「日本を背負っているわけではない」
昨シーズンは終盤まで4冠の可能性を残しながら、結局は無冠に終わった鹿島アントラーズ。ザーゴ新監督を迎え、失地回復を目指す常勝軍団のなかで新エース候補として期待されているのが、2年目の上田綺世だ。
法政大から2021年に加入することが内定していたが、それを前倒しして昨シーズン途中にチームの一員となったストライカーは、リーグ戦13試合に出場して4ゴールを記録。A代表にも選出され、コパ・アメリカやE-1選手権を経験するなど、充実した1年を送った。
だが、本人にとっては課題の多いシーズンだったようだ。2月14日に行なわれたJリーグのキックオフカンファレンスにチームの代表として参加した上田は、次のように振り返った。
「満足することは一度もなかったですね。ACL(準決勝)の広州恒大戦やルヴァンカップ(準決勝)の川崎戦など、重要な試合で点が取れなかった」
何度も決定機を迎えながらノーゴールに終わったコパ・アメリカについては、「あの経験が活かされているかはまだ分からないですね。もしかしたら分かるのは10年後かもしれない。でも、あのレベルが自分の基準になっているし、ああいう舞台で活躍することを目標にやっていきたいと思います」
2020年の大きな目標はオリンピック出場だ。だが、まず鹿島で活躍することが重要だと強調した。
「チームでの活躍なくして、五輪の出場ないと思います。自分はあくまで鹿島を背負う存在であって、日本を背負っているわけではないので。鹿島で結果を残して、勝たせることが、日本を背負う選手になるということだと思います」
注目度の高い五輪でインパクトを残せば、世界への扉が開かれることになるだろう。海外でのプレーについては、次のように思いの丈を語った。
「海外でプレーしている日本の選手は、ただフル出場しただけで記事になったり、動画がアップされたりする。でも、それは日本人だから。例えば、ブラジル人がオランダ・リーグでフル出場しても、ブラジルではニュースにならないですよね」
そして、韓国代表FWの名前を挙げてこう続けた。
「ソン・フンミンはアジア人だからとかに関係なく、トッテナムのエースとして認められています。ソン・フンミンのように、人種とか出身とかに関係なく、世界のトップ・オブ・トップと肩を並べる存在になるのを目標にしていきたい」
将来的な欧州でのプレーについて語った上田だが、思い描いている“道筋”はとくにないという。あくまで目の前の試合で最善を尽くすことに集中している。
「五輪に出て、この国に移籍して、これだけ活躍して、みたいなことはまったく考えていません。いまアジア人ではソン・フンミンはトップで、そこは目指していきたいし、韓国の育成年代の選手もみんな目標にしていると思う。でも、それはソン・フンミンだから進めた道なわけで、僕には僕の道がある」
今後の課題については、爆発的な得点力と1トップで何でもこなせる器用さを挙げた21歳。飛躍の1年にできるかどうかは自分次第だ。
取材・文●江國森(サッカーダイジェストWeb編集部)
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