明治安田J1 第3節
鹿島、今季初黒星。ホームで広島に完封負け。
16日間での5連戦、第3章。過密日程に臨んでいる鹿島だが、連勝街道を突き進むことはできなかった。J1第3節、サンフレッチェ広島をカシマスタジアムに迎え撃つと、後半立ち上がりにミスから失点。必死に反撃を試みたものの、PK失敗もあってゴールネットを揺らすことはできなかった。0-1。今季初黒星を喫した。
3日前、鹿島はオーストラリアで気迫に満ちた戦いを見せた。シドニーFC戦、2-0。3月3日のG大阪戦から8選手もの先発メンバー変更を断行し、出場機会に飢えた面々がピッチに並び立った。指揮官の期待を背負った選手たちは、己の存在をアピールすべく球際で激しく戦い続け、かけがえのない価値を持つ3ポイントを掴み取った。永木がミドルゾーンに君臨してハードタックルを連発すれば、今季初出場の伊東が果敢なオーバーラップを繰り返す。鈴木と金森の若き2トップは絶え間ないハイプレスで献身の意味を体現し、ホームチームに脅威を与えていた。
値千金の先制ゴールを決めた土居は言う。「チームの士気は高かった。出場した選手は今までの悔しさを止めることなく、それが最初からアクセルを踏む方向に出ていたと思う」。2月14日の公式戦初戦から約1ヶ月、プレータイムを刻めずに不本意な思いと向き合い続けたメンバーが、定位置奪取への闘志をシドニーの地で焼き焦がした。誰もが自信を胸に宿し、手応えを掴んだ90分。そしてそれは、今後の切磋琢磨がさらに高い水準で繰り広げられることを意味する。
激闘の翌朝、チームはオーストラリアを発った。鹿嶋へ帰還したのは8日の夜。事実上、次なる戦いへ充てられる準備期間は1日だけだった。試合前日の金曜日、待っていたのは激しい雨風。クラブハウスでのトレーニング実施が不可能となり、カシマスタジアムにて非公開練習を行うこととなった。急遽の変更となったが、選手たちに動揺はない。シドニーの地で今季初先発を果たした中村は「良い流れを止めないように、やるべきことをやる」と、チームと勝利のために献身することを誓った。
「5連戦であることを加味して、相手の分析もしながら」メンバー選考を行うと語っていた指揮官が指名した先発11人は、シドニーFC戦から7名の変更が施された。クォン スンテがゴールマウスに立ちはだかり、最終ラインには安西と昌子が復帰。ボランチはG大阪戦と同じペア、三竿健斗と小笠原が並ぶ。そして前線はシドニー遠征に帯同しなかった2人、金崎とペドロ ジュニオールがコンビを組んだ。万全のコンディションでピッチに立つ2トップが、虎視眈々とゴールを狙う。その他、最終ラインはフル稼働を続ける植田と山本、2列目にはシドニーFC戦に続いて土居と中村が並んだ。そしてベンチにはGKの曽ケ端、犬飼、伊東、レオ シルバ、永木、鈴木、金森が座る。
前日は荒れ模様だった鹿嶋の空は、フットボールのある週末に合わせたかのように青く穏やかに広がっていた。アントラーズレッドの背番号12がカシマスタジアムへ続々と足を運んでいく。選手たちを鼓舞する歌声が、常緑のピッチへ降り注がれた。総力戦で、連勝街道を突き進む――。決意に満ちたチームコールが響き渡り、選手たちは体に熱を送っていった。そして15時3分、戦いの火蓋が切って落とされた。
鹿島は開始3分、いきなり決定機を迎える。敵陣中央へ山本が送った浮き球がバウンドし、相手DFのクリアミスを拾ったペドロがペナルティーエリア中央から右足で狙う。至近距離からの一撃はしかし、相手GKに阻まれてしまった。こぼれ球に詰めた中村のシュートもブロックされ、ゴールネットを揺らすことはできなかった。
開始早々にゴールの予感を漂わせた鹿島。続く7分には安西が中盤右サイドからワンツーで縦へ突破し、中央へカットインしてからスルーパスを繰り出す。最終ラインの背後へ抜け出したのはペドロだった。ペナルティーエリア右奥に入って角度のないところから右足で狙ったものの、またも相手GKに阻まれた。
10分足らずで作り出した2つのチャンスが結実することはなかった。だが、鹿島はアントラーズレッドの情熱を背に受け、積極的にゴールを目指していった。とりわけ、右サイドバックを務める安西が果敢な攻撃参加を連発。スピードに乗った突破はもちろん、的確なタイミングでスペースを突く動き出しで、チームの推進力となっていた。すでに不可欠な存在となっている背番号32は「落ち着いてやることと仕掛けるプレーをもっと出さないといけない」という言葉通りのプレーで輝きを放った。
15分経過後は激しいボディコンタクトの応酬となり、攻守の切り替えが速い緊迫した展開となった。公式戦3連勝と勢いに乗る広島は球際での競り合いとセカンドボールへの反応で圧力を高めてきたが、鹿島もしっかりと応戦。植田がエアバトルで気迫を見せれば、昌子も粘り強いマッチアップで突破を阻んでいた。両サイド深くまで進出されてクロスを上げられる場面は増えたものの、スンテが安定感抜群のセービングを繰り返して攻撃を無力化した。
鹿島は22分、土居がペナルティーエリア手前から右足を一閃。強烈なミドルシュートを枠に飛ばしたが、相手GKに横っ飛びで阻まれてしまう。以後は決定機を作るに至らず、広島に押し込まれる場面も増えていった。33分にはペナルティーエリア右角から強烈なシュートを枠に飛ばされたが、スンテが渾身のセーブ。前方へ弾いたボールにすかさず反応してこぼれ球へのプッシュを許さず、ピンチを脱してみせた。0-0。スコアレスでハーフタイムを迎えた。
シュートを5本ずつ放った45分を経て、勝負は後半へ。先手を取りたい鹿島だが、思いがけないミスから失点してしまった。51分、ゴールライン際でボールを奪った健斗が縦パスを出すと、ペナルティーエリア内で和田にカットされ、そのまま右足シュートを決められた。0-1。鹿島はビハインドを負った。
反撃を期す指揮官は58分、ペドロに代えて鈴木を投入。今季の公式戦全6得点中5つに絡んでいる背番号9にゴールへの希望を託した。果たして5分後、鈴木が意地のプレーで突破口を見出してみせる。敵陣ゴールライン際から強引にカットインすると、こぼれ球を拾って突破。相手DFのファウルを誘ってPKを獲得した。
キッカーは金崎。アントラーズレッドのスタンドが沸騰するはずだった。しかし、エースがゴール左へ蹴り込んだシュートは相手GKに阻まれてしまう。PK失敗。同点の絶好機を活かせず、鹿島はなおも1点を追うこととなった。
大岩監督は66分に伊東を投入し、安西を2列目に上げて打開を図る。だが、悪夢は続く。10分後、安西が相手との交錯で負傷。輝きを放っていた背番号32が突如としてピッチからの離脱を余儀なくされた。3枚目の交代カードとしてレオの投入を準備していた中でのアクシデントを受け、指揮官は金森をピッチへ送り出す。鹿島は必死の反撃を仕掛け、90分には小笠原のクロスから鈴木がヘディングシュートを放ったが、無情にも左ポストに弾かれた。0-1。ホームでのリーグ戦黒星は昨年5月19日以来。屈辱が聖地を覆った。
休む間もなく戦いは続く。次戦は3日後、AFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第4節のシドニーFC戦だ。敵地での激闘から1週間後のリターンマッチ、すでに来日して準備を進めている強敵との対峙が待っている。ラウンド16進出へ前進するために、非常に重要なホームゲームだ。チームは明日の午前練習から再び歩みを進める。ブーイングで選手を迎え、引き揚げる背中にチームコールを降り注いだ背番号12からのメッセージを胸に、底力を見せて這い上がらなければならない。
【この試合のトピックス】
・J1での広島戦で敗れたのは2013年の最終節以来、9試合ぶり。
・J1のホームゲームで敗れたのは昨年5月19日の第12節川崎F戦以来12試合ぶり。
・伊東と金森が途中出場。今季のJ1で初めてピッチに立った。
【動画】DAZNハイライト
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監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・上手くいかなくてもイライラせず、シンプルにボールを動かしていくこと。
・リスクを負うところ、リスクマネジメントするところをしっかり意識しよう。
・後半45分、もっとギアを上げていこう!
サンフレッチェ広島:城福 浩
・前半はよく戦った。守備はいまのまま続けていこう。
・攻撃はもう少し自分たちの時間を作っていくこと。
・ここからが勝負だぞ!全員で勝ち点3を奪いにいこう。
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
選手たちは90分間、最後の最後までアグレッシブに戦ってくれた。ホームのゲームだったので残念な結果だが、すぐ次の試合があるので、「切り替える」ということを選手たちに伝えた。
Q. 安西選手のケガの具合と、シドニー戦に向けた意気込み。
A. 安西のケガはしっかり検査をしなくてはわからない状態。シドニー戦は無理をさせない意向。アウェイのシドニー戦ではすごくいい試合をした。その勢いをもう一度、しっかり相手にぶつけたい。
Q. 過密日程による疲労は?
A. 数人の選手は続けて試合に出たので、少なからず影響はあったと思う。シドニーに遠征しなかった選手はフレッシュな状態で入れたと思う。広島の勢いがあった分、前半は押し込まれる展開になった。後半はギアを上げていこうと話した。チャンスもたくさん作れていた。最後のところでなかなか点が入らなかったが、厳しいなかで選手はしっかり取り組んでくれたので、そこは評価したい。
Q. 明日で東日本大震災から7年となる。募金活動などの取り組みについてコメントを。
A. 2011年3月11日という日は東日本大震災と呼ばれているが、ここ鹿嶋も被災地となった。茨城県全域が被災地であったと認識している。選手たちもいろいろな活動をしているが、風化させないことが一番だと思う。クラブが取り組んでいる募金活動を含めて、震災を風化させない活動は今後も続けていきたい。監督としても、チームとしても、全面的に協力していきたい。
サンフレッチェ広島:城福 浩
今日も遠くから多くのサポーターが来てくれて、ベンチから見ても感動的だった。彼らと喜び合えて本当によかった。我々も過密日程だったが、アントラーズは移動も含めて相当厳しいなかで、やはり強かった。我々は、今やれる守備をしっかりやって、我慢して、カウンターでチャンスも作った。今やれることはすべて出してくれたと思う。PKも含めて、多少の運はあったかもしれないが、それを呼び寄せたのは、体を寄せたり、カバーしたり、最後のところで足を出したりというプレーだったのではないか。ここで満足せず、次の試合でも生かしていきたいと思う。
選手コメント
[試合後]
【三竿 健斗】
失点の場面は自分の判断ミス。フリーの満男さんにパスを通せばチャンスを作れると思ったけど、近くしか見えていなかった。今日のことを絶対に次につなげていかないといけない。
【山本 脩斗】
前半は内容が良くない中で無失点で抑えることができて、後半からギアを上げていこうという話をしていた。最後のところで決め切れなかった。試合が続くので、切り替えていくしかない。
【土居 聖真】
個人的にはやりにくさはなかった。マークをうまく剥がせた場面もあったし、サイドを変えた時にはチャンスができていた。普段は出ないミスがあった。自滅してしまった。
【伊東 幸敏】
個人的にはいい形で試合に入ることができたけど、中の選手に合わせることができなかった。去年から変わっていない自分に腹が立つ。もっとバリエーションを増やさないといけない。
2018明治安田生命J1リーグ 第3節