試合ぶりの先発出場を果たし、フル出場で勝利に貢献した。
・小笠原が公式戦3試合ぶり、リーグ戦2試合ぶりに先発メンバーに名を連ねた。J1通算試合出場数は502となり、歴代単独6位となった。
・三竿雄斗がリーグ戦では9試合ぶりにベンチ入り。2月25日の第1節FC東京戦以来だった。
監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
・全体で意識の高い守備ができているので、後半も続けていこう。
・守りに入らず、継続的にプレッシャーをかけて戦うこと。
・サイドでボールを受けたとき、ボールを下げず、前向きにプレーしよう。
浦和レッズ:ペトロヴィッチ
・ボールが入るときに動き出しのタイミングを合わせよう。
・アグレッシブに戦いゴールに向かおう。
・切り替えを早くしよう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:石井 正忠
このような、非常に良い舞台で戦えたことを嬉しく思っている。結果も出たし、喜ばしいことだと思う。強い浦和さんに対してどのように戦っていくかが重要な課題だったが、うまく対応することができて、少ないチャンスを決めきれたことがポイントになったと思う。後半は相手も攻めなければならなくなったので、我々はカウンターの形が多くなった。そこで決めきる力をもう少し付けないといけないと思う。これだけ浦和サポーターが多い中、アントラーズのサポーターの皆さんも数は少なくても応援してくれて、その力が選手の力になって勝利を掴めたと思う。サポーターの皆さんに感謝している。選手たちは90分間、高い集中力を持って戦ってくれた。
Q.西選手が左サイドで非常に効いていたこと、そして駒井選手が投入された後に永木選手を起用したことについて
A.脩斗が体調不良ということで、急遽変更して大伍を(左サイドバックで)起用した。以前の試合でも紅白戦でもやっている形なので、このような起用もあり得る。安定して対応してくれたと思う。駒井選手が入ってきた後はそこからのサイド攻撃を狙ってきたと思うので、守備面の対応のために亮太を左サイドハーフで起用した。
Q.得点の前も後も終始、アントラーズのペースで試合が進んでいたと思うが、ポイントになった部分は?
A.浦和さんはワイドのポジションに必ず選手がいて、そのうえで中央からの攻撃がポイントになる。サイドの選手は仕掛けが得意なのでスペースを与えないということを対策として考えていたので、そこがうまくいったと思う。
Q.センターバックとボランチのコミュニケーションについては?
A.浦和さんとの対戦ではそこがポイントになるが、非常に良かったと思う。守備の時間が長いと崩れがちになるが、うまくコミュニケーションを取りながら対応してくれた。交代で入った選手もうまく理解してプレーしてくれた。最終ラインだけでなく、前線からのプレーの制限もうまくできていたので、全体の守備がうまくいったと思う。
Q.次戦のACLに向けて
A.選手たちの疲労度はかなり高かったと思う。鳥栖戦でもだいぶ疲れていたように見えたが、今節では90分間、タフに戦ってくれた。次戦まで少し間が空くので、しっかりとリフレッシュをして、グループ首位突破できるように準備をしていきたい。
Q.CKの時の守備について
A.マンマークでやっているので、マークを持った選手が責任を負っている。そしてメンバー交代後にどのようにマークを受け渡すかが大事になってくる。ベンチからの指示ではなく、選手たちがしっかり相手の力関係を見ながら変えてくれている。
Q.自分たちのCKにおける、相手のカウンター対策について
A.切り替えの速さとポジショニングの部分だと思う。そしてゴールから遠ざけるという基本的な部分をしっかりとやっていかないといけない。それは毎回言っていて、その意識を守れば大丈夫だと心配していなかった。
浦和レッズ:ペトロヴィッチ
6万人近い観客が入った中でホームで敗れたわけで、非常に痛い敗戦になった。試合を通して、8割くらいは敵陣でのプレーだったと思う。ただ、アントラーズとの試合ではよくあることだが、不運な形で失点をしてしまうと、その後の展開は決して簡単ではない。決して悪い戦いではなかったと思う。チャンスもいくつかあったし、判断や精度がもう少し良ければ決定機を作れる場面はあったと思う。厳しい状況の中で選手たちは最後までしっかりと戦ったので、その姿勢は評価したい。サッカーなので、このような試合もあると思う。最後まで勝利を目指して戦う姿勢はしっかりと見せられた。連戦の中でトレーニングらしいトレーニングを積めていないことも、得点に結び付かない要因の一つだと思う。我々はトレーニングの中で反復していくことで複数の選手間でのアイデアから得点を重ねていく。リカバリートレーニングが続く中で、少しずつズレが出てきている。この試合の後は少し時間が空くので、選手と話をしながら修正していきたい。今日敗れた相手、アントラーズは非常に強いチーム。日本でも一、二を争うチームに対して見せた戦いは悪いものではないと思う。
選手コメント
[試合後]
【金崎 夢生】
相手に試合を支配される形が多かったけど、アウェイでしっかり勝てて良かった。浦和戦であってもいつも通り、意識することなくやれた。次も良いパフォーマンスを出せるように頑張る。シュートは相手に当たったのでラッキーだった。勝ちたい気持ちが出たと思う。自分は得点の部分だけ。それ以外で頑張っている選手もいっぱいいる。チームとして勝てたことが大きい。
【小笠原 満男】
良い形で勝てたと思う。これを続けていくことが大事。もう少しチャンスを作れれば良かったけど、この暑さと連戦の中でしたたかな戦い方をすることも重要だった。勝ち続けていきたい。
【レオ シルバ】
試合前日に話をした通り、高い集中力を持続できるかどうかが大事な試合だった。相手の狙いを消すことはできたと思う。あれだけの攻撃力を持っているチームを相手に無失点で終わることができたのは自信が深まるけど、もっと質を高めて持続できるように意識していきたい。
【昌子 源】
勝ち点6の重みがある試合だった。優勝するうえでライバルになるチームで、直接対決で勝たないと優勝できないと思っていた。今日はこの試合しかないということで、日本で一、二を争うチームがハイレベルな戦いを見せることができて良かったと思う。
【植田 直通】
先制点を取れたことが大きかった。このような試合では、ギリギリ隣の声が聞こえる程度だけど、声を出すことと気持ちを切らさないことが大事。失点するとしたらクロスかミスからだと思っていた。集中力を切らさないようにずっと源くんと声を出していた。試合をやるたびに互いに成長している実感がある。無失点で勝てたことが大きい。
【クォン スンテ】
ACLでは浦和と対戦したことがあるので、雰囲気は分かっていた。Jリーグでは初めての経験だったけど、楽しかった。浦和は組織的だけど、それはアントラーズも同じ。去年の勝ち点1位のチームに勝ったわけで、アントラーズは誇れるチームだと思う。負ければ差が開くので、勝ち点6が懸かっていた。その試合に勝てて嬉しい。
【西 大伍】
関根選手のところは注意していた。1対2だと厳しかったが、1対1で守らせてくれたし、聖真やボランチがシャドーの選手を見てくれていた。今日は相手にボールを持たれても試合をコントロールできている感覚だった。前線の選手も相手に脅威を与えてくれた。
http://www.so-net.ne.jp/antlers/games/51977