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2023年12月30日土曜日

◆ボランチの“第4枠”を巡る熾烈な争い。佐野海舟? 川村拓夢? 伊藤涼太郎も候補の1人だ(サッカーダイジェスト)



佐野海舟


第4枠はまだ混とんとしている状況


 2024年の元日に国立競技場で行なわれるタイ戦に向け、12月28日から千葉県内で始動している日本代表。合宿2日目の29日には帰国が遅れていた町田浩樹(ユニオンSG)、伊藤涼太郎、鈴木彩艶(ともにシント=トロイデン)の3人が合流。軽めのメニューを消化した。

 伊藤洋輝(シュツットガルト)、浅野拓磨(ボーフム)、上田綺世(フェイエノールト)も別メニューが続いているが、それ以外のメンバーはゲーム形式などで追い込んでおり、コンディションは確実に上がっているようだ。

 こうしたなか、田中碧(デュッセルドルフ)、佐野海舟(鹿島)、川村拓夢(広島)のボランチ陣は悪くない動きを見せていた。特に佐野と川村の両国内組はオフ明けにもかかわらず、パンチ力のあるシュートを次々と放つ。アジアカップのメンバー入りにも強い意気込みをのぞかせていた。

 ご存じの通り、第二次森保ジャパンのボランチ陣では、キャプテンの遠藤航(リバプール)と守田英正(スポルティング)が鉄板。田中がバックアッパーの一番手で、第4枠はまだ混とんとしている状況だ。

 この1年間を見ると、今季に急成長した川村が6月シリーズで初招集されたが、体調不良で離脱。直後に追加で呼ばれた伊藤敦樹(浦和)が屈強なフィジカルと推進力で好アピールを見せ、定着の足掛かりを掴んだ。9月のトルコ戦では代表初ゴールをゲットするなど上り調子で、11月シリーズまで連続招集されていた。

 ところが、その直前に負傷。2026年北中米ワールドカップのアジア2次予選の初陣を棒に振ることになった。そこで抜擢されたのが、今季に鹿島でブレイクした佐野だった。ミャンマー戦で初キャップを飾った彼は、持ち前のデュエルの強さとボール奪取力を前面に押し出し、積極的にシュートも打ちに行くなど、非常に勢いのあるプレーを披露。今回も連続選出に至っている。

 つまり、現状では佐野、川村と、浦和のクラブ・ワールドカップ参戦のためタイ戦は回避となった伊藤敦の3人が、ボランチの第4枠を争う構図になっていると見ていい。

 とはいえ、森保一監督は必ずしも本職のボランチだけを候補者と位置付けているわけではない。これまでも、代表ではトップ下をメインにしている鎌田大地(ラツィオ)をボランチやインサイドハーフで起用することがあり、ユーリティリティな人材もOKというスタンスなのだ。

 その観点で言うと、シント=トロイデンでボランチを主戦場にしている伊藤涼は格好の人材。アルビレックス新潟時代はトップ下で数多くの得点を奪っており、攻撃能力の高さは折り紙付き。ボランチとしてもベルギーで戦っていけるだけの守備力や強度を備えつつある。

 彼と同じベルギーで活躍中の川辺駿(スタンダール・リエージュ)も同じ枠組みに入ってくる。そういった面々を含め、ボランチ第4枠をどうするのか。そこは目下、指揮官にとっての重要テーマと言っていい。


攻守両面での安定感はマスト


 おそらくタイ戦は、田中と佐野のコンビでスタートするだろう。その場合、佐野は武器であるボール回収力、守備から攻撃への切り替えの速さ、縦への攻撃意識をしっかりと示さなければならない。さらには攻撃の組み立てや効果的なパス出しも求められてくる。

 難易度は高いが、森保監督を唸らせるパフォーマンスを見せられれば、アジアカップ行きに大きく近づく。千載一遇のチャンスをモノにできるかどうか見ものだ。

 そんな佐野に待ったをかけようとしているのが、6月シリーズ中に離脱した川村。「あの時のことが悔しくて、その後は代表の試合はまったく見てません」と自チームでのプレーに集中していたレフティは、満を持して代表に復帰。「ボックス・トゥ・ボックスのところを評価している」と森保監督から声をかけられ、目の色を変えているのだ。

「6月頃は思い詰めてしまっていたというか、真っ直ぐになりすぎていた。広島のスキッベ監督から『もっと楽しむマインドを持て』と言われて、半年間やってきました」と言う川村は、以前とは明らかに精神状態が違う様子だ。

 タイ戦は出番が訪れるとしても途中からと見られるが、チャレンジャー精神を押し出すことで希望が見えてくるかもしれない。川村のサイズと推進力、決定力は確かに代表に欲しい部分。その底力を遺憾なく発揮してほしい。

 伊藤涼に関しても、出番があるとしたら途中からだろう。今回の陣容を見るとトップ下か2列目で使われそうだが、ボランチでも戦えるところを示す必要がある。短い調整時間を最大限に活かして、チームにフィットするところから始めたい。

 ボランチ第4枠の候補者たちを森保監督がどう選ぶのか。1つの重要な判断材料となるのは、「遠藤か守田にアクシデントが起きた時に戦力になる選手」ということだろう。

 となれば、攻守両面での安定感はマストだし、国際舞台でも動じない強靭なメンタリティも求められてくる。タイ戦で佐野と川村、伊藤涼がピッチに立つのであれば、そういった要素もしっかりチェックすべきだろう。

 タイ相手に余裕を持ってプレーできないということになれば、アジアカップ本番で韓国やイラン、サウジアラビアといった強豪相手に戦えないということになってしまう。そういった評価にならないように、とにかく自分本来の力を出し切ること。彼らにはそこを強く求めたいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)




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