2023シーズン、FC東京に加わった小泉慶はリーグ戦3試合全てにフル出場を果たし、早くも欠かせない存在になりつつある。まだまだチームは完成度を高めている段階だが、自身が目標に掲げるリーグ制覇に向けて、変わらぬ手応えを感じていた(取材日は3月1日)。
臨機応変にプレーできるのが良い選手
ーー開幕前から取材の中でチームへの期待と手応えを語っていました。3試合を終えた今、その感覚に変化はありませんか。
小泉 変わっていません。たとえば前半に得点できなくても続けていればチャンスが来ると思える。そういうチームになっていると思います。
ーー第1節の浦和戦がまさにそんな試合になりました。
小泉 やっぱり開幕戦ということで最初は堅かった。でもピンチはありましたけど、やっぱり体を張るところはみんなで張れていた。前半に決められなくても、絶対に後半にチャンスが来ると思っていたし、焦れずにやっていればというのはありました。キャンプの練習試合で得た手応えというのは僕だけじゃなくて、東京の選手みんなが感じていたものなので、我慢できたんだと思います。
ーー実際、後半に2ゴールを決めて勝利を収めました。
小泉 続けていれば絶対チャンスが来るというのはその通りで、相手にスキができたときに点を取ることができた。浦和戦に関して言えば、複数得点を取れたことも良かったですが、ゼロで抑えられたというのも良かったと思います。
ーー前半はアンカーの前に2人のインサイドハーフが並ぶ中盤の構成で、後半は2ボランチで並び、その前にトップ下がいる形に変更されました(4−3−3→4−2−3−1)。
小泉 変更したことによって選手の距離感がよくなって一つ一つのプレーがスムーズになりました。練習試合でも僕と(松木)玖生がダブルボランチで(安部)柊斗がトップ下という組み合わせはあまりなくて、ほぼぶっつけ本番ではありましたが、お互いの良さはつかんでいたので、問題はなかったですね。玖生や柊斗は後ろでプレーするよりも前の方で、のびのびと自由にプレーしてもらった方がいいと思います。だから僕がバランスを取ることを考えました。2人の能力を考えてもチームとしてもその方がいい。僕が走り回るよりも、きつそうだなという時に上がっていければいいという感じでやっていました。それはある程度、うまくいった部分だと思います。
ーー続く柏戦でも局面によってダブルボランチになっていました。
小泉 一応、自分のポジション的にはインサイドハーフでしたけど、やっぱり相手も分析してきているし、アンカーを置くと、そこの脇というのが狙われる。実際、レッズ戦も狙われていたので、レイソル戦は状況を見ながらプレーしました。守備の時にはなるべくアンカーの脇を意識して、ダブルボランチ気味になりました。
ーー小泉選手の判断だったのですね。
小泉 周囲と意思疎通しながら状況に応じて、ですね。
ーー試合後にも質問しましたが、失点場面については右サイドのマテウス・サヴィオ選手が内側に入ってきてフリーになっていました。
小泉 あの場面はセンターバックがいくのも難しかったし、ボランチの選手が見るのも難しかった。ただチームを分析されて、今後も相手は同じようなスペースを狙ってくると思います。そこは、サイドバックも含めてしっかりとケアしていきたい。あのスペースを使われるとしても、その前のプレーをしっかりやればいいわけですし、その部分の対応も含めてやっていかないといけない。むしろ、あの試合は攻撃面の反省がありました。
ーーというと?
小泉 風の影響も受けましたけど、もう少しボールを大事にできたと思うし、その中でインサイドハーフの自分がもっとボールの受ける回数を増やしたかった。ターンして前を向くとか、運ぶプレーが少なかったと感じます。受ける時の体の向きとか、質を高めないといけない。そうしないとチームも前進できないと思うので。
ーー中盤の3人の中で小泉選手が担っているものはかなり大きいと感じます。
小泉 僕は状況に応じて臨機応変にプレーできる選手がいい選手だと思っています。サッカーは状況判断のスポーツ。そこでいい判断ができるかどうかが大事になってくる。守備にしてもちゃんと考えてやらないと、J1レベルでは一瞬でもスキを与えたらやられてしまう。逆に攻撃ではしっかりスキを突けないとゴールは奪えない。状況を素早く察知していい判断をしていきたい。
ーー現在、FC東京で担っている役割は、鳥栖やそれ以前に所属していたチームと違うものですか。
小泉 大きな違いはないと思っています。キャンプからしっかりスタートできて、練習試合もたくさんやって手応えはつかめているので、戸惑いはないです。鳥栖の時もそうですけど、自分のパフォーマンスによって勝敗が決まると自覚しています。それは難しさを感じることではなく、やらなくてはいけないというモチベーションになる。ピッチに立つ以上は責任を持ってやりたい。
再びACLの舞台に立ちたい
ーー先ほど課題として攻撃面について話していましたが、前線との連係についてはどう考えていますか。
小泉 もう少しFWの選手、ウイングの選手とつながることを意識しないといけないと思っています。レイソル戦で言えば、前線の3人は特徴がある選手でしたし、その3人を生かすのも生かされるのも自分次第だった。たとえばボールを受ける時も、その3人の動きを見つつ次のことを考えていないと、相手に怖さを与えられない。鳥栖の時もまずビルドアップに参加して、FWやウイングを意識してプレーすることはやっていました。その点では似ている部分があって、以前と真逆のことをやっている感じではなく、似ているチームに来たと思っています。だから早い段階で手応えをつかめましたが、あとはその精度を上げていかないといけない。
ーー鳥栖時代との違いみたいなものは感じていませんか。
小泉 強いて言えば、鳥栖時代は前線に若い選手が多かったので、自分が生かさないといけないという意識がより強かったかもしれません。でも今、前にいるのはJリーグで何年も結果を残している選手ですし、経験も豊富です。個で相手を剥がしたり、個で決めてしまうことができる。だから自分がもう少しその生かし方を理解していけば、チームとして、もっと強みになっていくと感じています。
ーーそれは、個の力を生かすために前線に近づき過ぎないとか、そういうことになりますか。
小泉 アダ(アダイウトン)だったり、テルくん(仲川輝人)だったり、ドリブルで仕掛けるのが得意な選手なので、そのコースに入ってしまうと邪魔になるケースもある。ただ、ワンツーで崩せる場面もありますよね。その使い分けというか、臨機応変に対応しないといけないと思っています。やっぱりその時々の状況判断が大事ですよね。
ーーアルベル監督から具体的に求められていることはありますか。
小泉 直接的に何かというのはないですが、僕が試合に出ている以上は、まずは強度の部分を求められていると思っています。どこが相手でも強度を落とさずプレーしなければ、と思っています。
ーー現在、松木選手がU20アジアカップに出場するために不在で、安部選手もケガで離脱中です。小泉選手の存在がより重要なものになっていると感じます。
小泉 この先も当然、いろんなことがあると思いますが、先のことは考えずに目の前の試合に「勝とう」ということをミーティングで確認しています。本当にその通りだと思うし、目の前の相手を倒すことに集中し、それを継続すれば優勝できると思います。優勝という目標はブラさずにやっていきたい。
ーーFC東京に移籍してきた理由も「優勝」するためと語っていました。
小泉 加入して改めてそれだけのポテンシャルがあるチームだと感じました。もちろんどのチームも優勝を目指しているし、そんなに甘くないことは重々承知ですけど、経験のある選手がたくさんいて、若い勢いのある選手もたくさんいる。そして毎試合、強度高くやれていることも大きい。
ーー強度が優勝への一つの道標になると?
小泉 前提ですよね。この間のレイソル戦はイエロカードが複数出て退場者も出しました。アフターのファウルはもちろん良くないですけど、激しいプレーは海外の試合とか見てもスタンダードだし、ACLでもそうですよね。ピッチの状態がめちゃくちゃ悪い中で、結局つなぐとかそういう部分ではなくて、球際だったりセカンドボールの争いだったり、その差が勝敗に表れる。Jリーグ全体もそうだと思いますけど、強度がもっと上がらないとACLに行った時に勝ち上がっていくことができないと思います。その意味では今、FC東京では強度の高さがスタンダードになっています。長友(佑都)さんや森重(真人)さん、東(慶悟)くんが普段からその部分を強く言っている。そういうキャリアのある人たちが強調しているわけで、強度がなければ勝てないのは間違いないですよね。
ーーACLでプレーしたい思いも強いのではないですか。
小泉 柏時代(2015年)と鹿島時代(2019年)に出場していますが、またあの舞台に立ちたいと思っています。
ーー鹿島時代はベスト4止まりでした。広州恒大にアウェーゴール差で敗れています。
小泉 あの大会で優勝したかった。そういう個人的な悔しさがあります。その悔しさを晴らしたい。そのためにも、まずはリーグ優勝したい。相手チームを意識しすぎることなく、いかに自分たちの力を出せるか。いま取り組んでいるハイプレスの精度を高めて、強度を維持し、ボールを大事にする部分をさらに磨いていきたい。いい守備からいい攻撃という部分をしっかり実践すれば、常にいいゲームができる手応えはあるので。
ーー新加入選手はとくに期待される存在です。最後に、今後に向けた意気込みを改めて聞かせてください。
小泉 新加入ですし、自分が『見られている』立場なのは理解しています。ただ結局のところ、何を言ってもピッチで結果を示さないと評価されない世界です。しっかり示していけるように頑張ります。
■プロフィール◎こいずみ・けい:1995年4月19日生まれ、東京出身。MF。背番号は37。身長173cm、70kg。2014年に流通経済大柏から新潟に加入すると、初年度から豊富な運動量とボール奪取力を武器に出場を機会を得る。その後、18年に柏、19年7月に鹿島、21年8月からは鳥栖でプレー。今季からFC東京に加わった。
◆【FC東京】小泉慶が語る変わらぬ手応えと強い決意「自分のプレーで勝敗が決まると自覚しています」(インタビュー)(サッカーマガジン)