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2019年10月29日火曜日

◆混戦のJ1優勝争い。上位陣それぞれの不安材料と理想のシナリオは?(Sportiva)






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■シーズン終盤で、優勝争いが激しさを増しているJ1。ここから抜け出してリーグ制覇を達成するのはどのクラブなのか。元日本代表の福田正博氏が上位クラブそれぞれの展望を考察した。

 今シーズンのJリーグも残すところ、あと5節。今年もまた、優勝争いは最終節まで激しいものになりそうだ。

 第29節を終えた時点で、首位の鹿島アントラーズと2位のFC東京が勝点56で並び、1差で追う3位に横浜F・マリノスがつけている。勝点50の4位にサンフレッチェ広島、勝点49のセレッソ大阪が5位、3連覇を狙う川崎フロンターレは勝点48で6位という状況だ。

 ルヴァンカップで優勝した川崎フロンターレは、3連覇が苦しくなってきた。ガンバ大阪と対戦した第28節は先制されながらも、後半に大島僚太の同点弾、レアンドロ・ダミアンの逆転弾でリードを奪ったものの、G大阪の粘りの前に勝ちきれずに2−2の引き分けに終わった。

 この展開こそが、今シーズンの川崎を象徴していたと言ってもいいだろう。G大阪戦を含めた引き分けは12試合。これはJ1でもっとも多い(第29節終了時)。今季はリードを守りきれず、内容は勝点3に限りなく近いものの、実際には勝点1しか手にできなかった試合は数多く、そうして取りこぼした勝点によって、3連覇への視界はかなり悪い。

 ただ、川崎の現状のチーム力は、残り5試合を5戦全勝できるだけのものはある。勝点15を上積みしたとしても、優勝は難しい状況に追い込まれてはいるが、彼らには来季のACL出場権獲得の使命もある。攻撃陣は好調を維持しているのに加え、大島僚太をはじめとした故障者たちも戦線に戻りつつあるため、王者が連勝で意地を見せる可能性は高い。

 川崎は残り5節で広島、鹿島、浦和、横浜FM、札幌と戦うが、川崎よりも上位にいる鹿島、横浜FM、広島にとっては、これ以上に厄介な相手はいない。

 首位を走る鹿島にとっては、川崎戦がターニングポイントになる可能性は高い。今季は夏場にFW鈴木優磨(シント=トロイデン)、FW安部裕葵(バルセロナB)、DF安西幸輝(ポルティモネンセ)などがチームを去ったが、新たにFW上田綺世(前法政大)、FW相馬勇紀(前名古屋)、MF小泉慶(前柏)を補強。上田や小泉の頑張りなどもあって、第28節でついに首位の座を奪取した。

 しかし、気がかりもある。それは故障者の多さだ。とりわけレオ・シルバ、セルジーニョという勝負を決めることの多い外国人選手がいないのは痛い。とくにレオ・シルバ不在で中盤の構成力は格段に落ちている。そうしたなかで川崎との対戦が控え、その翌節には広島も待ち構えている。苦しい状況でも勝つ術や経験則を鹿島は持っているとはいえ、故障者の復帰が間に合わないようだと、9度目のリーグ優勝は厳しくなるだろう。

 FC東京はホームスタジアムをラグビーW杯の影響で使えず、アウェーで連戦の厳しい日程のなかで鹿島にかわされて2位に陥落。本拠地でプレーできない疲労度を考えれば、よく戦っていると言える。しかし、リーグ優勝にはここからが正念場だ。

 残り5戦は、大分、磐田、湘南、浦和、横浜FMと対戦するが、残留争いに身を置くチームとの対戦が多く、対戦カードに恵まれているように映る。

 しかし、残留争いをするチームがこの時期に出すパワーは別物。下位チームに足もとをすくわれて優勝争いから転落したチームは過去にいくつもある。

 FC東京にとっての不安材料は、残留争いをするチームは、まず守備を固めて勝点1を狙ってくるということ。FC東京は永井謙佑とディエゴ・オリヴェイラという2トップのパワーとスピードを活かして得点を奪い、固く守り切りながら勝点を積み上げてきた。だが、下位のクラブといえども、相手に引かれて中央の守備を固められると、打開するのは容易ではない。

 長谷川健太監督のサッカーでは、下位相手に勝点1を逃すことはないだろうが、得点パターンがそこまで豊富ではないだけに、ゴールを奪えないようだと勝点3を上積みできない可能性はある。そこに対して、長谷川監督がどういった手腕を発揮するかは、終盤戦の見どころのひとつだ。

 優勝争いのダークホース的な存在は、横浜FMだ。彼らの攻撃的なスタイルは、安定感には欠けるものの、J1ナンバーワンと言える爆発力がある。ただし、彼らが2004年以来となるリーグ優勝に向けては、どのタイミングで首位に立つかが分岐点になりそうだ。

 鳥栖、札幌、松本、川崎、FC東京との対戦を残すが、彼らのスタイルだと、早い時期に首位に立ってしまうと、首位の座を守ろうとすると、奔放な攻撃サッカーの勢いが鈍る危険性がある。最終節を迎えるまでは勝点1差内の2位か3位につけ、ホームでの最終節で勝利して優勝を決めるというシナリオが理想的ではないか。

 昨季2位の広島は、今季もしぶとく戦いながら4位につけている。城福浩監督のもとで本当によく戦っているし、勝ち点差7の彼らにもワンチャンスは残されている。そのポイントになるのが外国人FWだ。ドウグラス・ヴィエイラとハイネルがいかに得点機を生み出せるかにかかっている。

 残り5試合は、浦和、川崎、鹿島、湘南、仙台との対戦が待っているが、上位直接対決をしっかりとモノにして勝点3を上積みできれば栄冠に近づくし、逃すようだと3位以内も厳しくなるだろう。そして、5位につけているセレッソにも、優勝の可能性は十分ある。FC東京と同様に上位との対戦が少ないのだが(湘南、松本、神戸、清水、大分)、対戦相手の残留争いも関係してくるだけに、簡単な試合はないだろう。

 いずれにしろ、優勝争いは最終節までもつれそうだ。優勝を争っているクラブは、長いシーズンを苦闘しながら戦ってきた。だからこそ、12月7日のJ1最終節では、優勝を勝ち取るクラブへ、大きな注目と喝采を送ってもらいたい。

◇プロフィール 福田正博(ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日神奈川県生まれ。176cm。日本リーグ時代、三菱(現・浦和)に入団し93年からJリーグへ。95年50試合32得点で、日本人初のJリーグ得点王に。日本代表45試合9得点。02年現役引退。S級ライセンス取得後、2008年から浦和レッズコーチに就任。現在はサッカー解説者として『SUPER SOCCER』(TBS)など各媒体で活躍。




◆混戦のJ1優勝争い。上位陣それぞれの不安材料と理想のシナリオは?(Sportiva)