◆明治安田生命J1リーグ▽第8節 鹿島1―5神戸(15日・カシマ)
【鹿島担当・内田知宏】鹿島がホームで28年ぶりに5失点大敗を喫した。ブーイングが響き、キャプテンマークを巻いた鈴木優磨がゴール裏のサポーターと強い口調で言葉を交わした。柏戦に続く、内容、結果ともに伴わないサッカーで敗戦。リーグ戦は4連敗、順位は15位まで下降した。クラブの象徴的存在であるジーコ氏が、今季初めてスタジアムに訪れた試合という側面もショックを増幅させる。セットプレー、ロスタイム、立ち上がりなど要所で神戸が上を行った。
長い話し合いを終えて、鹿島で強化責任者を務める吉岡宗重フットボールダイレクターが、報道陣の前に姿を見せたのは、試合終了から2時間以上が経過した頃だった。迷いはなかった。自ら「きっと一番知りたいのは、監督のことですよね」と切り出し、「現時点で監督を代えることは考えていない」と明言。決断に至った理由は3点と受け止められた。
まずは、サッカーの方向性。クラブが思い描くのは、海外流出などで選手が入れ替わっても、勝ち切れる土台(戦術)を作ること。試合で主導権を握りたいという狙いが優先としてある。岩政監督が実行しているか。そして、選手たちがついてきているか。ここが判断の最重要ポイントになる。吉岡FDは監督とのミーティング、練習からもチャレンジしていることが感じ取れるという。
「これまで話してくる中で、私と岩政監督の中での考えている方向性は非常に近いものがあります。その方向性に向かってやっていけば自ずと良くなっていきます。ただ、選手、コーチングスタッフの発揮率をもっとあげていかなきゃいけないとも思っています」
「選手との関係?そこは問題ないと思います」(吉岡FD)
チームを積み上げていくベースは崩れていない。次の視点は結果が出ない原因、分析になる。手の打ちようがなければ、去就問題を考えなければいけない。吉岡FDは2つの課題を口にする。
「最後のクローズのところで、どのように守るのか、攻めるのかというところで、チーム全体で意思統一ができていなかった。そこは大きな課題だと思っている。監督と話し合っている中で改善はできるとは思っています」
「攻撃面の崩しで、どこにスペースを作るか、使うか。そこはまだまだ改善の余地がある。(練習で監督は)言葉には出している。指導の中では出ているんですが、まだ習慣化(体に染みつくの意味)されていない。本当にやりたいサッカー、落とし込みたいサッカーをスタッフと一緒にやっていく必要があるかなと思います。どのタイミングでスペースを作って、どう生かすのか。整理されてくると必ず改善すると思っている」
最後は、岩政監督とのコミュニケーションが密に行われているか。
「あくまでも監督は監督。私は監督の評価をしなきゃいけない立場。監督からすれば、耳が痛くなるようなことも言っている。上で見て感じていることは言わせてもらっている。話していく中で岩政監督も、現役時代は自分の考えを相手に伝えることがすごく上手な選手だったが、色んな経験をしてきて、指導者をやる中で、すごく色んな意見を聞くようになっていると感じる。岩政監督もトライしようとしてくれている」
鹿島は直近7シーズンで5人の監督が就任した。交代理由は様々だが、目指すサッカーの方向性の違い、選手との関係、クラブと監督の関係悪化など、積み上げていく上で致命的とも言える事情があった。クラブの去就判断基準に大きな変化はなく、チーム状況が吉岡FDの説明通りであれば合理性がある。結果がすべてだが、結果を出すためのアプローチはまだできる状況。これが、クラブの判断だと受け止めた。
◆【番記者の視点】鹿島の岩政大樹監督続投判断をどう受け止める? 強化責任者の言葉から読み解く(報知)