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2019年9月26日木曜日

◆天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権大会 ラウンド16(オフィシャル)



中村充孝 Atsutaka.Nakamura


【中古】 フットボールサミット(第25回) 鹿島アントラーズサッカー王国のつくり...


2019年09月25日(水) 19:03キックオフ 県立カシマサッカースタジアム
【入場者数】6,529人 【天候】晴、弱風、 気温22.5度、 湿度73.0% 【ピッチ】全面良芝、乾燥
【主審】岡部 拓人 【副審】八木 あかね 【副審】村井 良輔 【第4の審判員】堀越 雅弘


天皇杯 ラウンド16

中村が圧巻の3ゴール!伊藤が追加点!4-1で準々決勝進出!


天皇杯ラウンド16で横浜F・マリノスと対戦した。前半13分に幸先よく中村のゴールで先制したアントラーズだったが、横浜FMにPKを献上してしまい、22分に同点に追いつかれてしまう。それでも、30分に中村が勝ち越しゴールを奪うと、前半終了間際にまたも中村が追加点を決め、リードを広げる。77分にはダメ押しとなる伊藤翔のゴールが決まり、アントラーズが4-1で勝利を収めた。

9月18日に行われたACL準々決勝第2戦は、ホームで1-1の引き分けに終わった。広州恒大との激闘の末、2戦合計スコアは1-1と同点だったが、アウェイゴールの差で敗退が決定した。

アジア連覇、全冠達成の夢は潰えてしまった。しかし、下を向いている時間はない。まだ我々には国内3冠の可能性が残っている。試合後、指揮官は「しっかりと、このゲームを自分たちの糧にしないといけない。次に向かおう」と、選手たちに伝えた。これからも戦いは続く。前に進むしかない。

チームは2日間の休息をとり、土曜日から練習を再開した。久々に中6日で試合を迎えられるため、入念に横浜FMへの対策を確認することが出来た。指揮官は「好守の切り替えの部分や、相手のビルドアップに対してアプローチに行くスピードや強度の部分、そういうところは重要になってくる。継続するところと警戒するところを前回対戦の映像を見ながらしっかり分析した」と話した。



そして、迎えた試合当日。指揮官は、ACL準々決勝第2戦から先発6人を入れ替える決断を下す。GKは曽ケ端、最終ラインは右から伊東、ブエノ、犬飼、小池が入った。ボランチは永木とレオ シルバがコンビを組む。サイドハーフは右にセルジーニョ、左に中村が入り、前線は遠藤と伊藤が務めた。ベンチには、クォン スンテ、内田、町田、小泉、土居、白崎、有馬が座った。



対戦相手の横浜FMもリーグ戦とは大きく異なるメンバーで試合に臨んできた。マルコス ジュニオールはベンチ外となり、仲川輝人はベンチスタート、先発には中川風希、山谷侑士など若手選手が名を連ねた。

19時03分、戦いの火蓋が切られた。

立ち上がり、アントラーズはいきなりピンチを迎える。1分、横浜FMの遠藤渓太に左からボールを持ち込まれ、ペナルティエリア手前からミドルシュートを許す。強烈なシュートは枠を捉えたが、曽ケ端がしっかりと弾き返し、失点を免れた。







アントラーズは、特殊な陣形でビルドアップを行う横浜FMに対し、激しい球際の寄せと連動した守備で対抗する。互いに主導権を譲らず、ピッチの至るところで激しい攻防が繰り広げられた。







すると、13分に初めてアントラーズがチャンスをつくる。永木の絶妙なロングボールで横浜FMの高い最終ラインの裏をとると、中村がドリブルでペナルティエリア内まで進入し、シュートを放つ。これが相手GKの股を抜き、ゴールネットを揺らした。この試合、チーム初めてのシュートを確実にゴールに結びつけ、先制に成功する。











しかし、すぐに試合は振り出しに戻ることになる。20分、エリキに左サイド深い位置まで進入されると、小池がペナルティエリア内でファウルを犯し、PKを献上してしまう。22分、キッカーのエリキが放ったシュートは、曽ケ端が身体に当てるも、こぼれたところをエリキに再び押し込まれ、同点に追いつかれてしまった。





それでも、アントラーズはすぐに反撃に出る。30分、高い位置で永木がボールを奪うと、左へパスを送る。中村がスルーしたボールを受けた遠藤康が、ペナルティエリア内右からマイナスのクロスを送ると、中村がうまくファーサイドへ流し込み、ゴールネットを揺らした。アントラーズが勝ち越しに成功する。











さらに、前半アディショナル2分、再びアントラーズにチャンスが訪れる。自陣左サイドのスローインから遠藤康が前方にボールを送ると、中村が相手の最終ラインの裏に抜け出す。ドリブルでペナルティエリア内まで進入し、相手GKとの駆け引きを制して、ゴールへと流し込んだ。中村のプロ入り初となる1試合3得点でアントラーズがリードを2点に広げた。









前半はこのまま3-1のスコアで終了を迎えた。





後半に入ると、両チームともに陣形が少し間延びするオープンな展開となった。互いにカウンター攻撃を繰り出していたが、永木、レオのボランチコンビが中盤で卓越したボール奪取力を発揮し、アントラーズが押し気味に試合を進めていく。





59分、アントラーズは1人目の選手交代を行う。3得点を決めた中村に代えて、白崎をピッチへ送った。





65分、アントラーズがチャンスをつくる。左サイドに流れた遠藤康が中央へクロスを上げると、ニアで伊藤翔が右足で合わせる。だが、このシュートは相手GKに阻まれて、追加点には至らなかった。



77分にもアントラーズが決定機をつくる。自陣でボールを受けた小池が、相手の隙を見逃さず、スピードに乗ったドリブルで相手陣内まで運び、伊藤へラストパスを送る。ボールを受けた伊藤は、ドリブルでそのままペナルティエリア手前まで持ち込み、相手GKの頭上を越えるシュートを放つ。綺麗な弧を描いたボールはゴールへと吸い込まれた。伊藤翔のゴールでアントラーズがリードを広げた。









リードを3点差としたアントラーズは、79分に2人目の選手交代を行った。セルジーニョに代わって土居をピッチへ送る。



85分には3人目の選手交代、レオとの交代で小泉を投入し、リードを守りにいく。小泉はレオが務めていたボランチのポジションにそのまま入った。

そして、ついに試合終了のホイッスルが鳴る。ビッグスクリーンには4-1のスコアが表示された。ACL敗退のショックを吹き飛ばす、会心の勝利を手にした。



だが、勝利の喜びを噛みしめている時間はない。次の戦いは、すぐそこに控えている。中2日で明治安田J1第27節札幌戦だ。久々の出場となった中村が3得点を決めるなど、チーム内の競争は激化している。高い競争力を保ちながら、チーム一丸となって、厳しい日程を乗り越えていこう。次戦までの時間は限られているが、最善の準備を行い、総力戦で次も勝利を目指す。





【この試合のトピックス】
・天皇杯準々決勝進出決定
・曽ケ端が自身のもつ天皇杯歴代最多出場記録を64試合に更新
・伊東が今季初めてカシマスタジアムで行われた公式戦に出場
・中村がプロ入り初の1試合3得点を記録
・天皇杯で同一選手が1試合3得点を達成するのは、2012年9月8日で遠藤が達成して以来、約7年ぶりの記録
・公式戦で同一選手が1試合3得点を達成するのは、2017年9月16日・明治安田J1第26節でレアンドロが達成して以来、 約2年ぶりの記録



監督コメント

[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・セットプレーの時、守備のマークをはっきりさせ、リスクマネジメントを怠らないこと。
・相手のくさびのボールが入ったあと、ファウルをせずにしっかりとアプローチをしていこう。
・攻撃では相手の背後のスペースを効果的に使っていこう!


横浜F・マリノス:アンジェ ポステコグルー
・守備の時に集中をきらさないように。
・切り替えを速くしよう。
・前線での動きをもっと出そう!

[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
自分たちのやるべきことをピッチで表現することが出来て、それが勝利につながった。次の試合へ、いい形で臨めると思っている。

Q.試合開始直後は横浜FMに押され気味で、永木選手の1本のパスをきっかけに展開が変わったが、それは想定していた?

A.想定していた。横浜FMのボールの動かし方は特殊だし、サイドに注意すべき選手が多い中で、奪った後の相手の背後は常に狙っていこうという話はしていた。

Q.今日の勝利がチームに与える影響は?

A.ACLを敗退してから、今日の試合の重要性や立ち上がる姿勢をしっかりと見せようという話をこの1週間、ずっとしてきた。今日が今後の戦いに影響していくということは、選手たちもしっかりと認識していた。勝利することが出来たのは、サポーターの皆さんの力でもあるし、選手たちが前を向いて立ち上がった姿が表現出来たからだと感じている。非常に評価している。ここから次の試合に向けて、しっかりと準備していきたい。

Q.3ゴールを決めた中村選手については?

A.彼が3点を取ったが、他の選手もしっかりとやるべきことをやっていた。ただ、彼が今日のようなパフォーマンスを見せ、結果を出したということで、彼自身の自信にもつながる。そして、他の選手に与える影響も小さくないと感じている。彼を含めた選手全員で、今後も戦っていくという姿勢を見せていきたい。


横浜F・マリノス:アンジェ ポステコグルー
難しいゲームになってしまった。前半はいいサッカーが出来ていたし、自分たちのやろうとしていることが見せられた部分もあった。後半に入って、経験値の違いが出た。チャンスが作れた中でこういった結果になってしまって、残念に思っている。


選手コメント

[試合後]

【中村 充孝】
ゴールを決めることが出来て嬉しいが、前半にゴール前に入っていけるシーンが2回ほどあったので、そこの場面の悔いが残っている。ゴールを取るというところは継続的に求められている事なので、もっと貪欲に狙い続けていきたい。

【犬飼 智也】
立ち上がりは、背後に落とすボールをもっと出しても良かった。今日はACL敗退直後ということで、真価の問われる試合だった。そういった姿勢は見せられたかなと思う。チームとしてうまくいっていると思うので、これからもみんなで戦っていきたい。

【永木 亮太】
前半は少しバタバタして、ピンチを招いてしまう部分もあった。そこは反省しなければいけない。相手の戦い方を見ながら、中盤でボールを奪うことができる回数も多かった。そこで上手くスペースを突くことが出来た。相手の弱点を突けて、失点はあのPKのみだったので良かったと感じている。

【小池 裕太】
早い時間帯でPKという形で失点してしまった。自分の守備のプレーの面でチームに迷惑をかけてしまった。そのあと、どうしても点を取りに行かなければいけない状況で、充孝さんがゴールを決めてくれたことが今日の勝因だと思う。

【伊東 幸敏】
個人的にはあまり良くなかった試合だった。何回もアップダウンした中でのクロスの精度が良くなかった。今日は、なかなかクロスがうまくいかなかった。練習からもう少しクロスの精度の部分を意識して取り組んでいきたい。




◆天皇杯 JFA 第99回全日本サッカー選手権大会 ラウンド16(オフィシャル)


◆元アントラーズのFWカイオ、名門ベンフィカで公式戦初先発へ。監督もオプション模索中(フットボールチャンネル)



カイオ Caio


CIAO ちゅ〜る まぐろ14g チャオちゅーる いなばペットフード チヤオチユ...


 かつて鹿島アントラーズで活躍したブラジル人FWは、この夏にUAE1部のアル・アインからポルトガル1部の名門ベンフィカへのステップアップ移籍を果たし、背番号7を託された。

 しかし、国内のみならず欧州にその名を轟かせる強豪クラブでの挑戦は簡単なものではなかった。カイオは今季、いまだリーグ戦3試合の途中出場にとどまっている。

 そんな状況で、25歳になったブラジル人ウィンガーにはまたとないチャンスが舞い込んできた。現地25日に行われるタッサ・ダ・リーガ(リーグカップ)のグループリーグ初戦、ヴィトーリア・ギマランイス戦で先発起用される見込みになったことを、ポルトガル紙『レコード』が報じている。

 カイオにとって待ちに待ったポルトガルでの公式戦初先発だ。ベンフィカが国内リーグとポルトガルカップ、リーグカップ、チャンピオンズリーグ(CL)と4つの大会を並行して戦っていく中で、ブルーノ・ラージ監督は主力だけに頼らないオプションを探しているという。

 国内リーグの試合と試合に間に行われるリーグカップは、指揮官の「新たな機会創出計画」を実行に移す絶好のチャンスで、カイオはその恩恵を受けることになる。他にも元ロシアU-18代表GKイバン・ズロビンや、チームキャプテンのDFジャルデウ、生え抜き有望株の20歳FWジョタなどに長い出場時間が与えられるようだ。

 ベンフィカのサイドアタッカーはともにポルトガル代表のMFピッツィとMFラファ・シウバが鉄板コンビになっている。カイオもこれまでに途中出場したリーグ戦の3試合では、2人のうちどちらかとの交代でピッチに入っていた。

 元アントラーズの韋駄天ウィンガーは、ポルトガル代表クラスが揃うポジション争いに割って入ることができるだろうか。25日のヴィトーリア・ギマランイス戦で溌剌としたパフォーマンスを疲労できれば、今後のリーグ戦での出場機会増やCLデビューといった未来につながっていくはずだ。

【了】




◆元アントラーズのFWカイオ、名門ベンフィカで公式戦初先発へ。監督もオプション模索中(フットボールチャンネル)





◆内田篤人が発した「みんな鹿島らしい選手になってきた」の真意。三竿健斗へと伝授される鹿島の魂【この男、Jリーグにあり】(フットボールチャンネル)



内田篤人 Atsuto.Uchida


刺繍 デコシール Jリーグ サッカー 鹿島アントラーズ マスコット ロゴ マーク...


明治安田生命J1リーグは26節を終え、首位・FC東京を1ポイント差で鹿島アントラーズが追走している。「リザーブの選手というのはいない」とキャプテンを務める内田篤人は鹿島らしさを表現する。さらに、三竿健斗の「誰が出てもこのチームは勝たなければいけない」と語るその言葉に、「鹿島らしさ」は、脈々とチームに受け継がれていることが感じられるだろう。(取材・文:藤江直人)


「リザーブの選手というのはいない」


 聞き耳を立てなければスルーさせてしまうほどのさりげないトーンで、それでいていま現在の鹿島アントラーズを的確に表現するキーワードを、キャプテンのDF内田篤人が口にした。

「ウチのメンバーに、リザーブの選手というのはいない」

 先発としてピッチへ送り出される11人だけではない。リザーブの7人も、そして競争の末に残念ながらベンチに入れなかった他の選手のすべてがともに戦っている、と言いたかったのだろう。

 先発も固定されているわけではない。リーグ戦の軌跡を振り返れば、開幕から全26試合に出場しているのはセルジーニョだけ。しかし、チームトップの10ゴールをあげている24歳のブラジル人アタッカーは、6試合で後半途中から出場。プレー時間は2000分に到達していない。

 内田自身は古傷でもある右ひざを痛め、4月から長期離脱を強いられてきた。8月14日の栃木SCとの天皇杯全3回戦で復帰し、同下旬からはACLとリーグ戦、そしてYBCルヴァンカップでもベンチ入りメンバーに名前を連ね始めた。

 復帰後に公式戦のピッチに立ったのは栃木戦と、今月1日の清水エスパルスとの明治安田生命J1リーグ第25節の2度。ともに大量リードを奪った後半の数分間で、合計のプレー時間も11分あまり。それでも、内田が必死に戦っている姿はいつしかアントラーズの名物になった。

「前に出ちゃうので言ってください、早めに注意してもらってまったく問題ありませんと、第4審判員には言っているんですけど。でも、やっぱりチーム全体で勝つ、となっちゃうよね」

 警告の対象になりかねない行為だと理解していても、アントラーズが劣勢になったときにはベンチ前のテクニカルエリアに出て、仲間たちへ身振り手振りで指示を送ってしまう。タッチライン際にまで身を乗り出す姿に、スタンドで声をからすファンやサポーターも共感を覚えるようになった。


内田篤人を呼び戻した理由


 第4審判に注意され、怒られることもある。だからこそ試合前に第4審判員への挨拶を欠かさないと内田は苦笑するが、それでも無意識のうちに体が動く。首位・FC東京をホームに迎えた9月14日の大一番では、内田に続くようにリザーブのGK曽ヶ端準、MF遠藤康もベンチ前で指示を飛ばした。

「時間の稼ぎ方とかは、気がついた選手が言えばいいこと。経験のある選手、ソガさん(曽ヶ端)やヤス(遠藤)を含めて、ベンチの一体感というものがすごく大事なので。苦しいときにピッチのみんながベンチの顔を見て、ベンチの声を聞くことで走れるのならば僕は声を出しますよ」

 一体感を強調する内田はドイツのシャルケ、ウニオン・ベルリンをへて、昨季から実に7年半ぶりに古巣アントラーズに復帰した。違約金が発生するのを承知のうえで、30歳になる直前の内田を獲得した理由を、鈴木満常務取締役強化部長はこう語ったことがある。

「(小笠原)満男が試合に出られる機会がだんだん減ってきたなかで、満男の次の世代で鹿島の伝統や、試合をコントールしてチーム全体を見ながらバランスを取るような役割を演じることも含めて、そういう存在がまだ必要だという状況も(内田)篤人を呼び戻した理由のひとつですね」

 アントラーズのチーム作りは、すべてのJクラブのなかで異彩を放つ。Jリーグが産声をあげた黎明期に土台を作った神様ジーコのイズム、「敗北を頑なに拒絶する勝者のメンタリティー」と「チームは家族」という意識を、1996年から強化の最高責任者を務めている鈴木常務取締役が受け継いできた。

 もっとも、フロントに加えてピッチのなかでも伝承者が必要になる。秋田豊や本田泰人が最初に握ったバトンを、小笠原満男や曽ヶ端準から誰に受け継がせるのか、という点で問題が生じた。内田や大迫勇也、柴崎岳と候補にあがった生え抜き選手たちが次々とヨーロッパへ新天地を求めた。

「サッカー人生は一回限りだし、選手の夢でもある海外移籍を止めるつもりはありません」

 日本サッカー界に訪れ、年々激しくなる潮流を鈴木常務取締役は努めて肯定的に受け止める。昨夏にDF植田直通、昨オフにDF昌子源、そして今夏にはDF安西幸輝、MF安部裕葵、FW鈴木優磨が海を渡り、昨季限りで小笠原もユニフォームを脱いだ。必然的に内田の存在感が増していった。


「みんな鹿島らしい選手になってきた」


「全員が目の前の試合に対して最善の準備をしますし、常にいい競争があるなかで、全員がいい危機感をもって練習に臨んでいる。あと、タイトルを取らなければ何の評価も与えられないクラブなので」

 こう語るのはボランチの三竿健斗だ。東京ヴェルディから加入して4年目。昨季から間近で薫陶を受けてきたからか。夏場になって内田が何度も口にする「一体感」を、内田や副キャプテンの遠藤、MF永木亮太がピッチに立たないときはゲームキャプテンを担う23歳も肌で感じ、強調するようになった。

「いまのチームの一体感や雰囲気は、すごくいいものがある。なので、この一体感をどんどん大きくしていって、最後にみんなで笑ってシーズンを終えられるようにしたい」

 ジーコイズムで言えば「敗北を拒絶するメンタリティー」がタイトル独占、そして「チームは家族」が一体感とイコールになる。最初に黄金時代を迎えた1990年代後半も、紅白戦で一触即発のムードが漂うのは日常茶飯事だった。三竿が口にした「いい競争といい危機感」に通じると言っていい。

 個人的に何かをした、と言われることを内田は嫌がる。ただ、2007シーズンから達成した前人未踏のリーグ戦3連覇で不動の右サイドバックを務め、ピッチの上で小笠原たちから魂を伝授された内田の一挙手一投足、そして伝統と経験が凝縮された背中は次の世代への羅針盤となってきた。

「これまので積み上げというか、積み重ねというか、鹿島らしさというか。そうしたメンタルに新しい選手たちがフィットしていく部分でも、今シーズンは馴染むのが早いというか。みんな鹿島らしい選手になってきた気はするよね」

 今季から加わったMF白崎凌兵、MF名古新太郎、FW伊藤翔が躍動し、期限付き移籍から復帰したDFブエノも一本立ちした。開幕直後に加入したDF小池裕太、夏場に加わったMF小泉慶、FW上田綺世、FW相馬勇紀も伸び伸びとプレーする現状に鈴木常務取締役も目を細める。

 加入2年目のDF犬飼智也、ユースから昇格して4年目のDF町田浩樹も然り。夏場に3人が移籍しても戦力がダウンすることなく、競争を勝ち抜いた末にいい選手が起用される状況を生み出し、タイトル獲得へ力強く近づいている理由は、新加入組を馴染ませている触媒、内田を抜きには語れない。


「タイトルを3つ取ったとしても…」


 そして、次世代のリーダーを拝命するのにふさわしいオーラをまといつつある三竿は、主力が次々と旅立った状況にも「誰が出てもこのチームは勝たなければいけないので」と前を見すえる。

「いまいるメンバーが『オレがやってやる』とみんな思っているし、僕自身も満男さんや源君がいなくなって、今年はいままで以上にやらなきゃいけない、と思っていたなかでまた選手が抜けた。さらに責任感をもってやれている、とは思っています」

 だからこそ、連覇を目指したACLにおいて夢半ばで、準々決勝で敗退したことは単なる悔しさだけでは終わらない。広州恒大(中国)とアウェイで0-0、ホームでは1-1とともに引き分けた。アウェイゴールの差で涙を飲んだが、アントラーズの辞書には「惜しい」という言葉は載っていない。

「このクラブはひとつでも多くのタイトルを取ることが義務づけられているし、たとえ3つ取ったとしても、ひとつ取れなかったことに満足することができないので」

 ACLを前にこう語っていた三竿も、忸怩たる思いを募らせているはずだ。FC東京戦で左ハムストリングの筋肉を損傷して、81分でピッチを去ることを余儀なくされた。精密検査の結果は約6週間の加療。広州恒大との第2戦で応援に回る側になっただけでなく、復帰は早くて11月上旬になる。

 ただ、追い込まれたときこそ、冒頭で記した内田の金言でもある「ウチのメンバーに、リザーブの選手というのはいない」が蘇ってくる。三竿も「出た選手が責任をもってプレーすることが、いい結果につながる」とチームメイトたちを信じ、自身は診断よりも早い復帰を目指していく。

 今季の始動時に掲げた四冠完全制覇が霧散しても、アントラーズに下を向くことは許されない。目標はおのずと国内三大タイトルに切り替えられる。リーグ戦では長くFC東京に独走を許していたが、直接勝利で白星をもぎ取ったことで、勝ち点差をついに1ポイント差にまで追いつめた。


内田篤人が語る優勝へ必要なものとは


「ジーコを含めた先輩たちが作ってくれた、基盤というものがあるとチームは崩れにくい。なので、優勝争いはできる。簡単じゃないけど、頑張ればできる。ただ、ここからタイトルを取るとなるとまた話は別。優勝へ必要なものを求めながら、残りのシーズンを戦っていくことも大事ですよね」

 昨夏にテクニカルディレクターとして古巣に復帰したジーコをはじめとする、アントラーズの先輩たちが築いてきたクラブの重厚な歴史に、内田は感謝と敬意を忘れない。そのうえで独特の表現で、残り8試合となったリーグ戦の覇権の行方をこうにらんでいる。

「追われる難しさをFC東京がわかっているかどうかは知らないけど、やっぱり追う方が楽だからね。僕らの背中が見える位置にまで来て、残りの試合で彼らにどのような重圧がかかるのか。やっとスタートラインに立った気がするけど、変な話、いい位置にいる気がします」

 現時点で最後となる、通算8度目のリーグ優勝を果たした2016シーズンのJリーグチャンピオンシップ決勝を制した瞬間にピッチに立っていた選手で、今季もコンスタントに出場しているのは永木とFW土居聖真だけになった。選手は大幅に入れ替わっても、しかし、内田を介して魂は伝授され、2017シーズンの最終節で連覇を逃して号泣した三竿に受け継がれようとしている。

 ラグビーワールドカップの関係で1週空いたリーグ戦は、次節は28日にホームで北海道コンサドーレ札幌と対峙する。10月に入れば川崎フロンターレとのYBCルヴァンカップ準決勝が待つ。何よりも25日には横浜F・マリノスとの天皇杯4回戦がキックオフを迎える。無念のACL敗退から1週間。負ければ終わりの一発勝負で、常勝軍団の覚悟と決意、そして真価が問われる。

(取材・文:藤江直人)

【了】




◆内田篤人が発した「みんな鹿島らしい選手になってきた」の真意。三竿健斗へと伝授される鹿島の魂【この男、Jリーグにあり】(フットボールチャンネル)