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2018年9月6日木曜日

◆2018JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ 準々決勝 第1戦(オフィシャル)



西大伍 Daigo.Nishi

YBCルヴァンカップ 準々決勝 第1戦

西が先制ヘッドも、ホームで川崎Fとドロー。鹿島、4強入りを懸けて味スタでの第2戦へ。

3年ぶりの聖杯奪回を目指す道のりが幕を開けた。JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ準々決勝第1戦。川崎フロンターレをカシマスタジアムへ迎え撃つと、西のヘディングシュートで先制したものの、PKで同点に追い付かれる。

4日前、鹿島は屈辱の惨敗を喫した。J1第25節の広島戦、結果は1-3。首位との差を詰めるべく乗り込んだ敵地で、己の現在地を突き付けられる90分を過ごしてしまった。鈴木とセルジーニョが電光石火のカウンターを繰り出して均衡を破ったものの、セットプレー2発で逆転を許す。後半立ち上がりには広大なスペースを独走され、3つ目のスコアを失った。鹿島は選手交代を施して必死の反撃を仕掛けたが、その全てがため息へと変わっていく。祈りを声に乗せて届け続けたビジタースタンドの情熱に応えることはできなかった。

失意の選手たちは「圧力を感じた」と口々に振り返った。鈴木は現実から目を背けることなく、「ボールの執着心も間違いなく相手が上だった」と反省の弁を述べている。不甲斐なさと悔しさを胸に刻み、チームは帰路へついた。だが、下を向く時間はない。2日に鹿嶋へと戻ったチームは、16時からのトレーニングで準備を再開。息つく間もなく待ち受ける、次なる戦いへ――。見据える先は水曜日、ルヴァンカップのオープニングマッチだ。プライムステージ準々決勝、第1戦の舞台はカシマスタジアム。聖地で戦う“前半90分”で勝利を掴むべく、選手たちはひたむきにボールを追った。

台風21号が迫りくる試合前日、鹿嶋は曇り空に覆われたものの、練習への支障は全くなかった。ミーティングで意思疎通を徹底し、川崎Fを迎え撃つ90分へ照準を定めて集中力を高めていく。グラウンドではセットプレーの確認を入念に行い、最終調整を終えた。広島での90分をベンチで見届けた土居は「今の自分たちにとって、簡単な相手はいない。苦しんで、もがいて、苦労して勝つしかない。泥臭く勝ちたい」と、貪欲に結果へこだわる姿勢を強調。復活を遂げた安部は「大事なのは、球際やセカンドボールへの対応を90分間集中してやり続けること」と、個々の勝負で上回り続けることを誓っていた。

広島戦から中3日で迎えるホームゲームへ、大岩監督は6名もの先発変更を断行した。ゴールマウスを曽ケ端に託し、チョン スンヒョンと三竿健斗が不在のセンターラインには町田と永木を起用。さらに2列目には安部、前線には土居と金森が並ぶ。その他、最終ラインには西、犬飼、安西が入り、ボランチは永木とともにレオ シルバが君臨。攻撃陣の一角は遠藤が務める。そしてベンチには、GKのクォン スンテ、内田、山本、セルジーニョ、田中、鈴木、山口が座る。川崎Fは代表や負傷で4選手を欠くために先発予想が困難な状況ではあったが、大岩監督は「攻守の切り替え、ハードワーク、自分たちがアクションを起こすこと」と、いつ何時も変わらない、変わってはならない要素の重要性を語っていた。

台風一過の聖地は、真夏の再来を思わせる暑さに見舞われた。青空が広がり、強風が吹き荒れる。それでも、勝利への決意に揺るぎはない。極めて重要な意味を持つ“前半90分”を前に、アントラーズレッドの背番号12が続々と足を運んでいった。ウォーミングアップへと姿を現した選手たちへ、大音量のチームコールが注がれる。前線で先発する金森を呼ぶ声、背番号14のゴールを渇望する叫びがピッチへ響き渡った。



19時4分、戦いの火蓋が切って落とされた。立ち上がりから、ボールポゼッション率を高めたのはビジターチームだった。鹿島は最終ラインから中盤へと差し掛かるところでのビルドアップにミスが多く、なかなかペースを掴めない。4分には左サイドを突破され、ペナルティーエリア左側からクロスを上げられてヘディングシュートを許した。至近距離から打たれた一撃は曽ケ端が間一髪でセーブ。副審の旗も上がっていた。

ボールロストからのカウンターで深い位置まで押し込まれる場面も多く、鹿島はなかなか主導権を握れない。それでも10分を経過した頃から、土居がスペースを突いてパスの経由路を確保し、金森が必死にボールを引き出して基準点になろうと腐心した。15分には土居がスピードに乗ったドリブルでペナルティーエリア右手前まで持ち込んだものの、シュートまでは至らず。苦しい時間が続いたが、突破口を見出そうともがいていた。





すると19分、待望のスコアが刻まれた。ハーフウェーラインを越えた左サイドで安西が前を向き、ロングパスを繰り出す。敵陣深くのスペースでボールを収めた遠藤がペナルティーエリア左外から切り返すと、右足でファーサイドへクロス。フリーで待っていたのは西だった。両足を地に着けたまま、コースを狙って叩き付けるヘディングシュート。相手GKの反応及ばず、ゴールラインを割った。1-0。右サイドで鮮やかな連係を見せ続ける2人が、川崎Fのゴールを陥れてみせた。





苦しみながらも先制に成功した鹿島は少しずつ敵陣でのプレータイムを増やしていく。25分には遠藤が強烈なミドルシュートを放ったが、枠の外へ。とはいえ、ビルドアップでのミスは減らなかった。ショートカウンターを受ける場面も何度もあり、川崎Fに脅かされてしまったもの、プレスをかけて突破を阻み、決定機を作られるには至らなかった。

しかし、30分。痛恨の失点を喫してしまった。自陣右サイドでのボールロストからペナルティーエリア内へパスを通されると、突破に対応した町田のチャレンジがファウルに。PKを知念に決められてしまった。1-1。アウェイゴールを許し、タイスコアとなった。











ホームで同点に追い付かれた。勝ち越しを狙う鹿島は34分、町田が相手のゴールキックを跳ね返し、瞬時の判断で土居が最終ラインの背後へ抜け出す。ペナルティーエリア内での突破から、こぼれ球に詰めていたのは金森だった。背番号14が右足を振り抜く。しかし、シュートは枠の右へ逸れてしまった。前半終了間際にはペナルティーエリア中央への縦パスからワンタッチで背後を取られ、赤崎にゴールネットを揺らされたが、判定はオフサイド。1-1でハーフタイムへ突入した。



同点で迎えた後半も、鹿島はなかなか主導権を握ることができない。開始早々にペナルティーエリア左側からシュートを打たれるなど、落ち着かない立ち上がりとなってしまった。58分には左サイド深くからクロスを入れられ、ファーサイドの赤崎に押し込まれる。しかし、判定はオフサイド。事なきを得て、反撃の機会を窺うこととなった。







大岩監督は60分、金森に代えて鈴木を投入。前線に背番号9を送り出し、勝ち越しゴールへの希望を託す。67分にはペナルティーエリア右手前で前を向いた遠藤が、得意の位置から左足を一閃。ファーサイドを狙ったシュートはしかし、相手GKにキャッチされてしまった。







一進一退の展開が続く中、残り20分を切った。73分にはセルジーニョが送り出され、攻撃陣の活性化を狙う。広大なスペースが生まれてカウンターの応酬へと推移する中、鹿島は82分に絶体絶命のピンチを迎えてしまった。左サイドから上げられたクロス、放たれたヘディングシュートは右ポストを直撃。ペナルティーエリア内でこぼれ球を先に触られたが、ゴール前で何とかクリアする。さらにセカンドボールを拾われて打たれたミドルシュートも、右ポストを直撃した。





極めて重い意味を持つ、2つ目のアウェイゴールは何とか免れた。84分には安西がペナルティーエリア手前から左足ボレーを放ったが、わずかに枠の左へ。終盤に送り出された山口も果敢にミドルシュートを放ったものの、チャレンジは結実しなかった。











ホイッスルが鳴り響いた。聖地での“前半90分”、結果は1-1。“後半90分”は4日後、舞台は味の素スタジアムだ。ベスト4進出へ、チーム一丸で準備を進めていく。





【この試合のトピックス】
・曽ケ端がルヴァンカップ通算78試合目の出場を記録。新井場氏、青木(熊本)と並び、歴代5位タイとなった。
・西がルヴァンカップでの自身初得点を挙げた。


監督コメント

[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・守備の時、全体をもっとコンパクトにして相手の3人目の動きに気を付けよう。
・ビルドアップの時は、サイドの選手にもっとボールを早く当てること。
・ゴール前にボールが入ったらボックスの近くで、どんどん仕掛けていこう!


川崎フロンターレ:鬼木 達
・前からのプレス、メリハリをつけていこう。
・自信を持って自分達のサッカーを続けていこう。
・ゴールをしっかり狙っていこう。


[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
失点ゼロで第2戦に臨めれば一番よかったが、前半の90分間を1-1で終えたということで、しっかりと改善するべきところはして、次のアウェイの戦いに臨みたい。

Q. 後半、チャンスを作り切れなかったが、前後半の変化をどう感じているか?

A. 前半、相手のプレッシャーが高い位置からきていた。そこはゲームのなかで選手たちも感じ取っていたと思う。ハーフタイムに、しっかり自分たちでボールを握ろうと話をした。後半少しスピードが上がらなかったところはあったと思うが、しっかり自分たちでボールを持ち、精度を上げるというところは改善されたと思う。

Q. ボールを持っている選手が出しどころを探す場面が多かった。今後、判断の部分を高めていくのか、それとも、もっとわかりやすい定まった形を作っていくのか?

A, 定まった形があり、それをベースにパターンがあり、自分たちで判断している。相手へのプレッシャーのかけかた、今日でいえば、2トッププラス、相手のサイドハーフが積極的にきているなかで、どこが空いているかは指摘していたのだが、ボールをもらう前の状況判断、ボールがくる前にしっかり相手を見る、味方を見る、予測をする、そういうところの状況判断をもっと先手先手でやっていかなくては、スピードのあるチームと戦うときにはプレッシャーを受けてしまうことがある。そういうところの精度を上げていかなくてはいけないと思う。


川崎フロンターレ:鬼木 達
平日のナイター、アウェイゲームだったがサポーターが応援に来てくれた。しっかり勝ち切りたかったが、選手は最後まで頑張ってくれたと思う。次のホームゲームは味スタで行われるので、ぜひ今日以上のサポーターに来てもらって後押ししてもらいたい。ゲームは先制されたが、落ち着いて自分たちのストロングの部分を出して戦えた。欲をいえばアウェイゴールを取りたかったが、最後は失点せずにチャンスを作っていけたので、これが次につながると思う。


選手コメント

[試合後]

【西 大伍】
最低限の結果かなと思う。ミスも多くて、互いにやりたいことをできなかった。前半は特に相手に隙が見えていた。(得点の場面でも)そこをうまく突くことができたと思う。頑張っていない選手はいない。何ができて何ができないかということをそれぞれが把握して、互いにカバーし合うこと。結果を出すために準備をしていきたい。

【土居 聖真】
自分たちにも相手にもチャンスがあった。全てが次に懸かっている。ずっとボールを持つことができれば理想的だけど、相手の時間帯もある。そこで切り替えをして、時間帯や状況を読んで最善のプレーができるかどうかだと思う。細かい部分を修正していきたい。

【安西 幸輝】
1点目をいい形で取れたけど、その後は悪い流れになってしまった。どのように対応していくのかをはっきりさせたかった。自分を含めて、チーム全体がもっと仕掛けるプレー、思い切りのいいプレーを出せればよかった。もっとやれると思うので、今日のプレーを見直して次に活かしたい。

【犬飼 智也】
流れが悪い時間帯に、チームとしてもっとはっきりとしたプレーをすべきだった。映像を見直して修正したい。いろいろな要素が重なって、自分たちで苦しくしてしまっている。自信を持って積極的にチャレンジすることが大事だと思う。

【町田 浩樹】
ペナルティーエリア内でのファウルは、相手も狙っていたと思う。チームに申し訳ない。ボールの失い方やリスクマネージメントも悪かった。守備はまだまだだけど、ポゼッションでは裕葵といい関係ができていたので継続したい。




◆2018JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ 準々決勝 第1戦(オフィシャル)