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2020年6月9日火曜日

◆「あの時の鹿島は…」現役Jリーガーが認めた「“3連覇”09年アントラーズ」の最強ぶり(サッカーダイジェスト)






説得力のある佐藤の「3連覇は本当に難しい」


 意外な結果だな、というのが率直な感想だった。

 5月28日発売のサッカーダイジェスト本誌では、「Jリーグ歴代最強チーム」と題し、現役選手や元日本代表など総勢50名に“歴代で最強だと思うチームトップ3”を選んでもらった。その選者50人の回答結果をポイント形式で集計してランキング化。堂々の1位に輝いたのは、史上初の両ステージ制覇で“完全優勝”を成し遂げた「02年磐田」だった。

 中山雅史や高原直泰、名波浩、藤田俊哉ら錚々たる面子が揃い、完成度の高いサッカーを披露していた「02年磐田」の1位はある程度、予想はついた。この“最強”チームに対抗するのは、断トツの主要タイトル20冠を誇る鹿島アントラーズで、なかでも唯一の“リーグ3連覇”を達成した「09年鹿島」は、その盤石の強さと偉大な功績を考えれば、少なくともトップ3には入ると見ていた。

 だが、結果は4位だった。1位の「02年磐田」に続く2位は、初代チャンピオンの「93年東京V」で、3位はサイコロの“5の目”をした特異な中盤の形で一世を風靡した「01年磐田」。リーグ史上でひとつの金字塔を打ち立てた「09年鹿島」はこの3チームに及ばなかったが、だからといって、「09年鹿島」の出色の強さが強烈なインパクトを残したのは、紛れもない事実だろう。

 それは、「09年鹿島」を“最強チームトップ3”に選んだ現役Jリーガーの選出理由を見ても容易に分かる。佐藤寿人(千葉)は「3連覇は本当に難しい」と、極めて難易度の高い偉業について言及。佐藤自身、広島時代の12年、13年、15年と3度のリーグ優勝を経験し、連覇はできたが3連覇は果たせなかっただけに、ある意味、その言葉には説得力がある。

「僕も広島時代にリーグ連覇を経験しましたが、3連覇は本当に難しい。周囲から徹底的にマークされますし、勝てば勝つほど日程は厳しくなりますからね。そうした“壁”をすべて越えなくちゃいけない。シーズンを戦っていけば浮き沈みもあります。その点で、鹿島はフロントを含めて明確なビジョン、哲学を持っていた点が大きかったんだと感じます」


「1点取ったら『あ、この試合は勝ったな』(興梠)




 相手から徹底した対策を練られても、それをモノともせずに勝ち進む。実際、“当事者”はどう感じていたのか。09年シーズンは鹿島に所属し、浦和との最終節でリーグ優勝を手繰り寄せる決勝点をヘッドで叩き込むなど、3連覇に大きく貢献した興梠慎三(浦和)は、次のように回想する。

「この年の鹿島もほとんど負ける気がしませんでしたから。相手から対策されていたけど、まったく苦にならなかったんですよね。普通は1、2点差では気が抜けないけど、当時は1点取ったら『あ、この試合は勝ったな』って自然と思えるような。そんな心の余裕がありましたね」

 先制すれば、勝てる。揺るぎない強さを見せていた当時の鹿島を「手堅いサッカーをしている常勝軍団という印象」と語る宇佐美貴史(G大阪)は、攻守両面の充実ぶりを称賛する。

「ボールを奪った瞬間、スイッチが入り、サイドの選手がガガガっと攻め上がる伝統のカウンター攻撃はめっちゃ鋭く、たまに行き過ぎたら小笠原(満男)さんあたりがケアしながら、最後は2トップのマルキーニョスと興梠慎三くんが確実に決める、と。CBも鉄壁で、崩れる気がしなかったですしね!」

 小笠原については、佐藤も「すべてが高レベルで、根底には“目の前の相手に負けない”というサッカーで最も大事な気持ちを持っていました。あの時の鹿島は、満男さん抜きで語ることはできません」とコメント。チームトップの13ゴールを決めたマルキーニョスに関しては、前線でコンビを組んだ興梠は「マルキは凄かったです。大事なところでしっかりと点を取ってチームを勝たせられるし、難しいクロスも簡単に合わせて決めてしまう。スーパーシュートも多くて、まさに頼れるエースって感じでした」と称える。

 興梠とマルキーニョスの2トップに「憎たらしかった」と独特の表現で一目置いているのが、鄭大世(清水)だ。

「興梠はまだ精神的に成熟していなかった印象ですけど、とにかくクレバー。ただ、それを上回るのがマルキーニョスです。ひとりでシュートに持ち込める実力者だけど、周囲を使うのも上手い」

 さらには、「(この2トップを)支えていたのが本山(雅志)さんと野沢(拓也)さんの天才MF。豪華過ぎる陣容ですよね」と続ける鄭は09年シーズン、川崎でプレーしており、「(川崎と鹿島の)直接対決では1勝1分と負けなかった」という。10月の対戦では3-2で競り勝ってみせる。この試合で鄭は2ゴールを挙げる活躍も見せており、苦手意識はなかったかもしれないが、「気づいたら鹿島が優勝していて、改めて1シーズンでの勝負強さを感じましたね」と感心する。


「象徴は間違いなく小笠原さん」(鄭)




 鄭はまた、09年シーズンのリーグMVPに選ばれた鹿島の“レジェンド”小笠原の存在を介して、このチームの伝統の勝負強さについて推察する。

「(09年鹿島の)象徴は間違いなく小笠原さん。うっちー(内田篤人)も『小笠原満男なくして鹿島はない』と言っていますし、練習の強度が高いのは小笠原さんのマインドがクラブに伝わっているからでしょう」

 この勝負強さについて、「歴代トップかな」と評価する佐藤は「勝つために何をするべきかチーム全体で整理されていて、全員のベクトルが合っていた。そうでないと、3連覇は成し遂げられませんよ」と分析する。

 チームを構成する個々の顔ぶれについて「タレントも揃っていました」と言う興梠は、「前年に連覇した時のメンバーがほとんど残っていて。例えばFWだったらマルキと俺がレギュラーで、その他にも(田代)有三さんがいて、大迫(勇也)が新人として入ってきて。誰が出ても同じように質の高いサッカーができたし、ハイレベルな競争が生まれていました。その緊張感が結果につながったんじゃないかな」と思い返す。鄭は、「清水で17、18年とチームメイトだった(増田)誓志は常に自分を追い込む性格で、サッカー選手の鑑。09年の鹿島を選んだのは、彼に敬意を表す意味もあります」と明かす。

 本企画の総合ランキングでは4位という結果に終わった「09年鹿島」だが、Jリーグの歴史にその名を深く刻んだ“最強ぶり”が色褪せることはない。昨季は無冠に終わった元祖“常勝軍団”が、ザーゴ新監督を迎えて新体制で臨む今季、かつてのような強さでタイトルを掴む姿を期待したい。

構成●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
取材・文●高村美砂(=宇佐美貴史)、サッカーダイジェスト編集部(=佐藤寿人、興梠慎三、鄭大世)


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