今季のセルクル・ブルージュは、ベルギーリーグ第9節からずっと最下位の16位に沈んでいる。第24節のオイペン戦に敗れ、15位のワースラント・ベフェレンに勝ち点9差をつけられた時には、「セルクル・ブルージュの降格は事実上、決まってしまった」と見る向きが多かった。
ところが、第25節のメヘレン戦で突然、セルクル・ブルージュにフォローの風が吹き始めた。
2−2で迎えたアディショナルタイム4分、MFステフ・ペータースの左足が唸りをあげ、ゴールネットを揺らして3−2で勝つと、全国紙『ヘット・ニーウスブラット』は「奇跡が起こった」と書いた。
「土曜日に28歳になったステフ・ペータースが、アディショナルタイムに強烈な左足のミドルシュートを決めて3−2にした。もしかしたら、やけくそのシュートだったのかもしれない。しかし、それがスーパーゴールを生んだ。黄金の価値のある勝ち点3は、悲劇的なシーズンの転換ポイントになるかもしれない」(ヘット・ニーウスブラット)
こうして迎えた第26節、15位のワースラント・ベフェレンがアディショナルタイム5分にクラブ・ブルージュに決勝ゴールを決められて惜敗した。
シント・トロイデン戦を目前にこの結果を知ったセルクル・ブルージュのイレブンは、さらに奮い立った。63分、MFケビン・ホッガスがFKを鮮やかに決めて先制すると、セルクル・ブルージュはコンパクトな守備でシント・トロイデンの反撃を許さず、1−0で勝った。
今季初めてアウェーで勝ったセルクル・ブルージュは、15位ワースラント・ベフェレンとの差を勝ち点3、14位オーステンデとの差を勝ち点4まで縮めた。もしかしたら、セルクル・ブルージュの本当の奇跡はこれから起こるのかもしれない。
10月頭の第10節から12月末の第21節までフル出場を続けていたCB植田直通は、今年に入ってからまったく出場機会がなかった。セルクル・ブルージュは冬の移籍市場で積極的に選手を獲得したが、そのなかのひとり、ディミトリオス・ハツィイサイアスにポジションを奪われてしまったのだ。
シント・トロイデン戦はもうひとりのCB、クアディオ=イヴェス・ダビラが出場停止処分で出られなかったものの、ベルント・シュトルク監督はジョナサン・パンゾを抜擢。植田はベンチスタートとなった。
しかし、パンゾの出来は不安定で、38分にイエローカードをもらう。すると、即座に植田がウォーミングアップを開始し、後半からピッチに入った。
とりわけ、鈴木優磨とのバトルは見応え十分。鈴木にキープを許しても、その先のプレーは許すまいと植田が身体を張り、伊藤達哉からのリターンはコースを切って鈴木に通させなかった。また、鈴木が右45度でフリーになってシュートを打ったシーンも、植田がギリギリのところでラインを上げてオフサイドポジションに追いやった。
今年に入って6試合目、しかも後半から出場機会を得て、ようやくチームの完封勝利に貢献した。
「冬のキャンプで、いいコンディションを作ることもできた。だけど、自分になにか問題があったので、試合に出られなかったのだと思います」
植田は今年に入ってからの状況を振り返った。
「こういう状況は何度も経験しているし、こういう時に一番成長できると思う。今までもそうやってきた。日々、練習が終わったあともひとりでやってきたし、いい準備ができたからこそ、今日、勝ち点3を取れたと思います。そこは、自分があきらめずにやってきたという成果が出たと思います」
鈴木が植田に挨拶しながら、ロッカールームに引き上げていった。
「試合を見ていても、優磨はチームメイトからかなり信頼を得ていると思った。今日、プレーをしていても、必ずボールがそこに集まるという予測をして、ボールを回収できた部分もあった。そういう優磨の成長を見ることができて、うれしいなと思いました」
植田は冒頭で「自分になにか問題があった」と語った。そんな彼が、出場機会がなかった時に取り組んだものは、なんだったのだろうか。
「自分に足りないものはなにかと考えた時に、技術の向上やフィジカル能力をもっと伸ばせると思った。試合に出てないからこそ、ウエイトトレーニングなどに取り組める期間でもあった。こういった期間があったからこそ、土台をしっかりと作り直せた」
残留のためには引き分けすら許されない状況で、セルクル・ブルージュはメヘレンとシント・トロイデンに競り勝った。シント・トロイデン戦後は、ロッカールームから選手たちの雄叫びが廊下に轟いた。チームのムードは最高だ。
「僕たちは引き分けでもダメ。勝つしかないという状況だった。今日の試合前にワースラント・ベフェレンが負けたという情報も入ってきて、それで一層、みんな奮い立った。この2試合は球際などでみんなが戦っているし、最後まで集中を切らさずやっているからこその2勝だと思う」
セルクル・ブルージュの試合内容はベルギー国内で高く評価されており、「このチームが最下位とはとても思えない」という声も挙がっている。
「(今年に入ってから格上相手に負けた)アンデルレヒト戦やアントワープ戦もそうでしたが、自分たちが優位な状況で落としてしまう試合があった。ただ、負けてしまってチーム状況が悪くなるかと思いましたが、チームの中はそんなにマイナスにならなかった。
監督も次に切り替えようと、声をかけてくれた。そういうこともあって、次の一戦に集中しようという気持ち作りができていると思う。
なにより今、選手が危機感を持ってやっている。トレーニングでも激しさが増してきているので、そういったものが試合に出てきていると、みんなも気づいてきている。やっぱり、練習の大切さを感じます」
シュトルク監督はチームの雰囲気作りのうまい指揮官だ。第11節からセルクル・ブルージュの指揮官に就任後、個の力の勢いで打開しようとしていたチームを、規律と組織のあるアグレッシブなサッカーに作り直した。
「(シュトルク監督は)ドイツ人監督ですが、日本人に似ているところがたくさんあって、規律がかなり厳しい。ただ、自分たちがやりやすいように明確にしてくれるから、やることがハッキリしています。また、相手のフォーメーションによって守備のハメ方なども、毎回丁寧に説明してくれる」
監督も次に切り替えようと、声をかけてくれた。そういうこともあって、次の一戦に集中しようという気持ち作りができていると思う。
なにより今、選手が危機感を持ってやっている。トレーニングでも激しさが増してきているので、そういったものが試合に出てきていると、みんなも気づいてきている。やっぱり、練習の大切さを感じます」
シュトルク監督はチームの雰囲気作りのうまい指揮官だ。第11節からセルクル・ブルージュの指揮官に就任後、個の力の勢いで打開しようとしていたチームを、規律と組織のあるアグレッシブなサッカーに作り直した。
「(シュトルク監督は)ドイツ人監督ですが、日本人に似ているところがたくさんあって、規律がかなり厳しい。ただ、自分たちがやりやすいように明確にしてくれるから、やることがハッキリしています。また、相手のフォーメーションによって守備のハメ方なども、毎回丁寧に説明してくれる」