サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会に出場した日本代表の各選手は3日、ベルギーに惜敗した前日の決勝トーナメント1回戦を振り返った。「頭の中で最後の失点シーンが、ずっと回っている。目の前で決められたのがしんどい」と語ったのは、DF昌子源(鹿島アントラーズ)。決勝点を奪われた後半ロスタイムの記憶に、さいなまれている。(読売新聞メディア局編集部)
2-2の後半ロスタイム。ベルギーのGKクルトワが日本のコーナーキックを捕球し、前方でノーマークになったMFデブルイネに下手投げでボールを託した。デブルイネはスピードに乗ったドリブルで日本陣内に突入し、タイミングよく右前方へパス。受けたMFムニエがゴール前へ斜めにボールを転がした。これをエースFWのルカクがスルーし、その裏に走り込んだ途中出場のシャドリが右足で決めた。
わずか9秒間あまりの、稲妻のようなカウンター攻撃だった。日本の守備は、MF長谷部誠がルカクをマークし、GK川島永嗣もそちらへ注意を引き寄せられた。決めたシャドリを後方から必死で追った昌子は、間に合わなかった。
一夜明け、キャンプ地のカザンで、昌子は絞り出すように語った。「ずっとあの失点シーンが頭にあって、今までの(大会全体の)振り返りができない。全然寝てないんだけど、眠くない。ツイッターをやっていると、見たくない最後のシーンがリツイートで流れてきて、すごく嫌」
相手の連係を一部始終見渡せる位置で、昌子は守備に全力疾走していた。「なんで俺はデブルイネ選手にボールが渡ってから、走りだしたんやろう」と、初動の遅れを悔やむ。後悔の言葉は止まらない。「ハセさん(長谷部)とルカク選手がゴール前に入った時は『頼むルカク、スルーせんといてくれ』って、走りながら思っていた。スルーされた時は、自分が肉離れしても、骨が折れてもいいから、とにかく(シャドリに)間に合ってくれと。あんなに願ったことはない。悲しいですね。何も出来なかった自分に腹が立つ」
シャドリのゴールが「めっちゃ、スローモーション」に見えるという悪夢のような感覚を、初めて味わったという。それでも、潔さを失ってはいない。「ベルギーは、あそこで走っていた全員が得点まで同じ絵を描いていた。パスも絶妙で、すごかった」などと、相手のプレーをたたえることも忘れなかった。
最後の失点については、昌子とともにDFラインで奮闘した吉田麻也(サウサンプトン)も「例えば僕が(コーナーキックの時点で)GKをブロックしておけば良かったとか、『たられば』を言ったらきりがないけど、そういうずるがしこさ、うまさがなかったと一晩考えていた」と語った。
試合終了直後には、西野朗監督が「ああいうスーパーカウンターを受けるとは、予測もできなかった。コーナーキックで攻めにいった選手たちも、ああいう流れで数秒後に、自陣のゴール前までボールを運ばれるとは予測できなかっただろう。それが紙一重の勝負どころだと思う」と話していた。
「スローモーション」の悪夢~昌子が苦悩するベルギー戦の失点