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2017年2月5日日曜日

◆柴崎岳に待ち受けるスペイン2部の荒波とは?飛躍へのカギは「タフさ」への適応か(ゲキサカ)




 紆余曲折を経て、柴崎岳が戦う舞台はスペインの2部リーグに決まった。移籍市場の最終日にテネリフェへの加入が決定したのだ。

 世界に「シバサキ」の名を轟かせたのは、昨年12月に日本で行われたFIFAクラブ・ワールドカップ決勝のレアル・マドリー戦だった。鹿島アントラーズの背番号10を背負った柴崎は、2度もGKケイラー・ナバスの守るゴールを破り、欧州王者の脅威となった。

 あの試合から、1か月半あまり。柴崎はスペインに降り立った。今度は自身初となる欧州挑戦に向かったのである。24歳MFの“シンデレラ・ストーリー”を、スペインメディアはこぞって紹介した。

 入団会見でも柴崎への注目は見て取れた。数多くの日本メディアが足を運び、会見や初日の練習の模様はテレビで放送されたほどである。2部のクラブに加入した選手としては、異例の扱い。ツイッターでは、テネリフェのクラブ公式アカウントのフォロワー数が一気に5000人増え、それがまた話題を呼んだ。

 だが、スポーツディレクターのアロフォンソ・セラーノは“シバサキ狂想曲”に歯止めをかける。「影響は歓迎すべきものだよ。だが我々はサッカークラブなんだ。商業目的などはなく、ピッチ上での結果こそが求められる」。日本人選手獲得=マーケティング戦略という図式を、我々はいつまでも引きずっていてはいけない。

 柴崎に求められるのは、ピッチ上で結果を出すこと――。それ以上でも、それ以下でもないのだ。

 では、スペインの地で輝くために求められることとは何なのか? 日本人選手がスペインで挑戦する上で挙げられる課題を見ていくことにしよう。

■何よりも「タフさ」が求められるリーグ

 リーガ2部はスペインの中で最もタフなリーグだ。参戦するクラブは22チームで1部の20チームを上回り、全カテゴリーの中で最も多い。年間のリーグ戦は42試合。3~6位のチームはプレーオフに回り、ホーム&アウェー形式で戦った後、4試合を勝ち抜いたチームにようやく1部への扉が開かれる。

 上位6チームに1部昇格のチャンス(優勝・準優勝チームは自動昇格)が与えられることで、必然的に競争は熾烈になる。残留争いも含めて最終節まで大混戦、というケースも少なくなく、消化試合が少ない分、「タフさ」が求められる。

 実際、今シーズンも競争は激しい。現時点で昇格圏の3位カディスから10位レアル・オビエドまで、実に8チームが勝ち点5差の中にひしめき合っている。また4チームが降格するという厳しい条件で、13位アルコロコンから21位ミランデスまで9チームが勝ち点5差の間でしのぎを削っている。

 柴崎が克服していかなければならない課題は少なくない。スペイン2部という、Jリーグとは全く違ったサッカーのスタイルに慣れていかなければならないし、そもそも鹿島一筋の柴崎にとって今回が初めての移籍となるため、クラブが替わるという未経験の状況にも対応していかなければならない。

 AFCチャンピオンズリーグなどでタフさを求められる場面は何度もあったが、リーガ2部は移動も含めてまた別の種類のタフさが必要になる。移動、試合、帰還、回復、練習というルーティンに適応できなければ、いくら才能があっても100%のパフォーマンスを発揮することはできないからだ。

■言葉の壁とコミュニケーションの問題

 スペインに到着した後、柴崎の地元メディアとのやり取りは、代理人を介して行われた。入団会見の場では「少しだけ話せます」とスペイン語を披露して周囲に好印象を与えたが、本当の戦いはここから始まる。

 エイバルで主力となったMF乾貴士は、移籍1年目に通訳を付けて成功を収めた。練習中はもちろん、ピッチ外でもホセ・ルイス・メンディリバル監督の指示を通訳に確認し、指揮官のコンセプトを落とし込んでいった。

 一方、今冬にセビージャを退団してセレッソ大阪へ復帰したMF清武弘嗣はコミュニケーションに問題を抱えているという印象を最後まで拭えなかった。昨季、MFイェフヘン・コノプリャンカ(現シャルケ)が練習中に通訳を付けて適応が遅れたため、クラブが清武に対してピッチ内における言語のサポートに積極的ではなかったという点も、彼にとってよくない判断となってしまった。

 『Goal』でセビージャの番記者を務めるフランシス・リコや他のスペインメディアも、コミュニケーションの問題を指摘していたを鑑みると、柴崎にも言語の問題は必ず降りかかってくるはずだ。努力を重ねてスペイン語を習得するか、エキスパートに助けを求めるか。いずれにせよ、何かしら手を打っていく必要はあるのではないだろうか。

■契約期間半年の青写真

 鹿島との契約が満了して、移籍金ゼロでテネリフェへと渡った柴崎は、新たなクラブと半年契約を結んだ。彼が描く青写真は、半年でテネリフェと共にリーガ1部に昇格し、契約更新を勝ち取るというものだろう。

 しかし、先に述べたように1部昇格への道は非常に険しい。これまで、リーガ2部では12人の日本人選手がプレーしたことがある。だが、チームとともに1部昇格の切符を勝ち取ったものは誰ひとりとしていなかった。柴崎は限られた時間の中で、ルイス・マルティ監督とチームメートの信頼を勝ち取り、かつ他クラブの関心を引くようなアピールをしなければらない。

 トランスファー(国際移籍承認書類)の関係で、デビュー戦は12日の第25節バジャドリー戦以降になりそうだ。レアル・マドリーに2得点を決めて世界中を驚かせたあの日のように、大きなインパクトを残すことができるのか。数々の困難を乗り越えた先に輝かしい未来が待っていることを願い、まずはデビューの日を待ちたい。

http://web.gekisaka.jp/news/detail/?208851-208851-fl