明治安田生命J1リーグ第19節が8月1日水曜日に開催。鹿島アントラーズはホームにFC東京を迎える
灼熱の大阪2連戦を経て3試合ぶりのホームゲームとなる鹿島アントラーズ。植田直通のベルギー移籍、前々節セレッソ大阪戦での昌子源の負傷交代により、急きょ、最終ラインの「主軸」となった20歳の若きセンターバックがいる。町田浩樹。このFC東京戦にも先発が予想される。
■緊急事態の出場。繰り返した言葉「無失点が収穫」
「(GKクォン)スンテに助けられたし、ポストに当たったシュートもありましたけど、結果としてゼロで抑えることができたのが一番の収穫でした。個人的には(無失点は)初めてですし、そういう意味でも嬉しいです」
7月25日。熱帯夜の長居で、若武者は充実の表情で言葉を紡いでいた。前々節のセレッソ大阪戦、突然訪れた出場機会。
41分、気迫のシュートブロックを敢行したディフェンスリーダーが、苦悶の表情で運び出される――。無念とともに戦いの場を去った昌子源の任を引き継ぎ、町田浩樹は決意を胸にピッチへ足を踏み入れた。
「センターバックが出場するのは緊急事態の時なので、いつでも準備はしていました。落ち着いて試合に入れたと思います」
49分間を走り抜き、桜色の波をはね返し続け、そして任務遂行の瞬間にたどり着く。2-0。「無失点で終えることができたのが、自分としては一番の収穫だと思います」。鮮やかなトラップから繰り出した正確無比のアシストよりも、スコアを許さなかったことに価値がある。町田は「無失点が収穫」と繰り返していた。プロ3年目の20歳にとって、これがJ1での初勝利。幾多もの困難を乗り越えて迎えた、待ちに待った瞬間だった。
「ネガティブな意味ではなく、あの試合があったから成長できたと思います。ボールを蹴れないことに比べれば、あの痛みに比べれば…と思えるようになりましたから」
■右ひざ前十字じん帯損傷。8カ月後の実戦復帰
昨年5月19日。新たな章を刻むはずだった町田の物語は、突然の中断を余儀なくされた。
U-20ワールドカップ韓国大会のメンバー落選、その屈辱から2週間後のJ1初先発初出場。敗戦の悔しさから5日後、「借りを返す」と誓って臨んだ、あの夜――。聖地のピッチに倒れ込んだ背番号28に下された診断は、右ひざ前十字じん帯損傷。「センターバックは(昌子)源くん、ナオくん(植田直通)だけで戦っていくのでなく、自分もいるのだとアピールしたい」。決意を体現する場を失った。起伏の道のりを突き進んだ先に待ち受けていた、残酷な負傷。松葉杖をついてカシマスタジアムを後にする表情が、今でも忘れられない。
悪夢の負傷から8カ月後の実戦復帰、それから半年後に掴んだJ1初勝利。そして――。
7月28日、町田はプロフットボーラーとして初めてスコアを刻んでみせる。しかしそれは、若武者の心を満たすことはなかった。前節・ガンバ大阪戦、吹田の夜、スコアは1-1。青黒を沈黙させたゴールはしかし、勝利をもたらす一撃とはならなかった。
「ゼロで抑えないといけない」。センターバックとしての矜持があるから、失ったスコアが「不運」などと形容されようが関係ない。町田は自らを急き立てるように言葉を並べた。「源くんが離脱している今、結果を残せないと意味がないんです」。そして誓った。「次は必ず、無失点で」。左足に施されたアイシングは、激しいバトルを繰り返した証左だった。だが任務を遂行できなければ、その傷は勲章とはなり得ない。背番号28は次の戦いを迎えに行くかのように、スタジアムを後にした。
「競争はアントラーズにいる以上は当たり前のことなので、切磋琢磨してやっていければと思います。結果を残したいです」
植田の移籍、昌子の負傷、そしてチョン・スンヒョンの加入――。目まぐるしく移り行く競争の日々に身を置き、町田は新たなステージへと足を踏み入れようとしている。「試合を重ねるごとに良くなっていると思います」。
その手ごたえは過信でも慢心でもない。真夏の大阪2連戦は、背番号28にとって大いなるターニングポイントとなるはずだ。桜色と青黒を前に一歩も動じなかった姿は、アントラーズファミリーに明るい未来を予感させたはずだ。
「チームの勝利がすべてです」。幼い頃から憧れ続けたアントラーズを勝たせる、このエンブレムの誇りを守る――。町田浩樹、20歳。幾多ものの困難を乗り越え、思い描き続けた己の姿を、聖地・カシマスタジアムで。
町田浩樹。昌子の任を担う20歳の生え抜きセンターバックの決意【J1第19節・鹿島vsFC東京】