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2024年10月12日土曜日

◆鹿島の監督交代に「またか」が本音。でも中田浩二は強化責任者として逸材だと思っていた【OB名良橋晃の見解】(サッカーダイジェスト)






 言いたいことはたくさんあると思いますけど、クラブだけではなく、ファン・サポーターも、みんなで我慢することが大切です。勝利をもたらしてくれる選手ファーストの心持ちで、またみんなが笑顔になれる日が来ることを願っています。僕も、自分にできることがあるなら、大事にしているクラブなので、最大限サポートしていくつもりです。


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◆鹿島の監督交代に「またか」が本音。でも中田浩二は強化責任者として逸材だと思っていた【OB名良橋晃の見解】(サッカーダイジェスト)








チームを立て直す兆しが見えた矢先なだけに驚きが大きい


 J1の鹿島アントラーズは10月6日、ランコ・ポポヴィッチ監督とミラン・ミリッチコーチの契約解除、強化責任者を務めていた吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)の退任を発表。9日には中後雅喜コーチが新監督に就任、プログループマネージャーの中田浩二氏が新FDとして強化部のトップに就いた。また、本山雅志アカデミースカウトとクラブOBの羽田憲司氏のコーチ就任も合わせてリリースされている。

 大きな岐路に立つ鹿島に、クラブOBは何を思うのか。1997年から2006年まで所属した間に数多くのタイトル獲得に貢献した元日本代表の名良橋晃氏が、古巣への本音を語ってくれた。


――◆――◆――


 ポポヴィッチ監督とミリッチコーチの契約解除、吉岡FDの退任を知って、率直にめちゃくちゃ衝撃を受けました。確かに26節から6試合勝利なしと、スタメンを固定してしまった弊害が終盤戦に出て結果が伴わなくなっていましたが、リリース前日の10月5日に行なわれたJ1リーグ33節のアルビレックス新潟戦では4-0で勝利。練習でもトライしていた3バックのシステムで久しぶりの白星を掴み、チームを立て直せる兆しが見えた矢先だっただけに、驚きが大きかったです。

 新たな3-4-2-1のシステムと、従来の4バックを併用すれば、今後への期待感も膨らんでいました。前半戦は2位と首位争いに食い込んでいましたし、夏に佐野海舟選手が欧州移籍したのも後半戦に苦戦した一因かもしれませんが、それは海外挑戦が活発化した現代では鹿島に限った話ではありません。

 むしろ、知念慶選手のボランチ抜擢や大卒ルーキーである濃野公人選手の台頭、名古新太郎選手や師岡柊生選手の活かし方も評価すれば、ポポヴィッチ監督の貢献は大きかったのではないでしょうか。

 ただ、これはあくまで個人的な見解なので、クラブとしてはポポヴィッチ体制を継続した場合の明るい未来が見えなかったのかもしれません。契約解除のタイミングとしても、インターナショナルマッチウィークでリーグが一時中断する今しかなかったんだと思います。

 クラブ上層部の決断に、内部の人間ではない自分は何とも言えませんが...鹿島アントラーズが大好きなだけに、「またか」という本音は正直、否めなかったです。

 2020年のザーゴ監督から始まり、相馬直樹監督、レネ・ヴァイラー監督、岩政大樹監督、そしてポポヴィッチ監督と、結果が伴わないと監督交代が繰り返される近年は、鹿島を応援する僕としても歯痒い気持ちが続いていました。


中田浩二には人を惹きつける力がある


 また今回はポポヴィッチ監督の契約解除だけではなく、吉岡FDも同日に退任ということは、ふたりは大分トリニータでも一緒だったので、吉岡FDなりに今シーズンへの覚悟もあったのかもしれません。今季からは中田浩二も強化部に関わってくれていましたけど、以前は吉岡FDがひとりで強化を担当していた時もあり、正直、負担が大きかったのでは? と個人的には感じていました。

 監督と強化責任者が同日にクラブを去る決断。これにはチームを立て直して、もう一度新しい鹿島アントラーズを作っていくんだ、という強い覚悟を感じます。そしてフットボールダイレクターの後任は中田浩二。いずれ強化部のトップに就くであろう逸材だと感じていたので、ついにこの日が来たかと僕は思っています。

 中田浩二には人を惹きつける力があります。現役時代から先輩・後輩問わずチームをまとめる力があり、コミュニケーションも上手。ピッチ内外で視野がすごく広いんですよね。

 たとえば、食事の時に足りないものに気づいて持ってくるような、気配りの人です。他の人には気づかない部分が見えていて、気が利くので周囲からの信頼も厚いですし、だからこそ「中田浩二のために頑張りたい」という想いで帰ってくるOBも出てくる。

 思い起こされるのは、鹿島で長く強化責任者を務めていた鈴木満さんの姿です。練習を見ているなかで、サブメンバーや調子を落としている選手に声をかけるタイミングが絶妙でした。

 満さんからちょっとしたコミュニケーションがあるだけで、選手は「見られているんだ」と思い、モチベーションが上がる。サッカーに限らず、プライベートの話でもいいんです。よく会話してくれる満さんが、選手にとってはありがたい存在でした。

 満さんからのコミュニケーションがあったおかげで、サブメンバーがモチベーションを落とさずにキープできると、それは分厚い選手層の維持にもつながっていました。プロだとしても選手はロボットではないので、クラブにおいては人と人が心で向き合うのが最も大事。そうして求心力が生まれ、チームとしての基盤が構築されていくと思うんです。

 多くのタイトル獲得に貢献した満さんが、欠かさなかった選手へのコミュニケーションは、中田浩二にも絶対できると思っています。彼には人の心を惹きつける力がありますし、勝つために組織の結束力も大事にできる男。中田浩二を先頭に、鹿島アントラーズが再び良い方向に向かってくれるだろうと、僕は信じています。


改善に向かうためのキーポイントは「我慢」


 鹿島がこれから改善に向かっていくためのキーポイントは「我慢」だと思います。現代サッカーでは相手の長所を消す戦術も基本となっているなかで、結果が伴わなくなるとすぐ監督交代を繰り返すようでは、指揮官が掲げる理想のサッカーも構築されにくい。戦術浸透が難しくなれば選手間の共通理解も希薄になるので、そうなると当然、優勝も厳しくなるでしょう。

 たとえば、アンジェ・ポステコグルー監督(現トッテナム)が横浜F・マリノスをJ1優勝に導いた2019年も就任2年目で、1年目はリーグ12位と結果が出ていません。今、J1で首位のサンフレッチェ広島でも、ミヒャエル・スキッベ監督は就任3年目です。

 現代サッカーではある程度、監督の戦術を浸透させるために我慢の期間は必要で、指揮官が理想とするサッカーが構築されてきたら、相手の対策を上回る次の手段も作っていく。そうして、ようやく花開いたチームがタイトルを獲得できるのではないでしょうか。

 なので、中後新監督、本山&羽田新コーチが就いて再出発となりますが、これからは我慢の時間を与えてほしいと、僕は願っています。

 強いアントラーズを取り戻すためには、あとはアカデミーの充実も必要だと思います。活躍した選手がすぐに海外移籍してしまう今のJリーグでは、良い素材を育て、どんどんトップチームに上げていくのも大切です。

 もちろん、才能ある若手を発掘するスカウトも重要ですし、好タレントが「鹿島でプレーしたい!」と思ってもらえるクラブにもならなければなりません。

 若手に憧れてもらうクラブになるためにも、ファン・サポーターのためにも、やっぱり勝利は必要です。2018年のACL優勝、国内では2016年のJ1&天皇杯制覇を最後にタイトルから遠ざかっていることを考えれば、最近はチャンピオンとしての喜びを味わっているサポーターが少なく、勝つゲームをもっとたくさん見たいと思っているはずです。

 でも、忘れてはならないのは、勝利というのはチームを強化した先にあるもので、そこの順番を疎かにしてしまうと、今の良くない流れをズルズルと引きずってしまうリスクがあります。

 言いたいことはたくさんあると思いますけど、クラブだけではなく、ファン・サポーターも、みんなで我慢することが大切です。勝利をもたらしてくれる選手ファーストの心持ちで、またみんなが笑顔になれる日が来ることを願っています。僕も、自分にできることがあるなら、大事にしているクラブなので、最大限サポートしていくつもりです。

構成●志水麗鑑(フリーライター)

◆「新たなスタートを切ります」鹿島の小泉社長が中長期的な強化戦略に言及「勝利を追求する伝統を守り、チームを成長、発展させていく」(サッカーダイジェスト)






「クラブは本日から、中後雅喜監督、本山雅志コーチ、羽田憲司コーチ、強化責任者に中田浩二フットボールダイレクター(FD)という体制で、新たなスタートを切ります。まずは、今シーズンのリーグ戦残り6試合をクラブ一丸となって戦い、勝利のため、選手の力を最大限発揮させることに集中していきます。」


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◆「新たなスタートを切ります」鹿島の小泉社長が中長期的な強化戦略に言及「勝利を追求する伝統を守り、チームを成長、発展させていく」(サッカーダイジェスト)






「クラブのトップとしてこの結果を重く受け止めています」


 鹿島アントラーズの“新体制”が明らかになった。

 10月6日にランコ・ポポヴィッチ監督とミラン・ミリッチコーチとの契約解除、吉岡宗重フットボールダイレクターの退任を伝えていたクラブは9日、中後雅喜コーチの監督就任、中田浩二プログループマネージャーのフットボールダイレクター就任、本山雅志アカデミースカウトとクラブOBの羽田憲司氏のトップチームコーチ就任をあわせて発表した。

 そのなかで、中田新FDのリリースで小泉文明代表取締役社長のコメントも掲載。前指揮官らへの感謝とともに、「クラブのトップとしてこの結果を重く受け止めています」とし、以下のように続ける。

「クラブは本日から、中後雅喜監督、本山雅志コーチ、羽田憲司コーチ、強化責任者に中田浩二フットボールダイレクター(FD)という体制で、新たなスタートを切ります。まずは、今シーズンのリーグ戦残り6試合をクラブ一丸となって戦い、勝利のため、選手の力を最大限発揮させることに集中していきます。

 また、中長期的な視点に立った強化戦略が求められていることも理解しており、強化部門の先頭に立つ中田FDをしっかりとサポートするとともに、勝利を追求するという伝統を守りながら、チームを成長、発展させていく必要があります。クラブがこれまで大切にしてきた結束力を選手、スタッフ、フロントが協力して示し、これからもファン、サポーターの皆様とともに戦ってまいります」

 OBを集結させて再出発を図る鹿島。“常勝軍団”の復活はなるか。現在リーグでは4位。次節は代表ウィークを挟み、19日にホームでアビスパ福岡と対戦する。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部

◆【ポポヴィッチ監督&吉岡宗重FD解任。名門・鹿島に走った激震の内幕】(サッカー批評)






 選手たちが今季終盤の戦いに集中できるような環境作りを進めていくことは、今の鹿島にとって最重要テーマ。そのうえで、彼らは2025年以降のベストな陣容も考えていくことが肝要だ。中後監督が継続するのか、OBの鬼木達監督(現川崎)やパリ五輪代表を率いた大岩剛監督らを招聘するのかは未知数だが、監督をコロコロ変えていたらチームの強固な基盤は築けない。過去5年間で5人も監督が代わったことを踏まえ、彼らは同じことを繰り返してはいけないのだ。

◆【ポポヴィッチ監督&吉岡宗重FD解任。名門・鹿島に走った激震の内幕】(サッカー批評)

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新潟戦4-0圧勝翌日の電撃発表。選手から出た「相手に戦い方を研究されている」と、発表された新人事(サッカー批評)







 5日のJ1第33節・アルビレックス新潟戦で4-0と圧勝し、リーグ7試合ぶりの白星を飾った鹿島アントラーズ。その翌6日の夕方、「ランコ・ポポヴィッチ監督とミラン・ミリッチ・コーチを解任し、吉岡宗重フットボールダイレクター(FD)も双方合意のもと退任することになった」という公式リリースが一斉に流れ、日本サッカー界に激震が走った。

 33試合を終えた時点で鹿島は勝ち点53の4位。首位を走るサンフレッチェ広島とは13ポイント差で、残り6という試合数を考えると、リーグタイトル獲得はかなり険しくなった。

 すでにYBCルヴァンカップ、天皇杯を落としている彼らにとって、J1リーグ戦は最後の砦だった。それも難しくなったことで、「国内タイトル8年無冠」が現実になりつつある。今季就任したポポヴィッチ監督と吉岡FDに求められたのはタイトルという結果だけ。その目標達成が困難になり、一気に責任問題が表面化したのだろう。

 今季のここまでの戦いを振り返ってみると、序盤は柴崎岳の長期離脱というアクシデントに見舞われながら、知念慶のボランチコンバートという新たな試みが成功。大卒新人の濃野公人のブレイク、昨季まで出たり出なかったりだった名古新太郎、師岡柊生らの成長も追い風になり、19試合終了時点では勝ち点37の2位につけていた。

 トップの町田ゼルビアとは2ポイント差。折り返しの段階では十分に優勝を狙える位置にいた。吉岡FDも「2位というのは今後の伸びしろを含めてまずまずというところ。監督が変わり、新体制でスタートしたチームとしては悪くない位置にいると考えている」と前向きに語っていた。

「攻撃面では(鈴木)優磨1人だけに頼ることなく、いろんな選手が関わってゴールできる集団になってきた。一方でゲームコントロールという課題に直面した。勝てる試合を勝ち切れないのはチームとして大きな課題」とも指摘。勝負強さを磨き上げていけば、後半戦により一層、勝ち点を上積みして、最終的には頂点に立てるという目算がある様子だった。


■選手から出た「相手に戦い方を研究されている」


 ところが、佐野海舟(マインツ)が移籍し、8月に知念が約1か月間離脱したことで、中盤の守備力が目に見えて低下した。加えて、鈴木優磨に代わる得点源として期待されていたチャヴリッチも長期離脱。8月以降の鹿島は同じような陣容が続き、代わり映えのしないゲームを繰り返すことになった。

 早川、濃野、植田直通、関川郁万、安西幸輝の守備陣は固定で、連戦になると疲労困憊に。「相手に戦い方を研究されている」と多くの選手が口を揃えたように、濃野も前半戦のようにゴールが奪えなくなった。鈴木優磨へのマークも厳しくなり、得点の形を作るのが容易ではなくなった。

 それ以外にも、選手層の薄さ、チャヴリッチとターレス・ブレ―ネル以外の外国人が適応の遅れ、柴崎岳の不調といった問題点も散見され、ポポヴィッチ監督も有効な策を見いだせないまま、時間だけが過ぎていく形になってしまった。

 彼らにとってダメージが大きかったのは、J2降格危機に瀕しているジュビロ磐田、湘南ベルマーレ、今季昇格組の東京ヴェルディに苦杯を喫し、苦境に瀕している浦和レッズや柏レイソルにもドローとポイントを稼げなかったこと。9月25日の天皇杯準々決勝では神戸戦に力の差を見せつけられ、0-3で完敗。これも指揮官解任・FD更迭の流れに拍車をかけたではないか。


■発表された新人事


 さらに追い打ちをかけるように、濃野が右ひざを負傷。今季絶望と見られる大ケガを負った。そこでポポヴィッチ監督は前日の新潟戦で鹿島伝統の4バックではなく3バックを採用。新たな活路を見出したと思われた。そんなタイミングだったからこそ、指揮官とFDの更迭というのはショッキング。多くの関係者やサポーターも「なぜ今なんだ」という疑問を抱いたことだろう。クラブ側にその説明責任があるのは間違いない。

 ただ、いずれにしても、今の鹿島はまだAFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場圏内の3位以内を狙える位置にいる。3位・町田との差は6で、12月8日に最終節に直接対決が残っていることを考えると、まだまだ目標が完全になくなったわけではない。

 クラブは10月の代表ウイーク期間中に新たな人事を発表。中田浩二強化担当の新FD抜擢、中後雅喜コーチの監督就任、本山雅志アカデミースカウトと羽田憲司・パリ五輪代表コーチのコーチ就任が決まった。これが選手・サポーターの動揺を最小限にとどめる道筋になるのか。まずはそこに注目したいものである。

(取材・文/元川悦子)

(後編へつづく)


 10月の代表ウイークに突入し、7・8日にオフを取っている鹿島アントラーズ。9日からラスト6戦に向けて再始動する予定だったが、8日夜の時点でもまだ新体制の発表がなく、周囲をやきもきさせていた。

 一部メディアでは、中後雅喜コーチが暫定的に指揮を執り、中田浩二強化担当がFDに昇格するという報道が流れていたが、その方向で本決まりになった。9日朝には中後監督、中田FDの就任が正式発表され、さらに本山雅志・羽田憲司両コーチの入閣も明らかにされた。まさに圧倒的強さを誇った2000年代を知るOBをズラリと並べた人事ということになる。

「クラブは本日から中後雅喜監督、本山雅志コーチ、羽田憲司コーチ、強化責任者に中田浩二FDという体制で新たなスタートを切ります。まずは、今シーズンのリーグ戦残り6試合をクラブ一丸となって戦い、勝利のため、選手の力を最大限発揮させることに集中していきます。

 また、中長期的な視点に立った強化戦略が求められていることも理解しており、強化部門の先頭に立つ中田FDをしっかりとサポートするとともに、勝利を追求するという伝統を守りながら、チームを成長、発展させていく必要があります」と小泉文明社長はコメントを出しているが、本当に長期的ビジョンで強化体制をテコ入れできるのか。まさに鹿島は大きな岐路に立たされていると言っていい。


■求められる現場の陣容の整理と修正


 ただ、鹿島やセレッソ大阪、松本山雅など複数クラブで指導し、パリ五輪代表でも修羅場をくぐってきた羽田コーチ以外はみな経験不足なのは紛れもない事実だ。

 まず中後コーチは昨年、JFA公認S級ライセンス講習会を受講したばかり。2018年から東京ヴェルディのアカデミーで指導はしていたものの、トップチームの指導に携わるのは今年が初めて。そういう人材にいきなり指揮官を任せるのは「ハードルが高い」と見る向きがあるのも当然だ。

 鹿島は2022年にもレネ・ヴァイラー監督(現セルヴェット)更迭直後、プロチームを率いたことがなかった岩政大樹監督(前ハノイFC)の昇格に踏み切っている。その結末はご存じの通り、わずか1年半での事実上の解任。最終順位は5位と傍目から見ると悪くなかったが、岩政監督は無冠の責任を追うことになった。

 この時、「OBの使い捨てはやめてほしい」といった声がSNS上でも数多く散見されたが、中後コーチが同じ道を辿るようなことがあってはならない。いかにして現場の陣容を整え、修正を図っていくのか。まだAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を目指せる位置にいる今だからこそ、彼に託すもの、目標設定を今のうちに明確にしておく必要がある。

 中田FDにしても、2014年限りで現役を退いた後、クラブ・リレーションズ・オフィサー(CRO)としてスポンサー、サポーター、行政機関などとクラブをつなぐ役割を担ってきた。本人もビジネス・マネージメント領域に進むつもりで、筑波大学大学院で学んだほどだ。

 約10年間、現場に携わる意思はなかったようだが、吉岡宗重前FDに偏りがちだった強化部門のテコ入れ図るべきだと考えたクラブ側から昨年末に異動の話があり、本人も悩みに悩んだうえで受託した経緯がある。今季は強化担当として一歩を踏み出し、練習・試合に全て帯同し、チームの状態を逐一チェックしてきた。

 そういう意味では、ランコ・ポポヴィッチ監督就任後のチーム状態を誰よりもよく分かっている人材と言えるが、いかんせん強化担当経験が少ない。そこには一抹の不安がないとは言い切れない。昨夏、鹿島入りした石原正康氏、今年から加わった山本修斗氏とともに「組織力」で苦境を乗り切っていくべきだ。


■「鹿島の存在意義は勝利」


 選手たちが今季終盤の戦いに集中できるような環境作りを進めていくことは、今の鹿島にとって最重要テーマ。そのうえで、彼らは2025年以降のベストな陣容も考えていくことが肝要だ。中後監督が継続するのか、OBの鬼木達監督(現川崎)やパリ五輪代表を率いた大岩剛監督らを招聘するのかは未知数だが、監督をコロコロ変えていたらチームの強固な基盤は築けない。過去5年間で5人も監督が代わったことを踏まえ、彼らは同じことを繰り返してはいけないのだ。

 小泉文明社長は「鹿島の存在意義は勝利」としばしば語っているが、多くのサポーターからタイトルを求められ、それが叶わなければすぐに監督のクビを切るという悪循環を続ける限り、監督の引き受け手がなくなる恐れもある。クラブとしてこの先、どういう方向に進むべきなのかを今こそしっかりと考え、ビジョンを提示していくべきだ。

 とにかく、モヤモヤ感の続く現状をいち早く打破し、クリアな状態にすることを多くの人々が強く求めている。それを小泉社長らクラブ幹部には今一度、強く認識してほしい。

(取材・文/元川悦子)