日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年7月8日月曜日

◆「あらゆる手段で“鹿島らしさ”を未来につなげていく」どんな形でも頂点に立つ――斬新なチャレンジに期待だ【吉岡宗重FDインタビュー③】(サッカーダイジェスト)






「今後はアカデミーから育ってきた選手もより戦力になってくれると思います。すでに徳田(誉)がJ1デビューを果たし、彼と松本遥翔、佐藤海宏の来季トップ昇格が決まっていますけど、ユース監督の柳沢(敦)、テクニカルアドバイザーの満男、GKコーチの曽ケ端(準)、アカデミーダイレクターの鈴木修斗らOBが育成に尽力してくれています。


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◆「あらゆる手段で“鹿島らしさ”を未来につなげていく」どんな形でも頂点に立つ――斬新なチャレンジに期待だ【吉岡宗重FDインタビュー③】(サッカーダイジェスト)





指揮官の手腕が問われるシーズン後半戦


 今季から鹿島アントラーズを率いるランコ・ポポヴィッチ監督は、2009年の大分トリニータを皮切りに、FC町田ゼルビア、FC東京、セレッソ大阪とJリーグの4クラブで指揮を執った経験のある指導者だ。

 森重真人や徳永悠平など日本代表クラスのタレントを擁したFC東京、柿谷曜一朗や山口蛍らに加えてディエゴ・フォルランも加わったC大阪時代はタイトルへの期待も高まったが、結果を出せないままチームを去る形になっている。

 時に感情を爆発させたり、語気を強めたりする印象も強かったため、鹿島監督就任が明らかになった時、「彼のようなタイプの指揮官がこのチームに馴染むのか」といった懐疑的な目線を向ける人も少なくなかった。

 鹿島というクラブには、何があっても自らの考えをブレずに貫ける小笠原満男や本山雅志のような達観した選手がいたため、監督の気性が荒くてもあまり問題にはならなかった。が、今の若い選手は繊細でナーバスな傾向が強く、物事を深刻に受け取りがちだ。何か言われて委縮してしまう人間がいても不思議はない。そこは不安視された部分だろう。

「ポポヴィッチ監督も『鹿島で成功したい』という思いが強くて、今は我々とのコミュニケーションも密に取ってくれています。セルビア語で激しく喋ってくると、聞く側が想像以上に強く感じるということも伝えて、『お互いにアジャストしていこう』と言ってくれています。

 ピッチ内外での彼の立ち振る舞いをよく見ていますが、今は“堪えること”をすごくやってくれている。言いたいことはたくさんあるし、勝つためには言わないといけないことは躊躇なく指示しますが、状況によってはそれをグッと飲み込んで、いったん頭の中で整理して、言うべきことをシンプルに話す。そんな姿が印象的ですし、大分時代とは大きく変わったところかなと思います」と、鹿島の強化責任者である吉岡宗重フットボールダイレクターは、これまでの月日を噛みしめている様子だ。

 確かに今季のポポヴィッチ監督は、時に激しさや怒りを前面に押し出すものの、常に感情を起伏させているわけではない。

 6月30日のヴィッセル神戸戦を見ても、1-3で逆転負けした直後なら、不機嫌でロクに喋らないといった態度に出てもおかしくないだろう。だが、指揮官は熱心に応援してくれたサポーターに心からの感謝を口にし、鈴木優磨不在の課題についても、これまで以上に懇切丁寧に説明してくれた。

 その一挙手一投足を間の当たりにし、筆者も「ポポさんは年齢や経験を重ねて丸くなった」と痛感させられた。今の接し方が鹿島の若い世代には合っているのかもしれない。

 鹿島への適応・順応を進めるポポヴィッチ監督の手腕が問われるのは、ここからの後半戦だ。吉岡FDは「これまでやってきたことの成熟度を上げていく必要がある」と語っていたが、得点力アップと失点減という課題の両方に向き合っていくことが重要なのだ。

「アグレッシブなプレッシングやハードワークを前面に押し出した守備をしているので、連戦や夏場になってくると、どうしても守りが崩されることも増えてくる。失点数が増えるのはある程度、仕方ないと考えていたところもありました。その改善はマストですが、より点を取れるようにしなければいけないのも確かです。

 首位・町田ゼルビアとの直接対決が最終節にありますけど、それを待たずしてタイトルが取れる状態に持っていきたい。すでにルヴァンカップを失っているので、残されたのはJ1と天皇杯ですけど、優勝できるように最善を尽くしていくつもりです」


鹿島のDNA継承の重要性を強調


 吉岡FDが語るような成果を得られれば、常勝軍団復活への布石を打てるし、“鹿島らしさ”を継承していくことも可能になる。

 小笠原満男という偉大なプレーヤーの引退後、鹿島はタイトルから遠ざかっているが、小笠原とともにプレーした経験のある柴崎岳、土居聖真、植田直通、鈴木といった面々が今のチームにはいる。柴崎、植田、鈴木はみな海外から戻ってきた選手だが、鹿島の文化というものを知り尽くし体現できる存在を戻しながらチームを強くするという形は、これからも続けていく方向だという。

「昨季、植田と岳、今年移籍した昌子(源)が帰ってきて、何も語らなくても鹿島の伝統を示してくれていることで、多くの選手が自覚を強めていると思います。優磨も去年はその作業がうまくいかなくて苛立っているようにも見受けられましたけど、彼らが戻ってきて負担も軽減されたと感じています」と、吉岡FDは前向きに発言している。

 実際、植田などは、ことあるごとに「鹿島は常にタイトルを求められるクラブ」「負けは許されない」「2位で満足していられるチームじゃない」と言い続けており、まだ優勝経験のないメンバーも危機感を募らせているに違いない。

 川崎フロンターレも長い時間を要して2017年にJ1初制覇を果たしてから一気に黄金時代を築いたが、優勝というのはそれだけ大きな成長への起爆剤になる。どんな形でもいいから頂点に立つことが、今の鹿島に求められるタスクなのだ。

「今後はアカデミーから育ってきた選手もより戦力になってくれると思います。すでに徳田(誉)がJ1デビューを果たし、彼と松本遥翔、佐藤海宏の来季トップ昇格が決まっていますけど、ユース監督の柳沢(敦)、テクニカルアドバイザーの満男、GKコーチの曽ケ端(準)、アカデミーダイレクターの鈴木修斗らOBが育成に尽力してくれています。

 以前から『アントラーズ技術委員会』という場があって、そこでトップから下部組織の方向性のすり合わせをやっていたのですが、コロナもあって少し中断しています。今は全カテゴリーにOBがいますし、外で指導経験を積んでいる優秀な人材もいる。今後は彼らを監督に呼ぶ可能性もあります。あらゆる手段を講じて“鹿島らしさ”を未来につなげていくつもりです」

 鹿島のDNA継承の重要性を強調する吉岡FD。そのために、過去にクラブで指揮した指導者の再招聘なども模索していくこともあり得そうだ。もちろん今はポポヴィッチ監督体制で優勝することが最優先だが、近未来の鹿島が果たしてどうなっていくのか――。その舵取り役のさらなる斬新なチャレンジに期待したいものである。

※このシリーズ了(全3回)

取材・文●元川悦子(フリーライター)



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