大分戦ではチーム最年長ながらフル出場を果たした小笠原 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS,. INC
「疲れているから動けないわけではないし、サッカーができないわけでもない。もちろんそれでミスが出るわけでもない。そういう甘い考えなら試合に出なければいい。選手である以上はみんなが90分間出たいと思っているはずだし、俺はその欲がなくなったら終わりだと思う」
1日に行われた大分トリニータとの「Jリーグ・スカパー!ニューイヤーカップ」初戦を戦い終えた小笠原満男は静かに、しかし強い口調で語った。
1月中旬のチーム始動からフィジカル中心に鍛えてきた鹿島は、この大分戦が初めての対外試合。疲労のピークにある状況とボールを使った練習時間の短さからコンビネーション不足は仕方ないように思われた。ただ、安易な連係ミスで開始早々に先制点を献上していたのも事実。より高みを目指す小笠原は「もっと良いゲームをしたかった。まだまだ良くしなければいけない部分が多くて……。もっと試合の中でやらなきゃいけない。『疲れている』とは言っちゃいけないし、そういうことを言うのはありえない」と厳しい意見を口にした。
昨シーズン限りで同期加入の中田浩二が現役を引退。若手が多いチームをともに背中で引っ張ってきた盟友がピッチを離れ、小笠原自身も“勝者のメンタリティー”を継承する伝道師としての責任をさらに強く感じているではないだろうか。ピッチに立てば年齢は関係ない。どんな状況でも内容や結果を追い求め、決して言い訳はしてはならない。勝つための手段と考え方を伝えるために――。鹿島が“常勝軍団”でありつづけたポイントを伝えたいと、彼は日常の練習から行動で示してきた。
この日の試合終盤に印象的なシーンがあった。ユース所属でトップチームに帯同していた田中稔也が高い位置でドリブル突破を仕掛け、相手に奪われてカウンターを食らいそうになった瞬間、背番号40がボールを持った相手選手へ猛然とプレスを仕掛け、何ごともなかったかのようにピンチの芽を摘んだ。試合後、このプレーについて問うと、「誰か一人を責めるのではなくて、ミスは減らさなきゃいけないし、ミスがあってもチーム全体の問題だと思って誰かがカバーしなければいけない」と答えてくれた。
小笠原は以前もこう話している。
「若手の良さをどんどん引き出したいし、それが彼らの成長につながる。『俺がフォローしてやるから、どんどん積極的に仕掛けろ』って。同じことを何回も繰り返していたらダメだけど、やりながら仕掛けるタイミングを知ればいいし、そこもしっかり伝えていきたい。俺も若い頃はそうやって伸び伸びプレーさせてもらったから」
これもクラブに代々受け継がれてきた伝統の一つなのだろう。
鹿島はアジアカップの日本代表メンバーに柴崎岳、昌子源、植田直通の3選手が招集され、昨年のJリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞したカイオ、さらにトップ下で存在感を強める土居聖真など、若さと勢いがクローズアップされがちだ。だが、その一方で“常勝”を知る小笠原が伝えるべきことは、まだまだ少なくない。試合後の「もっと試合の中でやらなきゃいけない」というコメントには、チームとしても個人としても、もっとできたはずという自戒の念と向上心が込められていたようにも感じる。
大分戦ではチーム最年長ながら今シーズン初の対外試合でフル出場を果たしたが、試合出場に対するこだわりは誰よりも強い。公式戦はもちろん、練習試合でもフル出場し続けたいという。もちろんチームの勝利は意識するものの、どんな試合でも自分が出続けて結果を残したいと考えるのは、彼にとっては当然のことなのだろう。
今年4月で36歳になる。昨年はJ1新記録となるリーグ戦16シーズン連続得点を達成し、新シーズンはその記録更新も期待される。これも彼が残してきた偉大なる足跡だ。チームに勝利をもたらすために、そして再び鹿島を“常勝軍団”に押し上げるために。小笠原満男が自身にも周囲にも高い意識を求め続ける。
文=青山知雄
1日に行われた大分トリニータとの「Jリーグ・スカパー!ニューイヤーカップ」初戦を戦い終えた小笠原満男は静かに、しかし強い口調で語った。
1月中旬のチーム始動からフィジカル中心に鍛えてきた鹿島は、この大分戦が初めての対外試合。疲労のピークにある状況とボールを使った練習時間の短さからコンビネーション不足は仕方ないように思われた。ただ、安易な連係ミスで開始早々に先制点を献上していたのも事実。より高みを目指す小笠原は「もっと良いゲームをしたかった。まだまだ良くしなければいけない部分が多くて……。もっと試合の中でやらなきゃいけない。『疲れている』とは言っちゃいけないし、そういうことを言うのはありえない」と厳しい意見を口にした。
昨シーズン限りで同期加入の中田浩二が現役を引退。若手が多いチームをともに背中で引っ張ってきた盟友がピッチを離れ、小笠原自身も“勝者のメンタリティー”を継承する伝道師としての責任をさらに強く感じているではないだろうか。ピッチに立てば年齢は関係ない。どんな状況でも内容や結果を追い求め、決して言い訳はしてはならない。勝つための手段と考え方を伝えるために――。鹿島が“常勝軍団”でありつづけたポイントを伝えたいと、彼は日常の練習から行動で示してきた。
この日の試合終盤に印象的なシーンがあった。ユース所属でトップチームに帯同していた田中稔也が高い位置でドリブル突破を仕掛け、相手に奪われてカウンターを食らいそうになった瞬間、背番号40がボールを持った相手選手へ猛然とプレスを仕掛け、何ごともなかったかのようにピンチの芽を摘んだ。試合後、このプレーについて問うと、「誰か一人を責めるのではなくて、ミスは減らさなきゃいけないし、ミスがあってもチーム全体の問題だと思って誰かがカバーしなければいけない」と答えてくれた。
小笠原は以前もこう話している。
「若手の良さをどんどん引き出したいし、それが彼らの成長につながる。『俺がフォローしてやるから、どんどん積極的に仕掛けろ』って。同じことを何回も繰り返していたらダメだけど、やりながら仕掛けるタイミングを知ればいいし、そこもしっかり伝えていきたい。俺も若い頃はそうやって伸び伸びプレーさせてもらったから」
これもクラブに代々受け継がれてきた伝統の一つなのだろう。
鹿島はアジアカップの日本代表メンバーに柴崎岳、昌子源、植田直通の3選手が招集され、昨年のJリーグベストヤングプレーヤー賞を受賞したカイオ、さらにトップ下で存在感を強める土居聖真など、若さと勢いがクローズアップされがちだ。だが、その一方で“常勝”を知る小笠原が伝えるべきことは、まだまだ少なくない。試合後の「もっと試合の中でやらなきゃいけない」というコメントには、チームとしても個人としても、もっとできたはずという自戒の念と向上心が込められていたようにも感じる。
大分戦ではチーム最年長ながら今シーズン初の対外試合でフル出場を果たしたが、試合出場に対するこだわりは誰よりも強い。公式戦はもちろん、練習試合でもフル出場し続けたいという。もちろんチームの勝利は意識するものの、どんな試合でも自分が出続けて結果を残したいと考えるのは、彼にとっては当然のことなのだろう。
今年4月で36歳になる。昨年はJ1新記録となるリーグ戦16シーズン連続得点を達成し、新シーズンはその記録更新も期待される。これも彼が残してきた偉大なる足跡だ。チームに勝利をもたらすために、そして再び鹿島を“常勝軍団”に押し上げるために。小笠原満男が自身にも周囲にも高い意識を求め続ける。
文=青山知雄