流通経済大学柏が、3つの変化を経て、集大成の舞台に挑む。最大のライバルである市立船橋を破って千葉県代表となった流経大柏は、30日に開幕する第97回全国高校サッカー選手権大会の優勝候補だ。前回の準優勝校であり、全国大会の上位の常連。昨年はインターハイを制している。
しかし、今季は夏に悔しい思いを味わった。インターハイの県予選で習志野に敗れ、全国大会の出場を逃したのだ。3年生主体で臨んだが、不慣れなポジションで起用された選手も多く、戸惑う部分があったのは間違いない。だとしても、ピッチ内で解決に向かうエネルギーは圧倒的に足りなかった。試合に出ていない選手たちが納得しなかったのも無理はない。試合が終わった後、選手たちは、Bチームの選手から「戦う姿勢が見えない」と核心を突く指摘を受けた。1週間後に行われた高円宮杯U-18プレミアリーグEASTの浦和レッズユース戦は、内容こそ乏しかったが、個々が球際と勝利への執着心、責任感を見せて勝利。関川郁万(3年、鹿島アントラーズ加入内定)が「勝ち点3以上のものがあった」と話したとおり、試合後は選手とスタンドの応援団が何度も声を掛け合い、涙を流す選手もいる異様な光景となった。
不甲斐なさと、一体感を味わった夏を経て、チームは大きく変化した。1つ目の変化は、メンバー編成だ。夏以降、下級生が先発に定着するようになった。元々、今季はプレミアリーグEASTで早い段階から数名が起用されていたが、左部開斗(3年)は「インハイで負けて、チームが『やるしかない』という感じになったし、下級生もやりやすくなって、切磋琢磨して良い仕上がりになった」と話す。県予選決勝は1年生3人、2年生1人が先発。新たなエネルギーをチームに与えていた。
2つ目の変化は、主将の交代だ。当初は関川が主将を務めていた。しかし、ヒザの手術から復帰した後もしばらく調子が上がらず、再調整が必要となり、新たな主将を選ぶことになった。走り込みの時期に「とにかく頑張れて、元気のいい選手」という指導スタッフの要望で白羽の矢が立ったのは、前線で体を張れる左部だった。「インターハイ予選を負けた後、Bチームに落ちたけど、すごく元気があって、パワフルだった。Aチームに復帰したときに新しい主将になったので、Bチームの元気を採り入れようと思った。今は、とにかく『元気を出せ、雰囲気を良くしろ』と言っている」と話す新主将は、新たな雰囲気をもたらした。
そして、3つ目の変化は、頼れるストッパー・関川の復調だ。インターハイの県予選準決勝では、バックパスの処理に手間取ったところを奪われて決勝点を献上。「動きにキレのない状態で試合を迎えて、前半から(接触プレーで)削られて、足は動かないし、頭も働かないし、声も出ない。悪循環だった」と悔しさを味わったが、選手権の県予選決勝では、周囲を鼓舞しながら、市立船橋の強力な攻撃陣を完封してみせた。あらゆる面で夏とは違う。関川とともに1年次から主力で活躍している熊澤和希(3年)は、県予選の全4試合で得点。「昨年(準優勝)の借りを返すチャンス。優勝しか狙わない」と力強く宣言した。迫力ある応援を繰り出す仲間とともに、歓喜を味わうために、流経大柏は突き進む。
取材・文=平野貴也
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