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2023年2月7日火曜日

◆三竿健斗、相馬勇紀は早くも活躍。カズも渡るポルトガルと日本人選手との相性は?(Sportiva)






 ポルトガルリーグで、日本人サッカー選手がにわかに声望を高めつつある。値打ちは上昇で、これからも"参入"は続きそうだ。

 カタールW杯日本代表メンバーの守田英正は、名門スポルティング・リスボンの主力としてプレー。中盤でバランスをとれるだけでなく、ゴール前に入る技量の高さも示している。ブラガ戦の2得点は圧巻だった。

 ロシアW杯日本代表の中村航輔はポルティモネンセでゴールマウスを守る。1,2年目は苦しんだが、3年目の今季は成果を上げつつある。カーザ・ピアの邦本宜裕はJリーグ、Kリーグをいずれも不祥事で追われたが、ポルトガルでは主力として活躍。藤本寛也は東京ヴェルディからジウ・ヴィセンテに移籍し、今や中盤で居場所をつかんでいる。田川亨介はサンタ・クララで、交代出場が多いものの16試合に出場。渡井理己は徳島ヴォルティスから新天地に選んだボアヴィスタで格闘中だ。

 さまざまなバックグラウンドがあっての移籍で、全員が満足できる結果を残しているわけではないが、多くの日本人選手が挑戦の地にポルトガルを選んでいる。まさに多士済々。そして今シーズンの冬のマーケットでは、三竿健斗(サンタ・クララ)、相馬勇紀(カーザ・ピア)という代表レベルのふたりも加わった。

<ポルトガルのクラブが日本人選手を求め、日本人選手がポルトガルのクラブを目指す>

 そんな構図ができあがってきたわけだ。

 かつて、ポルトガルリーグは日本人選手にとって鬼門だった。

 筆者はかつて廣山望(ブラガ)、相馬崇人(マリティモ)の挑戦を追いかけ、ルポを書いたことがある。ふたりとも入団当初の評価はとても高かった。パス、ドリブルなどの技術に優れ、献身性も高い。特徴を出すことで、適応できるはずだった。だが......。

「球際で弱すぎるのと、適性のポジションがない」

 おおざっぱに言えば、ともにそんな評価で出場機会を減らしていった。

 ポルトガルサッカーは一見、華やかな印象を受ける。とりわけ、当時はそのイメージが強かった。マヌエル・ルイ・コスタ、ルイス・フィーゴ、パウロ・ソウザ、ジョアン・ピントなど、華麗にボールを回す技巧派の代表選手が黄金期を彩った後の時代で、世界的にもドリブラーやパサーが活躍していた。


【風穴を開けた中島翔哉】


 しかしながら、国内リーグはかなりタフな場である。泥臭い、と言い換えてもいい。執拗なまでに1対1での勝負が求められ、体力的、精神的に強さが不可欠。少しでもさぼる選手は生き残れないし、修羅場から台頭することによって、真のテクニシャンが生まれてきたのだ。

 また、ポルトガルではサイドバック、ウイング、ボランチ、トップ下というポジションが確立されていた。どれだけドリブルそのものがうまかったとしても、ポジションの役目を果たせなかったら、居場所はない。たとえばウィングバックだったら、そのシステムを用いるチームであるほうがベターで、さもなければサイドバック、ウイングに適応できない限り、定位置はつかめないのだ。

 日本人がなかなか活躍できなかったポルトガルリーグに風穴を開けたのは、中島翔哉(現アンタルヤスポル)だろう。

 ポルティモネンセのテクニカルディレクターがロブソン・ポンテ(浦和レッズでも活躍した攻撃的選手)で、理解者がいたことも大きかったが、FC東京でも冷や飯を食らっていた中島が活躍できたのは、まさにウイングとしてのドリブルがポルトガルの風土とマッチしたからだった。1年目は29試合10得点で注目を浴び、中東経由で強豪FCポルトに移籍。独創的ドリブルは日本にいた時よりも称賛を受けた。

 中島の成功で、ポルティモネンセは日本人選手に門戸を広げている。権田修一(清水エスパルス)、安西幸輝(鹿島アントラーズ)、西村拓真(横浜F・マリノス)、現在も所属する中村など、うまくいった例も、そうでない例もあるが、流れを止めずに移籍の道を確保した。

 その傾向は、リーグ全体に伝播。他のクラブも前田大然(セルティック)、食野亮太郎(ガンバ大阪)などに挑戦の場を与えた。日本人選手の評価が定着したのだ。

 欧州各国リーグのどこであれ、日本人選手が多くなるケースは、基本的にこの論理である。リーグで成功したひとりの選手がパイオニアになって、日本人選手の評判を高め、さらに後から入ってきた選手が道を広げる。後が続けば、移籍経路ができる。

 その点で、中島に続いて守田は"中興の祖"と言えるかもしれない。彼のポルトガル一歩目となったサンタ・クララは、その後も田川、三竿と契約。スポルティング・リスボンでの活躍はポルトガル国内でも大きく伝えられ、同じカタールW杯日本代表の相馬の契約にも影響を及ぼしたはずだ。

 成功も失敗も含めて、日本人が切り拓いてきた市場が今のポルトガルリーグと言える。円安事情もあり、日本人選手が求めるサラリーが支払えるようになったという変化もあった。活躍次第で欧州トップクラブへの道も開ける。

 つまり、ポルトガルのクラブにとっても、いい商売になる。強度も技術も身につけた日本人選手は"買い"であり、高く"売れる"。中島、守田は典型だろう。

 一方、三浦知良がポルトガル2部リーグのUDオリヴェイレンセに移籍したのは、単純に日本企業がクラブを所有したからだろう。支援がなかったら、この移籍は成り立たない。ただし、日本企業が支えることで、他の日本人選手との契約を加速させる可能性はあるかもしれない。

 相馬はすでにデビュー2試合目で初ゴール初アシスト。三竿も4試合連続出場で、いきなり定位置をつかみ取った。日本人選手とポルトガルリーグの関係性は、これからも太くなりそうだ。




◆三竿健斗、相馬勇紀は早くも活躍。カズも渡るポルトガルと日本人選手との相性は?(Sportiva)