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2017年5月7日日曜日
◆[MOM437]流通経済大DF小池裕太(3年)_鹿島・特別指定解除を乗り越え、3年目で見せる真価(ゲキサカ)
[5.6 第91回関東大学1部L 流通経済大3-1筑波大 たつのこ]
勝利を決定付ける1点だった。流通経済大は筑波大に3-1で勝利し、リーグ3連勝を飾った。DF小池裕太(3年=新潟ユース)は2-0とするゴールを記録。PA左から迷いなく左足を振りぬき、ゴールネットを揺らした。中野雄二監督は「小池の2点目が試合を決定付けた」と評価する。
数的有利に立ち、1-0とリードした後半13分だった。MF森永卓(4年=流通経済大柏高)がためをつくった瞬間に小池は左サイドへ飛び出した。パスを受けると鋭いドリブルから左足を一閃。PA内にはFWジャーメイン良(4年=流通経済大柏高)も詰めていたが、「あの位置だったらシュートを打つべきだと思っているし、シュートしか考えがなかった」と迷いなく足を振りぬいた。少し相手に当たったがネットを揺らし、2-0。チームは勢いに乗った。
指揮官は「小池の能力からいえば、あのゴールは普通のこと。それでも逆風のなかでしっかりできましたし、あそこでシュートを打つ選択をできたのが素晴らしい。日本人はパスしがちですが、積極性やああいうシーンを増やさないと」と手放しで賞賛する。
試合前には中野監督がおもむろに小池の左足スパイクを触り、「最近キックが上手くいってないなぁと魔法をかけておきました」という。この“魔法”が効力を発揮したのか。小池は「“そろそろ決めろ”ということで触られたと思いますが、ばっちり効きましたね」と笑って話した。
選手層厚い流通経済大でルーキーイヤーから出場を重ね、全日本大学選抜では常連。輝かしいキャリアを歩んでいるが、大学2年目の昨季は苦悩のシーズンだった。4月に鹿島アントラーズの特別指定選手として承認され、カップ戦にも出場。しかし流経大は勝利から見放され、リーグでは苦戦。総理大臣杯では格下に敗れ、出場を逃していた。
そんな状況下、小池の気持ちは鹿島へ比重が置かれ、大学の練習がおろそかになっていった。特別指定選手という立場に甘え、授業からも足が遠のいた。結果、流経大サイドから鹿島へ申し立て、7月1日付で特別指定選手“承認解除”となった。
そこから小池は荒れた。自分の知らないところで承認解除となっていたことが許せなかった。「ふてっていたり、やる気がないような感じが続いていた」と本人も言う。それでも夏の韓国遠征や大阪遠征を経て、変化のときは訪れる。大阪遠征最終日の関西学院大との練習試合。承認解除の一件へ不満を言い続けていた小池は川本大輔コーチから強く叱責された。「鹿島から帰ってきたときの練習に気持ちが入っていなかった」とも指摘された。最初は反発したが、試合から離れて思い巡らすうちに「コーチの言っているとおりだな」と思い始めた。
「自分が特別指定だからなど、甘えた部分があった。コーチの言っている通りだなと。ここで本当にしっかりやらないといけない。いい加減に自分も変わらないとだめだなと。そう感じ始めました」。長い時間を要したが、真摯に向き合ってくれた指導者陣との“対話”のなかで堅く凝り固まっていたものがほぐれていった。ようやく目前のことのみに集中できるようになった。
ピッチへ戻った小池は、流通経済大の一員として、ただただ目の前の試合に集中した。チームは後期リーグ戦を4勝2分5敗として、インカレ出場こそ逃したものの残留争いを切り抜けた。そして大学3年目を迎えた今シーズン。憑き物が落ちたようなスッキリとした精悍な顔つきで小池はプレーしている。ポーカーフェイスで相手をいとも簡単に抜き、左足の精度高いキックは健在。“流大の左サイドに小池あり”と示し続けている。
流経大の大平正軌コーチは「ここで本人がしっかりと気がつけたのは非常に大きいこと。まだまだ気づけない選手も多いので」と言い、中野監督も「去年から比べて、かなり大人になった」とその姿を横目に微笑む。
小池は言う。「目の前のことをひとつひとつ100%やるという風にやっていけば、自ずと結果にはつながると思うので。今シーズンはとにかく目の前のことに集中してやっていきたいです」。夢追うあまり、足元がぐらついていたが、今はしっかりと地に足つけてプレーしている。真価の問われる3年目のシーズン。決して後戻りはしない。
(取材・文 片岡涼)
http://web.gekisaka.jp/news/detail/?215526-215526-fl