屈辱から一転して躍進。新しくザーゴ監督を迎えた昨季の鹿島アントラーズのシーズンを振り返ると、こうなるだろう。
クラブワーストとなる開幕4連敗に、Jリーグ勢では史上初めてとなるACLのプレーオフ敗退を喫する最悪のスタートながら、2020シーズンが終わってみれば、J1で5位。しかも、ACL出場となる3位の名古屋に、勝ち点差4まで迫ってみせた。
ザーゴ監督の戦術が浸透すると同時に、所属メンバーとJリーグにその戦術を合わせていくことで白星を掴んでいった。就任初年度は、鹿島アントラーズの新しい「幹」を育てた1年だったが、その中で、世代交代も実現。下部組織出身で東京五輪世代のGK沖悠哉が守護神の座を掴み、リーグ戦24試合に出場。プロ1年目のFW上田綺世も、2ケタ得点となる10点を奪ってみせた。
それだけでなく、MF荒木遼太郎は高卒ルーキーながら26試合に出場し、その豊かな将来性から、2021年シーズンは背番号「13」を着ける。鹿島の13番と言えば、かつて柳沢敦氏や興梠慎三(現・浦和)が務めた重みのある番号。クラブからの期待の大きさが表れている。
若手の成長が著しいため、2021年シーズンに向けた補強はピンポイントとなっている。ユースからの昇格、高卒、大卒の新人を6人入団させたほかは、外国人選手2人(ディエゴ・ピトゥカ、アルトゥール・カイキ)を獲得するのみとなっている。一方で、GK曽ケ端準の引退に加え、DF奈良竜樹、DF山本脩斗、DF伊東幸敏、FW伊藤翔といった中堅&ベテランを放出。出入りだけみれば放出のほうが多く感じるが、この辺は若手選手の活躍によるA契約締結とも関係している。
数少ない補強選手であるピトゥカについては、大きな期待が寄せられる。ジーコが惚れたというその逸材は、基本のポジションをボランチやセントラルミッドフィルダーとしながらも左サイドバックや左サイド、さらに、フォワードすらこなせるという器用さを持つ。鹿島の中盤に柔軟性と創造性をプラスする存在となるはずだ。
もう一人の獲得選手であるアルトゥール・カイキは、左ウイングをベストポジションとしながらも、センターフォワードと右ウイングでもプレーできるアタッカー。4-4-2であれば、左右のサイドでもプレーできるため、ファン・アラーノと強力な2列目を構成する可能性もある。
ピトゥカもカイキもしばらくは入国できないため、当面の鹿島は昨季のメンバーで戦うことになる。しかし、補強の数を見ても分かるように、すでにチームとしての骨格はできているため、外国籍選手2人は、途中からチームの勢いを加速させる存在となるはずだ。
また、昨季加入しながらも、その能力を引き出せていない選手にも注目したい。左サイドバックの永戸勝也は、仙台時代に10アシストを記録してリーグアシスト王になりながらも、昨季は22試合2アシスト。バランスを考えながらのプレーに重きを置いた昨季だったが、今季はその左足からのチャンス量産にも期待したい。
また、右サイドバックの広瀬陸斗は、負傷による長期離脱こともあって15試合出場3アシストに終わってしまった。シーズンを通して定位置を掴み、得点機会に絡む姿に期待したい。
他チームの追随を許さない8度のJ1リーグ優勝を誇る鹿島アントラーズ。序盤でつまずきながらも最終的には5位でフィニッシュしたザーゴ監督のチーム作りは2年目となり、9度目のJ1制覇は現実的な目標となる。
◆「鹿島アントラーズ」2021年の予想布陣&最新情勢「ザーゴ体制2年目で奪い返す“Jの頂点”」(サッカー批評)