22日、鹿島アントラーズのJ1再開後ホーム初戦・柏レイソル戦が県立カシマサッカースタジアムで開催される。真夏の連戦となるが、ここからの巻き返しに向け、内田篤人の果たす役割は大きい。
■鹿島復帰。思い描いた道のりとは程遠い日々
「このチームのために一生懸命働く覚悟で来た。アントラーズは優勝カップやシャーレを掲げることがよく似合うチームだと思う。去年は獲れなかったので、みんなで獲りに行きたい」
新年早々に発表されたアントラーズ復帰、新体制発表会見で語られた決意。2010年にドイツへと旅立った若武者が、百戦錬磨のチームリーダーとして鹿嶋へと帰還する――。大いなる注目を浴びながら、内田篤人の2018年が始まった。
「アイツが帰って来てくれた意味は、間違いなく大きい。練習に取り組む姿勢、かける言葉。見せてくれること、言ってくれることは間違いなく響くから」
欧州で幾多もの激闘を経験し、長きにわたる困難の日々を乗り越えた後輩の帰還を、キャプテン・小笠原満男は心から喜んだ。かつてない数の報道陣が詰めかけた宮崎キャンプ、そこで繰り返された切磋琢磨――。内田の存在感は絶大だった。
過酷なフィジカルトレーニングでは、メニューを告げられた直後に「やるぞ! 俺と組みたいやつ、来いよ!」とチームを鼓舞し、大声を張り上げ続ける。戦術練習では鋭いオーバーラップを連発し、地を這うスライディングを敢行。「このチームでしっかりと試合に出たい」。アントラーズで定位置争いをする意味を、「結果を残さないと次がない」というドイツでの経験を、極寒のピッチに解き放ち続けていた。
そしてシーズン開幕とともに始まった、怒涛の連戦。チームとしても個人としても、思い描いた道のりとは程遠い日々を過ごすこととなってしまった。それでも内田は動じることなく、前向きのベクトルを放ち続けた。
「勝てない時は、“結果が出ることを待っている”状態だから。“練習で変えていく”とよく言うけど、結果が出て変わっていくものだからね」
かつて暗闇に迷い込んだ時、本山雅志(ギラヴァンツ北九州)が「ブレないことだよ」と繰り返していたように――。
4月25日のJ1リーグ戦第10節・神戸戦。痛恨のドローに終わり、悲痛な叫びと怒号に包まれた聖地で、内田はスタンドへ歩み寄った。「一緒に乗り越えよう」。残留争いに身を置いた2012年、心身が擦り減るような日々を過ごす中、共闘を呼び掛けた中田浩二のように――。
「クラブハウスに貼られている横断幕のメッセージにもネガティブなものが一つもない。一緒に闘おうという思いが込められているから、頑張れるよ」。脈々と受け継いできたアントラーズスピリット、そして背番号12への思いとともに、内田はチームを浮上させようと腐心していた。別メニューでの調整が続き、ピッチに立てない不甲斐なさと向き合った日々も、その言葉で、その振る舞いで、内田はチームのために戦い続けていた。
■背番号2。今、満を持して真夏の連戦へ
「シーズン後半戦は全部の試合に絡んでいきたいと思っている。練習もキャンプも全部やってきているしね」
5月20日のJ1中断まで、内田が刻んだ出場数は7試合のみ。だが、6月の静岡キャンプ、そして公式戦再開に向けたトレーニングを積み重ねた背番号2は今、満を持して真夏の連戦へ突入しようとしている。
7月11日の中断明け初戦となった天皇杯3回戦・FC町田ゼルビア戦で久しぶりのフル出場。熱帯夜の町田で、正確無比のサイドチェンジを何本も通してみせた。幾度となくパスを受け、果敢な突破を繰り返した安西幸輝は「上がっていけたのは篤人さんのおかげ」と感謝を語っている。そして試合終盤には腕章を受け継ぎ、勝利のホイッスルを聞いた。勝負のシーズン後半戦がついに幕を開けた瞬間でもあった。
「アントラーズというチームは試合数が多くても、全てのタイトルを獲らないといけない。今のメンバーで勝たないといけない」
7月唯一のホームゲームから、15日間で5試合。総力戦で突き進む日々、ピッチ内外でその存在は欠かせない。「みんなで獲りに行く」。その言葉を現実のものとするために、反撃の狼煙を上げるために――。内田篤人、アントラーズの背番号2。鹿嶋で迎える、9年ぶりの夏が始まる。
内田篤人、9年ぶりの夏。タイトルへ「後半戦、みんなで獲りに行く」【J1第17節・鹿島vs柏】