[2.25 J1第2節 鹿島 1-2 川崎F カシマ]
1点リードで相手が10人となった後半41分、鹿島アントラーズはこの日最後となる3回目の交代枠を使い、ゲームキャプテンを務めていたFW鈴木優磨をベンチに下げた。するとその後は数的優位にもかかわらず、川崎Fの猛攻を受けて同点ゴールを与えると、アディショナルタイムにはPKで勝ち越しゴールも献上。試合後、DF安西幸輝は「優磨とかがいなくなってからバタバタしてしまった」とリーダー不在の試合運びを悔やんだ。
鹿島にとっては、守勢に回りながらも手応えのあった一戦だった。岩政大樹監督が「後半はかなりコントロールができたと思っている。前半はもう少し自分たちでボールを取る形を作りたかったが、できないことを選手たちが判断して、自陣で構える時間を増やして、1-0で終わらせた。ここは一つ評価できる。後半は守りだけではなく、矢をしっかり持ちながら、牙を持ちながら攻めていくことができていた」と振り返ったように、ボールを握らせながらも試合をコントロール。時折カウンター攻撃に出ていく場面もつくり、プランどおりの試合運びだった。
安西から名前が挙がった鈴木も「今日に関しては回させている意識があって、取ってからも良い攻撃ができていたし、ショートカウンターに相手が嫌がっていた」と前向きに感じていた様子。ボール支配率はおおむね30%と70%で守勢と言える内容ではあったものの、ベンチ、ピッチ上ともに充実感を覚えていたようだ。
それでも鈴木の交代後にチームは2失点を喫してしまった。鈴木は「さすが近年のJリーグを引っ張ってきたクラブだと最後の最後に感じた」と川崎Fへのリスペクトを示しつつも、自身やFW知念慶がピッチから退いた後のチームを「はっきり言って強度として落ちていた」と表現。「それをどう受け止めて、チームとしてどう上げていくかを個々で感じて、普段からどれだけ詰めてやっていけるかの戦いだと思う」と述べ、この一戦の教訓として個人の成長を求めた。
「結局は個人だと思う。いくらチームでこういったやり方をしようと言っても、最後の判断は個人。途中から出ていた(仲間)隼斗くんは経験を積んでいるし、やるべきことをよくわかっているけど、途中から入ってくる若手。ミスをしないと学べないものだけど、それを次にどう活かせるか」
鈴木は鹿島で育ってきた自身を振り返りながら、若手が持つべきメンタリティーを力説した。
「俺らはそうやって学んできて、次にチャンスをもらった時に絶対そういうことをしたくないんだという気持ちでやってきた。いかにそこに自分で持っていけるか。俺も植田(直通)くんもみんなそうだった。ミスをして負けて、自分のマークを外して負けて、それで俺らがここまで来られたのは、それを絶対に無駄にしたくない、そのミスをもうしたくないんだという気持ちで練習してきたから。現代は“切り替え”という部分がすごく強調されるけど、そこだけ強調するのは俺はあまり好きじゃない。そのミスを重く感じてどうするか。それが俺も含めてもっともっと必要かなと思う」
岩政監督はこの日、試合後会見で同点ゴールにつながったゴール前の対応に敗因の一つを指摘していたが、鈴木が問い直したのもそうした個人の対応力だ。したがって、川崎F戦での手痛い黒星をなんとか教訓にしていくため、これからのトレーニングでさらに高い基準を求めていく構えだ。
とはいえ岩政監督はこの日の敗戦について「そんなに甘いものじゃなかったということだと思う。ただ、シーズンは紆余曲折があって進めていくだけで個人的には大きく捉えていない」とも説明。「いま僕らは道の途中でチームを作っている段階で、今日勝っていれば大きな自信を持って次に向かえたと思うが、そういうのが目の前にチラついたことがあったかもしれない。自分たちがもう一度見つめ直しながら一歩一歩進んでいくしかない」と冷静に行く先を見つめていた。
(取材・文 竹内達也)
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