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2019年4月20日土曜日

◆鹿島・伊藤翔が欠かさぬ予習と反復。 「カバーニ先生」に学び、実践する。(Number)



伊藤翔 Sho.Ito


2019 鹿島アントラーズ GSP FRAN PQ AUT 半袖 ポロ/Tシャツ...


 一度だけでなく、二度やればより頭に残る。

 予習の大切さは、学生時代によく聞かされてきたことだろう。これを実践するかしないかで、記憶の定着度が大きく変わってくる。

 今季、鹿島アントラーズに加入して公式戦9試合7ゴール。結果を残す伊藤翔は、常に試合へ向けた予習を欠かさない。

「試合前になるとチームのミーティングでスカウティングビデオを見るのですが、いつも『次はこうなるんでしょ? 知ってる、知ってる』って見ています(笑)。予習って大事なんですよね。

 学校の勉強でもそうだったんですが、塾で最初に授業を受けて、また学校で同じことをやる。2回やったら覚えられるし、頭に入ってくるし、思い出せるんです。反復は大事。回数をこなせば誰でもできるようになる。ただ、それをみんながやらないだけなんです」

対戦相手の試合は90分欠かさず見る。

 いつも次に対戦する相手の直近の試合は、90分を欠かさず見ているという。

「ダイジェストではわからないヒントがたくさんある」

 相手のフォーメーションからディフェンスの枚数、DFの特徴を掴む。一度目に、まず自分の目で90分を見て、頭に入れて考える。二度目は、チームのミーティングで再確認することで、対戦相手のイメージが頭に刷り込まれていく。

 相手の特徴と自分のできることを照らし合わせて、どんなプレーがゴールにつながっていくのかを想像していく。ゴールから逆算して、考えを膨らませ、脳内に定着した相手チームの記憶を整理しながら、試合に臨んでいるのだ。

中京大中京での“3タッチ”練習。

 サッカーを始めてから、すべてのポジションをこなしてきた。FW一本になったのは、中学3年夏からのことだった。

「彼はFWの方が合っている」

 中京大中京高の道家歩監督が伊藤の練習する姿を見て、所属していたクラブチームの監督に、そう進言したことがきっかけとなった。

 その後、同高校へ練習参加をすることになり、ポジションに特化した練習を経験することで、「ここに入れば間違いなく個として成長できる」と確信。卒業後の進路に対して、迷うことなく中京大中京高への進学を決意した。この時期が伊藤自身、「技術的に一番伸びた」と自負する。

「当時、2タッチでやるサッカーが流行っていたんですが、うちの高校では3タッチでした。それをとにかく反復練習したことが、僕にとってはすごく良かった。まずは、ボールを体の正面でしっかり止める。次に、ボールを押し出してパスを出す。最初にボールを止めたとき、どっちにもいける状況を作っておけば相手も対応が難しくなる。プレーの幅が広がりましたね」

アンリ、ベルカンプのDVDを見て。

 試合になれば、とにかく縦への突破を求められた。最初はなかなかうまく抜くことができなかったが、縦への行き方やターンの仕方などを教わり、とにかく反復練習を繰り返した。すると、試合で抜けるようになった。

「プロとして長く経験した今でも、反復練習はめちゃくちゃ重要だと思っています。サッカーは原理原則があって、プレーにもいいプレーの型、悪いプレーの型があることを、高校時代に知りました。その型を作るために反復練習がある。シュートに関しては特にそう。何本蹴ったかというのが大事。もちろん、ただ蹴るだけでは意味がなくて、どこに当てるのか、どういうボールの回転なのか、そこは考えてやらないといけない」

 そんな反復練習を繰り返した時期に手本としたのが、ティエリ・アンリとデニス・ベルカンプだった。

「アーセナルが強かった時代はアンリ、ベルカンプのDVDをめちゃくちゃ見ていました。ブラジルのロナウドが大好きだったので見てはいましたけど、もちろんあのプレーは真似できないし、とにかくうますぎて参考にならない(笑)。あと動き方で言えば、(フィリッポ・)インザーギもよく見ていましたね」

自分がどう動くかを実践する。

 自分の目で見て盗む。その意識は今も強く伊藤のなかにある。何度もトップレベルの選手のプレーを見て、イメージを定着させる。それを次の日の練習で試してみる。その繰り返しだ。

「そういえば、こういうときにこう動いていたけど、ディフェンスはどう動くのかを練習で確認してみたり。それに合わせて、自分はどう動くことができるのかを実践していく。その意味で練習は必要なことだし、“サッカー楽しいな”って思う時間ですね」

 よく見るタイプの選手はストライカー。ルート・ファンニステルローイや今はクリスティアーノ・ロナウド、そしてエディンソン・カバーニを参考にしているという。

「C・ロナウドは、以前のアタッカーだったときよりも、今の方がよく見ます。自分がそのポジションで、世界の選手たちがどういう動きをしているのか、どう点を取っているのかは気になりますね」

カバーニ先生の形を取り入れて。

 最近、見て学んだプレーを練習で試しているのが、カバーニの得意とするパターンだ。

 ペナルティーエリア手前の中央でボールを持った選手から浮き球のラストパスを受け、最後に頭で叩き込んだシーンだった。

「これは自分でもできるなと思ったシーンでした。中盤の選手が浮き球でパスを出そうとしたとき、その落下地点をどこにするかという話で、カバーニは一回うしろに下がるフリをして、自らヘディングをするスペースを作ってから、ディフェンスの前に入ってボールを受けていた。

 相手の前とうしろの2つのスペースがあるなかで、前を選択したんです。2つスペースがあることを把握することが必要だし、そのどちらのスペースを使うのかを考えなさいと。そう“カバーニ先生”がプレーで言っていました(笑)」

理想形はこぼれ球を詰めたゴール。

 得点の理想形は「こぼれ球を詰めたゴール」。相手を抜いたり、空中戦で競り勝ったり、特別な能力がなくても、サボらず詰めることに集中し続ければ、必ずいつか点を取れる。

 一方、高度な技術を駆使しての得点力も持ち合わせる。第2節・川崎フロンターレ戦では、うしろから来たロングボールをピタッと止めてゴールへ流し込み、第4節・コンサドーレ札幌戦では、一対一でGKの動きをよく見てループシュートを決めた。

 伊藤自身、今後はどんなストライカーを目指すのか。

「ひとつ、この形でボールを持ったら必ず決めるという型を作りたいですね」

 試合に向けた予習と練習での反復。理想の選手像を目指して、今日もそれを欠かさない。


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