サッカーダイジェスト 2019年11/14号 【特集】 2019年 J1&...
ダブルボランチは自らの存在価値をプレーで証明した
[Jリーグ第30節]鹿島1-0浦和/11月1日/カシマ
リーグタイトル奪還に向けて、勢いづく勝点3だった。難敵の浦和にホームで1-0。“鹿島強し”を印象づけるゲームでもあった。
最大の理由は、ここ1か月、負傷欠場していた三竿健斗、レオ・シルバの復帰だ。前者は9月14日のFC東京戦で左太ももを痛め、全治約6週間の診断。後者は同28日の札幌戦で右太ももを負傷し、治療期間は約5週間と発表された。
ともにボランチの主力であるふたりが、今節の浦和戦でピッチに戻ってきた。そして、上々のパフォーマンスを披露し、勝利に大きく貢献した。
試合後、強化部門の責任者である鈴木満取締役フットボールダイレクターは、両選手の凄さについて「ボールを奪う力」と評した。たしかに、三竿もL・シルバも球際の強さと高い危機察知能力を存分に活かして、何度も浦和の選手からボールを刈り取っていた。相手をロックオンし、鋭い出足でボールを奪い取る三竿のそれはまさに職人芸であり、L・シルバは持ち前の機動力を武器に、広範囲に動き回って相手のビルドアップを遅らせる。
攻撃面では、三竿は長短の正確なパスで周囲の味方を走らせ、L・シルバは推進力あるドリブルでボールを前に持ち運び、相手ゴールに迫っていく。
攻守両面で、この日のダブルボランチは絶大な存在感を放ち、チームに安定感をもたらしていた。自らの存在価値を、プレーで証明してみせたのだ。
彼らふたりの圧倒的なプレゼンスの要因は、主体的かつ能動的なプレースタイルにもあるように思う。“俺にパスを寄こせ、俺から組み立てる”という意志がひしひしと伝わってくる。経験と実績に基づく振る舞いなのかもしれないが、チームの中心に据えられた2本の太い柱が発するエネルギーが、この日の鹿島を支え、前に進ませていたように見えた。
改めて言うまでもないことだが、三竿とL・シルバ、このふたりの帰還は大きい。さらにこの浦和戦では、左太ももを負傷していたセルジーニョ、右足を痛めていた伊藤翔も実戦復帰を果たし、伊藤が起点となってセルジーニョが決勝点を決めてみせた。
右太ももの怪我で戦線離脱中の犬飼智也を含め、まだ少なくない負傷者を抱えてはいるものの、優勝争いが大詰めを迎えるなか、本来のチーム力が戻りつつある。
現在首位に立つリーグと、4強に進出した天皇杯の“2冠”に向け、タイトルを義務付けられている常勝軍団が、いよいよその真価を発揮しようとしている。
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)