Jリーグ・鹿島アントラーズ、ユース・チームが3月9日、シドニー北郊テリーヒルズにあるシドニー日本人国際学校への表敬訪問を行った。ユース所属選手のみならず、スタッフには元鹿島アントラーズ選手で現在はチーム運営に携わる柳沢敦氏、小笠原満男氏、曽ヶ端準氏、鈴木修人氏らレジェンドがずらりと勢揃い。豪華メンバーの訪問とあり、シドニー日本人国際学校の生徒たちもこの日を心待ちにしていたという。本記事は、日豪プレス編集部でインターンシップ生として働き、自身もプレイヤーとしてサッカーを愛する山内岳登がお届けする。
(取材:山内岳登、写真:馬場一哉)
今回、鹿島アントラーズをシドニーに招いたのは、自身も元鹿島アントラーズで日本代表経験もある田代有三氏が代表を務めるサッカー・スクール「MATE FC」だ。選手やスタッフの訪問に際して、体育館には同校の生徒たちが集められMATE FCによる司会の元、鹿島アントラーズの元選手ら4人が登壇。インタビューの時間が設けられた。
サッカーを始めた年齢やきっかけ、プロになるために努力したことなど、気になる質問を司会者が投げかけ、元選手ら4人がそれぞれ回答した。
鹿島アントラーズユースの現監督である柳沢氏は「当時は野球をやりたかったのですが、10歳になってからでないとクラブに入れなかったことから、7歳の時にサッカーを始めました」と答えた。小笠原氏は「僕は野球とスキーもやっていたのですが、その中で最も好きだったのがサッカーでした」と話した。
司会者からの質問が終わると、生徒たちからの質問タイムへと移行。多くの子どもたちが質問をしようと目一杯手を上げた。
「W杯に勝つとどれくらいお金をもらえますか?」という生徒の質問に対し、小笠原氏は「大体一試合勝てば車を買えるくらい、勝ち進んでいくと家が買えます。夢があるでしょう?」と笑いながら答えた。
また保護者からの「現役時代に憧れていた選手は?」という質問に対して、柳沢氏は「三浦和良選手が大好きです」と答え、小笠原氏は「憧れではないが、クラブW杯でレアル・マドリードと対戦した時に、クリスティアーノ・ロナウド選手をはじめ同クラブの選手たちが印象に残っています」と答え、続いて「そのクリスティアーノ・ロナウド選手に点を決められたゴールキーパーがここにいる曽ヶ端準です」と冗談を交え、会場を盛り上げた。
インタビュー後、生徒たちはグラウンドに移動し、ユース・チームの選手らとサッカーを楽しんだ。澄み切った青空の下、ユースの選手たちからボールを奪おうと子どもたちは懸命にボールを追った。それに対し、プロの卵であるユースの選手たちも真摯にプレーで対応していたのが印象的だった。
今回の遠征について、MATE FC代表の田代有三氏は「僕には日本とオーストラリアをスポーツでつなげたいという目標がありました。僕も一緒にプレーしていた選手らが来てくれたことで、子どもたちに良い経験を得られる場を設けられたのがうれしいです。そして僕自身、子どものころは有名なスポーツ選手に会ったことがなかったので、もしそういう機会があれば子どもたちはもっとサッカーを好きになってくれるのではないかと考えました」と話す。
また、柳沢氏はユースの選手が今回シドニーに訪れたことに対し「世界で活躍するスーパースターは言語面でも人格面でもとても優れています。そのためにも選手たちが若いうちに海外で異文化に触れることはとても大切なこと。人としてもサッカー選手としても優れた大人になってくれたらうれしいです」と話した。
最後にユースチーム・キャプテンの小倉幸成さんに話を聞くと「子どもたちがとても元気で楽しかった」と答え、更にイベント前日に行われたウエスタン・シドニー・ワンダラーズFC、U-20チームとの試合(4−4の引き分け)については「日本とオーストラリアのフィジカルの違いを痛感しました。そこが課題だと思います」と日豪の違いを語ってくれた。
遠征を終えて──柳沢敦監督インタビュー
鹿島アントラーズ・ユースチームは3月11日、シドニー西郊グレンウッドにあるバレンタイン・スポーツ・パークで、ナショナル・プレミア・リーグ(NPL)のガンガーリン・ユナイテッドFC(オールエイジ、キャンベラ郊外拠点)に5対2で快勝し、遠征を終えた。今回の遠征の振り返りについて試合後、柳沢監督に話を聞いた。(編集部)
──コロナ禍もあり久々の海外遠征となりましたが、選手たちにとって良い経験になったのでは。
「シドニーを拠点に活動する田代有三・鹿島OBのおかげでいろいろなチームとゲームをさせて頂くなど、すばらしい機会を得ることができました。選手たちにとって、異国の文化を感じること、そして言語や食べ物、物の値段など、日本とは全く違う環境の中で時間を過ごせたのは、とても良い経験になったと思います」
──今回、2チームと対戦しましたがオーストラリアについてはどのように感じましたか。
「田代君を通じてAリーグやNPLの現状をいろいろと聞きました。日本人選手が所属しているチームもあると聞いていますし、オーストラリアは同じアジアのチーム、そしてライバルとして切磋琢磨して行けると感じています。お互いがそれぞれ世界のトップ10には入れるような国に成長していけたらうれしいなと思います」
取材を終えて
プロのサッカー選手になる人は生まれた時からサッカー・ボールを触っているぐらい根っからのサッカー好きの人ばかりだと思っていたが、きっかけは人それぞれなのだなと思った。また、今回の取材を通じて、このような機会を子どもたちに提供できるようになれば日本人のサッカーに対する熱は更に盛り上がるのではないかと感じた。プロの世界で戦っていた選手たちと交流した経験、目の前ですばらしいプレーを見せてくれたユースの選手たちを通じて、子どもたちはもっとサッカーのことが好きになっただろう。この経験が糧となり、プロを目指す子どもが現れれば幸いだ。
(山内岳登)