
選手たちの足取りは重かったが、主将を呼び止めると…
10月3日に行なわれたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝。Kリーグ唯一の準決勝進出を果たした水原三星ブルーウィングスは、アウェーで鹿島アントラーズと対戦し、2-3で敗れた。
現在Kリーグ5位の水原は、最近まで5試合連続で白星なしの状況が続くなど、リーグ戦でなかなか結果を出せていない。そんななかで臨んだACL準々決勝では、Kリーグで1位を独走中の全北現代と対戦し、2試合トータル3-3、PK戦の末に7年ぶりの準決勝進出。その勢いのままに必勝の覚悟で臨んだ鹿島戦でも開始早々に2点をリードしたが、最後は逆転勝利を許してしまった。それだけに、ガックリと肩を落としたのは言うまでもない。
試合後、ミックスゾーンに姿を現した水原選手たちの足取りも重かった。その多くが無言でバスに乗り込むなか、主将のヨム・ギフンを呼び止めると、元韓国代表のレフティは足を止めてこう切り出した。
「2-0でリードしながら逆転されてしまい、残念です。アウェーで行なわれた試合で私たちもいいパフォーマンスを見せられましたが、結果的に勝利できず悔しい試合でした」
水原のパフォーマンスは悪くなかったという話だが、対戦した鹿島の印象はどうだったのか。水原のイ・ビョングン監督代行は試合後の記者会見で、「ビデオを観て鹿島を分析し、エースの鈴木(優磨)とセルジーニョを抑えることに集中して試合に臨みました。前半はその部分がうまくいきましたが、後半は体力が落ちて相手にスペースを与えてしまい、試合の主導権を奪われてしまった」と振り返っていたが、想定通りに試合を進められなかったというのは、ヨム・ギフンが感じたところでもあるという。
「両チームの準備に差があったと思います。私たちもベストを尽くしましたが、この試合に向けて鹿島のほうがしっかりと準備をしてきたことが結果に現れたのではないでしょうか」
準備の差だけではない。ヨム・ギフンは、鹿島の組織力の高さも感じたという。
「鹿島はJリーグでも連勝を続けていますが、実際に対戦してみて、良いチームだと思いました。なにより、鹿島は組織力が高かった。組織的なプレーで鹿島を上回ることができませんでした」
「まだ“前半戦”が終わっただけ」初の決勝進出を目指す水原の士気は落ちていない

鹿島の実力を認めつつ、逆転負けの結果に悔しさを滲ませたヨム・ギフンだが、ファーストレグでの敗戦に沈んでいるわけではないという。10月24日に水原ワールドカップ競技場で行なわれるセカンドレグに向け、チームを立て直したいとヨム・ギフンは語る。
「今日は敗れてしまいましたが、まだ“前半戦”が終わっただけ。ホームでのセカンドレグが残っています。厳しい戦いになるでしょうが、しっかりと準備をして臨みたい。必ず鹿島に勝利して、決勝へ勝ち進みます」
果たして、ホームで劇的な勝利を収めた鹿島は、決勝へ駒を進めることができるか。両チームともにクラブ史上初の決勝進出がかかる一戦の結果はいかに。
取材・文●李仁守(ピッチコミュニケーションズ)
