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2022年1月23日日曜日

◆荒木遼太郎が代表合宿で見せた“フィニッシュ”へのこだわり。その背景にある恩師の言葉「すべてをこなしてほしい」(サッカーダイジェスト)






鹿島の“新10番”が着眼点を置いたのはキックの種類





 心機一転の新シーズン。昨季は鹿島アントラーズで36試合に出場、10ゴールを叩き出し、ベストヤングプレーヤーに選ばれるなど飛躍のシーズンとなった。プロ3年目を迎える2022年、荒木遼太郎が力強いスタートを切っている。

 今季から東福岡高の先輩である本山雅志もかつて背負っていた10番を託され、1月の日本代表候補合宿にも初選出された。

 1月17日から千葉県内でスタートした合宿では、主に左サイドハーフに入り、こちらも東福岡の先輩である左サイドバックの長友佑都と縦関係のコンビを組み、的確なアドバイスをもらいながら伸び伸びとプレーをしていた。

「長友選手からは最初に『ヒガシ出身なのか?』と話しかけてくださって、そこから少し安心感が生まれました。それ以降はポジショニングなどを話しました」

 初めてのA代表で緊張もあっただろうが、先輩の何気ない言葉が荒木をリラックスさせてくれた。持ち前のファーストタッチのうまさと、一瞬の加速で相手をすり抜けていくドリブルに加え、「こだわっている」というシュート面でも成長をアピール。昨季、鹿島ではミドルレンジからのシュートや、ワンタッチやツータッチと少ないタッチから正確にコースを射抜くシュートを存分に発揮をしたが、今年から彼が着眼点を置いたのはキックの種類だった。

「シーズンオフにいろんなシュートを蹴られたらいいなと思って、練習に力を入れてきました。去年から少しやっていたのですが、シーズンオフには縦回転や無回転など、回転にもこだわって、入りやすくなるシュートを打てるように取り組んできました。きっかけは結果を出すためにということもありますが、FKの時にカーブばかりでは相手に読まれやすくなってしまうので、無回転など回転にこだわって蹴ったほうが相手も困るだろうなと思ってやり始めました」

 実際にシュート練習では無回転のボールや、縦回転でファーに落とすボールなど、多彩なキックを披露。自主トレで磨いてきた成果を示していた。


「W杯は小さい頃から憧れてきた大会」


 なぜ彼はここまでフィニッシュにこだわったのか。それは東福岡時代の恩師の言葉が少なからず影響している。彼は突破を得意とするウインガーだったが、高3になると【4-3-3】のアンカーを任され、そこで森重潤也監督から「すべてをこなしてほしい」という要望を受けた。

 攻守のバランスを取りながらも、チャンスと見たら2シャドーや1トップを追い越してゴールまで飛び込む。プレスバックを仕掛けてボールを奪ったら、そのままサイドに展開したり、ワンツーやドリブルを駆使して前に運び、ミドルシュート、スルーパス、味方のクロスからのシュートと、フィニッシュに関わる。この難題を彼は1年間、見事にやってのけた。

 だからこそ、どのポジションもできて、フィニッシュワークもできる選手として、鹿島でその才能がさらに開花した。

「いろんなポジションができてメリットはあるし、その質を上げていきたい。さらに上に行くためにはフィジカルの部分や守備の部分でボールを奪い切って、そのままゴールを決められるように守備を強化していきます」

 自分が伸ばすべき長所を彼はきちんと把握している。それは今回の代表合宿でより明確になっただろう。同時に、新たな具体的な目標も彼の中に生まれた。

「ワールドカップ(W杯)は小さい頃から憧れてきた大会ですし、前回のロシア大会も観ていました。今回、多少かもしれませんが、自分にも出場できるチャンスが巡ってきた。そこに食らいついていけるように全力でプレーしたいです」

 2列目のポジションには多くのタレントがいる。原口元気らベテラン然り、堂安律、相馬勇紀ら東京五輪世代然り、久保建英などの同世代もいる。
 
「熾烈な戦いになると思うので、いろんなポジションをできる強みやフィニッシュ、ボールを奪って結果につなげるなど、もっと自分の長所を磨いていかないといけないと思っています。僕も同世代なので負けたくない気持ちはありますが、その中でプレーを見ることもいい刺激になっているので、自分も代表活動の場に来たら結果を残したいと思います」

 カタールW杯という、見えてきた目標に向けて。まずはアジアの過酷な戦いで戦力になるべく、そして鹿島で本山のようなタイトルに導く10番となるべく、荒木の新たなる1年がスタートした。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)