僕は自分が見たことしか信じない 文庫改訂版【電子書籍】[ 内田篤人 ]
サッカー・アジア杯決勝(1日、日本1-3カタール、アブダビ)決勝が行われ、国際連盟(FIFA)ランキング50位の日本は同93位のカタールに1-3で敗れ、2大会ぶり5度目の優勝はならなかった。エースFW大迫勇也(28)=ブレーメン=は、相手布陣とのミスマッチに戸惑い不発。“大迫頼み”の攻撃からの脱却が、課題として浮き彫りになった。国内組中心のチーム本隊は一夜明けた2日、ドバイから帰国した。
やり場のない気持ちが爆発した。FW大迫は試合終了後、ペットボトルを蹴り上げると、関係者の静止を振り切って足早にピッチ裏へ。表彰式で再び姿を現したものの、顔を上げることができなかった。
「悔しさと後悔、複雑な気持ちだった。またチームに帰ってやり直すしかない。自分をもう一回見つめ直して、サッカーをしていかなきゃ成長できない」
敵の術中にはまってしまった。決勝まで6試合連続無失点を誇ったカタールは、相手によって巧みに守備陣形を変えていた。今大会は決勝まで4バックが4度、5バックが2度。日本に対しては5バックを採用し、“大迫封じ”ともいえる作戦を敢行してきた。
「どちらで来るか分からなかった。そこで後手を踏んでしまった」
大迫が悔やむ。相手のセンターバック3人に対し、MF南野と2人で前線からボールを奪いに行った。しかし、3対2の数的不利のため簡単にボールを回され、いたずらに体力を消耗。前半4分、苦し紛れに放ったミドルシュートは枠を大きく外れた。
同12分に相手FWアリにオーバーヘッドで先制点を許すと、日本は浮足だった。相手が人数をかけて中央を固めているにもかかわらず、1トップの大迫にボールを集めては、はね返された。“大迫頼み”の弊害が浮き彫りになっていた。0-2の後半24分にMF塩谷の縦パスを大迫がワンタッチ。これに南野が飛び込んで1点を返したが、時すでに遅しだ。
「僕自身、もっとゲームの中で変えるべきだった。申し訳ない気持ち。優勝できなかった責任を感じている」
敗戦の責任を一身に背負った。アジア最強と呼ばれたイランを破った準決勝後は気の緩みも否めず、決勝前日は大きな笑い声が上がるなど緊張感を欠いていた。ただ、W杯カタール大会まで3年の準備期間がある。エースへの依存から脱却し、その座を脅かすようなFWの出現が、日本のレベルアップに不可欠だ。 (原田遼太郎)
★試合展開
前半12分、FWアリにオーバーヘッドキックで先制され、同27分にはMFハティムにミドルシュートで追加点を許し、前半を0-2とリードされる。後半は受けに回ったカタールを攻め、後半24分にMF塩谷の縦パスから最後はMF南野が1点を返す。しかし、同38分にCKで競り合ったDF吉田がハンドを取られてPKで3点目を失い、1-3で敗れ2大会ぶり5度目の優勝はならなかった。
◆予想外5バックに封じられた大迫…森保J、V逸の理由/アジア杯(サンスポ)