日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年6月25日火曜日

◆【”固定メンバー”で躍進のJ1鹿島が持つ「2列目の選手層と明確な課題」】(サッカー批評)






浦和戦の先制点から見る師岡、名古、仲間の3人がファーストセットである理由……10試合連続スタメン

 鹿島アントラーズは埼玉スタジアム2002で浦和レッズと2−2で引き分けた。ポポヴィッチ監督も「前半の出来は非常に良かったと思いますし、私も日本に長くいますが、質の高い、賢さ、したたかさを見せた前半だった」と振り返る内容で、幸先よく2点のリードを奪ったが、終盤に投入された武田英寿の2得点で追い付いかれて、最後はあわや逆転という状況を招いてしまったことは良くも悪くも現在の鹿島を象徴しているかもしれない。

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 それでも前半戦の折り返しで、首位と勝ち点2差の2位。ポポヴィッチ監督の1年目としては上々の滑り出しで、悲願のリーグ優勝も十分に狙って行ける位置にいる。

 その鹿島を力強く支えるのがGK早川友基、センターバックの植田直通と関川郁万、サイドバックの濃野公人と安西幸輝、ボランチの佐野海舟とJリーグの”デュエル王”知念慶、そして前線に君臨する鈴木優磨。この8人はほぼ固定で起用されており、安定したパフォーマンスのベースになっている。


■10試合続けてスタメン


 その一方で4ー2ー3ー1の2列目は個性的なタレントが充実しており、誰がスタメンで出ても、試合中にポポヴィッチ監督が必ずと言っていいほど交代カードを切っていくセクションになっている。ただ、その中で右の師岡柊生が8試合、トップ下の名古新太郎と左サイドハーフの仲間隼斗が10試合続けてスタメンで使われているのには明確な理由があるだろう。しっかりと前から守備のスイッチをかけながら、ボールを奪ったら素早く縦に運んで仕留め切る。

 そうした高強度のスタイルで、コンパクトなハイラインの守備と素早いトランジションをしっかりとこなせるセットであることだ。彼らの良さが顕著に出たのが、浦和戦の先制点につながるシーンだった。浦和の右からのビルドアップに対して、FWの鈴木と左サイドの仲間でプレッシャーをかけて、二人の狭間からオラ・ソルバッケンに出た縦パスを関川が潰しに行く。

 セカンドボールを安西がヘッドで前に折り返し、鈴木がショルツを背負いながら中央に出したボールを名古がワンタッチで前に照り出す。そこに連動した師岡が、浦和の左センターバックであるマリウス・ホイブラーテンと左サイドバックの渡邊凌磨の間で受けて、そのままドリブルで突破すると、右ワイドからシュートを打ち込む。GK西川周作に弾かれたが、外にこぼれたボールを鈴木が押し込んだ。


■2列目の3人がキーファクター


 記録にならない“事実上のアシスト”となる仕事をした師岡は「いい形で抜けられて、それでタッチはちょっと外にいっちゃったんですけど、優磨くんが見えてたので。ニアよりはファー打った方が、こぼれ球で点につながればいいかなという感じがあったので。それが点につながって良かったです」と振り返った。

 良い守備でボールを奪ったところから、素早い攻撃で仕留め切る形だ。師岡は「渡邊凌磨選手がけっこう高い位置を取ってくるので。そこでスペースが結構空くと思っていた」と分析するが、安西から鈴木、名古と繋いで、縦に出てくるような形は「練習からそれを意識してやっているところがある」と認める。

 そういう意味でも、2列目の3人がキーファクターになった先制点だった。

(取材・文/河治良幸)

(後編へ続く)


2列目がゲームチェンジャーであるがゆえのクローズする難しさ……リズムを整えられる選手がカギに


 鹿島の2列目は浦和戦でスタメン起用された師岡柊生、名古新太郎、仲間隼斗の3人に加えて、第一のジョーカーであるチャヴリッチ、スピードスターの藤井智也と松村優太、テクニカルな樋口雄太、復帰してきたキャプテンの柴崎岳、さらに浦和戦ではベンチ外だったギリェルメ・パレジや土居聖真といった選手たちがいる。

 師岡柊生はこれだけタレントがいる中で、スタメンで出続けている理由について「1対1の仕掛けだったりハードワークだったり、1対1の強さを評価されてるのかなと思います」と語る。そうした高強度なタスクを日々のトレーニングから、しっかりとポポヴィッチ監督にアピールできている3人ということだろう。

 スタメンはバックラインやボランチと同じく、固定的になりつつある2列目の3枚だが、ほぼ例外なく、試合の途中でメンバーチェンジするのにはいくつか理由があると考えられる。鹿島の中でも選手層が充実したセクションであること、スタイル的に攻守両面での消耗が激しいセクションであること。そして、もう1つが後半にギアを上げる、ゲームチェンジャーとしての役割を担っていることだ。


■クローズ時の明確な課題


 例えば早い時間帯にリードされた展開から逆転勝利した、第17節の横浜F・マリノス戦では後半スタートから師岡に代えてチャヴリッチを投入して、後半の畳み掛けにつながった。同点ゴールは名古のクロスにチャヴリッチが合わせて、相手DFにブロックされたこぼれ球を鈴木が決める形だった。1−1の同点に終わった前節のアルビレックス新潟戦も、後半スタートに仲間から藤井、師岡からチャヴリッチに代えて、交代出場の藤井が同点ゴールを決めている。

 そうした攻撃のギアを上げて、点を取りに行くタレントは揃っているが、3−0から追いつかれた第13節の東京ヴェルディ戦や2−0から2−2にされた今回の浦和戦のように、うまくリードを奪った流れで、相手に反撃を許さずクローズするという部分では明確な課題が出ているのも確かだ。

 ディフェンスリーダーの植田は2−0からの2失点を反省しながら「枚数かけながら攻めつつ、無失点で終える試合を自分は今シーズンもっと増やさないとなと思うし、それができるようになってこそ、このチームは強くなる」と前向きに語る。


■リードしている状況で入る2列目の選手


 ただ、リードしている状況でチャヴリッチや藤井、松村と言った縦に勝負していけるタレントが入った時に、そうした選手が縦を狙う推進力と中盤、最終ラインに間伸びが生じたり、守備では前からプレスがかからず、相手の突きどころになってしまう傾向が出ている中で、攻撃と守備をうまく揃えていくことが、さらに安定して勝ち点3を取っていくためのテーマになりそうだ。

 その意味では点を取りに行くだけでなく、リズムを整えられる柴崎のような選手が鍵を握るかもしれない。2列目の充実している鹿島で師岡、名古、仲間がファーストセットになっているのはポポヴィッチ監督の求める攻守のタスクをバランスよく出せることが大きいが、そのベースがさらに上がったプラスアルファとして個のスペシャルを発揮できる陣容になってくれば、鹿島がリーグタイトルを目指すための強みになって行きそうだ。

(取材・文/河治良幸)



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