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2022年3月1日火曜日

◆鹿島アントラーズ、完敗でも十分に見えた2つのポジティブ要素。王者相手に課題も露わ(Sportiva)






 J1第2節、鹿島アントラーズは川崎フロンターレに0-2と敗れた。

 鹿島は前節、ガンバ大阪に3-1で勝利。最高の形でホーム開幕戦を迎え、昨季王者を迎撃する態勢は整っていたはずだったが、連勝とはならなかった。

 敗因は、はっきりしている。前半の17分までに2点も献上してしまったことだ。

 とりわけ、キックオフから2分足らずで与えた1点目が痛かった。

 川崎がさして厳しいプレッシャーをかけてきたわけでもないのに、DF関川郁万が自陣で川崎のFW知念慶にボールを奪われ、そのままシュートを決められて失点。軽率なパスミスは、あまりにも高くついた。

「ミス自体は気にならないが、臆病なまま前半を過ごしたことに悔しさが残る」

 いまだコロナの水際対策の影響で来日ができていないレネ・ヴァイラー新監督に代わり、監督代行を務める岩政大樹コーチがそう語ったように、前半の鹿島は悪い流れに飲み込まれたまま、大量失点につながりかねないピンチにさらされ続けた。敗戦は当然の結果だっただろう。

 しかし、後半の内容は悪くなかった。

 岩政コーチは、「後半は(川崎を)追い詰めるところまではいったが、得点までいかなかった。川崎の強さを打ち破れなかった、ということ。今日は僕たちの負け」と潔かったが、90分を通して試合を振り返れば、鹿島に案外悪い印象は残っていない。

 結局はノーゴールに終わったにもかかわらず、だ。

 その理由は、主にふたつ。まずは、柔軟な戦術変更が挙げられる。

 鹿島はこの試合、MFをボックス型に配した4-4-2でスタートしたが、後半は同じ4-4-2でも、中盤をダイヤモンド型に変更。これによって、MFディエゴ・ピトゥカがより高い位置でプレーできるようになったばかりでなく、両サイドMFも窮屈そうにプレーしていた前半とは打って変わり、相手の間でパスを受けたり、DFラインの背後への飛び出しを増やしたりと、自由に動くことができるようになった。

 そんな中盤の活性化に引っ張られるように、両サイドバックも高い位置で攻撃に加われるようになり、攻撃には明らかな厚みが生まれていた。鹿島の後半の反撃が、システム変更を引き金としたものだったことは間違いない。

 実は鹿島は前半途中にも一度、4-2-3-1へとシステム変更を図っている。攻撃の糸口を見出せなかったため、2トップのひとりであるFW鈴木優磨を左MFに移すことで、サイドで攻撃の起点を作ろうとしたのだろう。

 結果的にこれは功を奏さず、前半のうちに元の4-4-2に戻すことにはなったのだが、これだけ早く動けるということは、新指揮官不在であっても、日々のトレーニングから相応の準備がなされていることを裏づける。

 まだ先の長いシーズンを考えれば、柔軟に使いこなせる複数の戦術オプションは、大きな武器となるはずだ。

 そしてもうひとつ、鹿島からポジティブな印象を受ける理由は、新戦力を加えて質量ともに厚みを増した攻撃陣にある。

 今季、ベルギーのシント・トロイデンから復帰した鈴木がFW上田綺世と組む2トップは、得点能力の高さではJ1屈指。少々の劣勢でも、ワンプレーで試合の流れを変えてくれそうな雰囲気を常に漂わせる。

 加えて、能力的にはふたりにまったく引けをとらない、FWエヴェラウドもベンチに控えているのだから、選手層は厚い。

 また、サガン鳥栖から移籍加入したMF樋口雄太は、機動力を生かしながら高い技術を発揮できるタイプの選手。昨季ブレイクしたMF荒木遼太郎との相性もよさそうで、互いの特長を引き出し合えそうな気配を見せる。

 その結果、これまでやや持て余し気味だった、ディエゴ・ピトゥカのパス能力を最大限に引き出すことにつながれば、1+1が3にも、4にもなっていくはずだ。

 この試合でも後半は、荒木、樋口、ディエゴ・ピトゥカが自在に立ち位置を変え、川崎ディフェンスを翻弄した。後半のシュート数は、川崎の2に対して鹿島は8。同じくCKの数も、川崎のゼロに対して鹿島は7。鹿島が川崎を圧倒した様子は、数字にも表れている。

 川崎は前の試合から中2日。しかも2点をリードしたことで、鹿島に"攻めさせてあげた"という側面はあったかもしれない。だとしても、鹿島の攻勢は、決してそれだけが要因ではない。

 後半に見せた迫力ある攻撃は、今季の鹿島に期待を抱かせるものだったと言ってもいいのではないだろうか。

 ただし、鹿島が今季、優勝争いに加わっていくための課題もはっきりした。

 いかにセンターバックの穴を埋めるか、である。

 このオフに、DF犬飼智也(→浦和レッズ)、町田浩樹(→ユニオン・サン・ジロワーズ)と昨季のレギュラーセンターバックをふたりまとめて失った痛手はあまりに大きく、冒頭で記した関川だけでなく、新たに獲得したDFキム・ミンテ(コンサドーレ札幌→)にしても、戦力としては十分ではない。守備はともかく、ビルドアップにおいては、いずれも心もとないと言わざるをえない。

 当座は、ボランチが本職のMF三竿健斗の起用でしのぐのか。あるいは、新戦力の獲得に動くのか。いずれにしても、優勝を狙うなら、何らかの対応が必要だろう。

 今季初黒星を喫したホーム開幕戦は、よくも悪くも、鹿島の現状を映し出していた。


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◆鹿島アントラーズ、完敗でも十分に見えた2つのポジティブ要素。王者相手に課題も露わ(Sportiva)