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2024年10月19日土曜日

◆「内田篤人のようだ」J1鹿島がホレた“超攻撃型SB”濃野公人22歳の原点「ケガ離脱も…“DFなのに9ゴール”は森保監督も無視できない?」(Number)






「どのゴールも邪念が一切ありませんでした。『チャンスだ』と思った瞬間にゾーンに入って、歓声も聞こえなくなる。ボールが来て、トラップして、シュートまで何も考えていないんです。ゴールネットに吸い込まれた瞬間に『あ、入った』と思って、そこから歓声が聞こえてくる感覚です」


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◆「内田篤人のようだ」J1鹿島がホレた“超攻撃型SB”濃野公人22歳の原点「ケガ離脱も…“DFなのに9ゴール”は森保監督も無視できない?」(Number)







 2026年北中米W杯のアジア最終予選は、早くも4試合が終了した。直近のホームでのオーストラリア戦はドローに終わったが、三笘薫や堂安律、伊東純也らアタッカーをウィングバックに配置した「3バック」が機能し、4試合で15ゴールを奪った。来年の6月まで続く最終予選、そして本大会に向けて、本稿では今後の日本代表に推したい2人のJリーガーを紹介する。【全2回の2回目/広島・中野就斗(24歳)編も公開中】

 メンバーの顔ぶれに大きな変化がない中、W杯アジア最終予選では192cmの望月ヘンリー海輝と187cm関根大輝の若手サイドバックの2人が初選出された。いずれもセンターバック、ウィングバックのオプションを持ち、「超攻撃型」と呼ばれる3バックシステムの進化と熟成、4バックとの併用を見据えた人選と言えるだろう。

 前編では、望月や関根に続く存在として、広島・中野就斗(24歳)を紹介したが、彼らがそろって“意識する選手”として名前をあげたのが、鹿島アントラーズのルーキー濃野のうの公人きみと(22歳)だった。

「1年目からリーグやチームにアジャストしているし、驚異的なペースで得点を決めている。攻撃力とサッカーIQはずば抜けている」(中野)

「一人でもいけるし、ワンツーで中に入っていくのも上手い。もともとアタッカーの選手なのか、シュートがうますぎる。頭もいいし、あの能力は俺にはないですね」(関根)


無念のケガ離脱も…驚異の9ゴール


 センターバック出身の望月や関根、中野を“守備のユーティリティー”とするなら、濃野は“攻撃のユーティリティー”とでも言おうか。サイドバックを主戦場としながらも、今季はすでに驚異の9ゴールをマーク。9月28日のJ1第32節の湘南ベルマーレ戦で2ゴールを決めた後に右膝外側半月板を損傷し、無念の離脱を強いられてしまったが、飛躍のシーズンとの見方に変わりはない。

「小学校時代から身長が小さいほうだったので、ポジショニングをすごく重視してきました。福岡のバルサアカデミー(FCバルセロナが全世界で展開する公式サッカースクール)にも通っていて、そこで教えてもらった“相手に捕まらないポジション”を取り続けて、どうやって勝負を仕掛けるか、ずっと考えていましたね」

 身体の小ささを頭で補っていた濃野少年が大きく飛躍したのは、2学年上の兄を追って進学した大津高での時間だった。高校3年間で身長が10cm以上伸びたことでフィジカルと高さを生かしたプレーも習得。FW、トップ下、左サイドハーフと攻撃的なポジションをこなし、高3時は背番号10を背負った。

 裏への抜け出しやポストプレーの質は当時から高く、中盤でプレーしてもカットインから精度の高いシュートやクロスボールを放ち、オフザボールの立ち振る舞いを見れば「全体が見えている頭の良い選手」であることはすぐにわかった。


鹿島スカウト「内田篤人を彷彿とさせる」


 関西学院大に進学すると、大学2年の途中で右サイドハーフが主戦場に。3年生の頭から右サイドバックに定着した。

「(サイドバックに転向して)一気に視野が広がったというか、全体を見渡せるようになった。どこにスペースがあって、どう前の選手と関わればいいかを考えられるようになったし、より前のスペースが出来て、自分のスピードやハードワークが生きるようになった」

 “天職”を見つけた濃野のサッカーセンスはさらに開花した。「内田篤人を彷彿とさせる」と鹿島の椎本邦一スカウトに目をつけられ、プロ入り。1年目から不動の右サイドバックとしてフル稼働していた。

 今季J1であげた9ゴールで特筆すべきは、すべて試合の流れの中から決めた得点だということにある。クロスボールに合わせて決める。クロスボールの折り返しを決める。ペナルティーエリアに侵入してスルーパスを受けて決める。味方のシュートのこぼれ球を押し込む。強烈なミドルシュートを決める。内訳は右足7、左足1、ヘッド1と、いずれも異なるシチュエーションからネットを揺らしているのだ。

「どのゴールも邪念が一切ありませんでした。『チャンスだ』と思った瞬間にゾーンに入って、歓声も聞こえなくなる。ボールが来て、トラップして、シュートまで何も考えていないんです。ゴールネットに吸い込まれた瞬間に『あ、入った』と思って、そこから歓声が聞こえてくる感覚です」

 今年4月の京都サンガ戦で決めたプロ初ゴールで掴んだ感覚を、偶然で終わらせなかったのは濃野が“考える力”を積み重ねてきたからに他ならない。意図的にゾーンに入る術を自身に植え付けたことが、ゴール量産につながっている。

「これまで年代別日本代表すら一切引っかかってこなかったのですが、A代表は目指していました。ずっと憧れだった代表の青いユニフォームが今こうして明確な目標になって、だんだん近づいてきているという実感はあります」


“三笘の突破”も“堂安のカットイン”もできないけど…


 一方で、自身の課題も明確に感じている。

「アジア最終予選の2試合(中国戦とバーレーン戦)を見ても、ウィングバックは生粋のサイドバックを置くのではなく、三笘薫選手、堂安律選手、伊東純也選手というアグレッシブな選手を起用しています。両ウィングバックが前に置かれた状態で、そこから引かない。仮にカウンターを受けても3バックと2ボランチで対応している。ボールを握り、ハーフコートに押し込んでサッカーをすることを前提にメンバーを決めて戦っているのが今の日本代表だと思います。今の僕は彼らみたいなドリブルは出来ないし、左利きではないのでカットインもない。だからこそ、『サイドバックなのに点が取れる』というスタイルではなく、より攻撃での個の打開力に特化したプレーをしないといけない。

 サイドバックしかできない選手、守備か攻撃かのどちらかだけの選手も選ばれないと思っているので、守備面でも1対1の球際や空中戦の競り合いなど、局面での強度をもっと上げていかないといけないと感じています」

 前述した通り、戦線離脱は痛手だが、ルーキーイヤーでフル稼働してきたことを考えれば、ここはしっかりと自分の身体に向き合い、今後の飛躍につなげる充電期間にしたいところだ。

「森保監督が考えているサイドバック像は、フィジカル的に強く、守備力の高い選手に優先度を置いているように感じています。自分は(3バックの)センターバックでもプレーできますが、まだ望月選手、関根選手、中野選手のような“守備のユーティリティー性”は足りていない。そこの課題をクリアしながら、自分の武器である攻撃力をより高めていきたい。自分は“大器晩成型”だと思っているので(笑)」

 すでに代表入りを果たした望月と関根に、それに続こうとする中野と濃野。複数のポジションをこなし、サイズがあり、高いユーティリティー性という共通点を持つ彼らが、そう遠くない未来に、日本のサイドを活性化する――それが現実となった時、日本代表はまた新しいステージに進むかもしれない。

 彼らが指揮官の頭を悩ます存在に成長できれば、北中米W杯でのベスト8突破も現実味が帯びていくはずだ。