「ESPN」のアビ・ナラッパト氏は森保監督の手腕を高く評価
カタールで開催されるアジアカップのメインメディアセンターには1月10日、各国から数多くのメディアが集まり始めた。その中で、メディアエキスパートとして日本と韓国を担当するインド出身のアビ・ナラッパト氏は、かつてスポーツ専門局「ESPN」シンガポール版の編集者として、そして現在は大会組織委員会のメンバーとして日本サッカーを長年見続けている。
アビ氏は「1990年後半からは、イタリアのペルージャやASローマで活躍しているナカタ(中田英寿)さんのファンでした」とにこやかに話す。2001年に日韓両国で開催されたコンフェデレーションズカップでも日本を応援し、「自分が一番好きなチームはブラジルだが、アジアで最も好きなチームは日本」と言う。
日本とブラジルの関係についても知識は豊富で、Jリーグがスタートしたところからいかにジーコが日本サッカーに貢献したかを鹿島、日本代表の両面について滔々(とうとう)と語る。2004年に中国で行われたアジアカップでいかにジーコ監督率いる日本代表が優勝までたどり着いたかを熱く語り、「あれはアジアカップの歴史の中でもベストな大会の1つだった」としみじみと振り返った。
また、小野伸二さんの引退にも触れ、昔の日本代表を懐かしがりつつ、現在の日本代表についての見解も披露した。
「現在の日本代表について語るのなら、最初に森保一監督について話をしなければならないでしょう。彼は日本代表のすべての選手の長所と弱点を知っています。日本の中で長く指導者を続けていたおかげでしょう。森保監督は本当に素晴らしいし、とても戦略的。2022年のカタール・ワールドカップ(W杯)ではコスタリカ戦こそ上手くいかなかったけれど、ドイツ戦とスペイン戦は見事だったし、ベスト16のクロアチア戦も得点こそ奪えなかったけれど、日本のほうがいいチームでした」
続いて選手にも言及する。
「日本代表の強さで一番が監督とすれば、二番目にはいい選手が揃っていることです。日本代表にはオールラウンドでタレントのあるプレーヤーがいます。伊東純也(スタッド・ランス)、三笘薫(ブライトン)、久保建英(レアル・ソシエダ)、堂安律(フライブルク)、浅野(拓磨/ボーフム)はまだいいプレーを見せるし、南野拓実(ASモナコ)もいいフォームを取り戻しました。守備で言えば冨安健洋(アーセナル)もいますし、現在はカタールで活躍している谷口彰悟(アル・ラーヤン)もいいと思います。板倉滉(ボルシアMG)もいますしね。このような選手たちを戦略的な監督がまとめますから、この大会で躍進すると思います」
アビ氏が考える日本代表史上最高の「9番」は高原直泰氏
そして、アビ氏は上田綺世(フェイエノールト)について力説する。
「上田はいいセンターフォワードで、日本の次のビッグ・センターフォワードになるでしょう。日本は長くセンターフォワードの少なさに苦しんできました。私は上田が大迫勇也(ヴィッセル神戸)よりもいいセンターフォワードになると思っています」
現在の日本代表の弱点は何か。そう尋ねると、「9番(センターフォワード)」だと即答する。
「最近の日本の親善試合やW杯予選を見ていても、多くの得点は9番ではなく、プレーメーカーがもたらしています。例えばイランやオーストラリアのようにフィジカルが強く守備的なチームに勝つためには、そんな試合でも得点してくれる9番が必要です。中盤の選手が押さえ込まれた時、ロングボールを入れればハーフ・チャンスを作れるセンターフォワードが大事なのです」
アビ氏の考える、過去の日本代表で一番良かった「9番」は誰か。
「高原直泰さんこそが9番です。彼がいなくなったあと、日本代表は9番に苦しんできました。本田(圭佑)さんはどこでもプレーできるのでFWに起用したりしていましたし、2011年のアジアカップでは前田(遼一)さんがセンターフォワードで、本田さんは10番の位置でスタートするけれどFWとしてもプレーしました。今回は2011年よりもいいチームです。今こそ日本代表には9番が必要です」。
そして、「この大会で上田が日本の9番として定着する可能性があると思います」と上田への期待を再び口にし、日本代表の分析を終えた。上田にこの出来事を話すと、「できることを精一杯頑張ります」と、上田らしい謙虚な返事が返ってきた。
果たして、アビ氏の希望どおり上田が活躍できるのか、アジアカップの注目点の1つだと言えるだろう。
(森雅史 / Masafumi Mori)
◆海外専門家が見た日本代表 前回優勝の2011年より「いいチーム」の弱点に挙げたのは?【現地発】(FOOTBALLZONE)