クラブW杯準決勝で1-3と完敗 シュート、パス、デュエルの各データから分析
現地時間19日に行われたFIFAクラブワールドカップ(W杯)準決勝で、アジア王者の鹿島アントラーズは欧州王者レアル・マドリードと戦い、なす術なく1-3で敗れ、世界のトップレベルとの差を痛感する一夜になった。試合後の選手からは「一人ひとりが上手い」、「プレー強度の違いを感じた」など個人レベルでの差を指摘する声が挙がっている。ピッチ上で感じたその“差”とは、具体的にどの部分にあったのだろうか。ここではデータ分析会社「Instat」社が集計したこの一戦のデータから、両者の違いを探ってみた。
一般的なデータで鹿島とレアルを比較すると、多くの項目で欧州王者が上回っている(表1参照)。鹿島から見てボールポゼッションは38%対62%、パス本数は405本対833本と、世界的なスター選手を擁するレアルが圧倒的にボールを保持するという、予想どおりの試合展開になった。そのなかで両者の“大きな差”を感じさせた数値が、シュート、パス、ドリブルなどそれぞれの成功率だった。
まず、シュートから見ると、鹿島の枠内シュート率は33%となっている。一方のレアルは50%。鹿島は3本に1本のシュートが枠内をとらえるのに対して、レアルは2本に1本のシュートを枠内へ飛ばしてくる。しかもボールポゼッション、シュート総数では1.5倍以上の差があったため、鹿島から見れば失点の危機を感じるシーンは枠内シュート率の差以上にあったと思われる。
縦パス成功率「73%対82%」で浮かび上がった両者の差
続いて本数に大きな差が出たパスの成功率は、鹿島が84%、レアルが90%。数値的には試合ごとのブレと言えるほどの差で、両者に大きな差は見られない。しかし、その内訳まで見ていくと、大きな差が生まれていることが分かる(表2参照)。
鹿島には失点につながるバックパスのミスがあったとはいえ、バックパスや横パスなどビルドアップ段階での成功率は誤差の範囲内と言える。しかし、縦パスにおいて両者には大きな差あった。鹿島は73%で、レアルが82%。その他のパス成功率と比べると歴然とした差が生まれている。縦パスはゴールへ近づくための重要なパスで、そのパスの本数が少ない、あるいは成功しない状態は俗に言う“ボールを持たされている状態”となり、思うように決定機を作れず相手のペースに陥っている状態となる。
鹿島とレアルの縦パス数(142本対233本)の差自体は、ほぼボールポゼッションの差に比例しているので、どちらかが意図的に横パスを多く回させ、相手にボールを持たせたというほどのものではない。ただ、鹿島は縦パスにおいてミスが多くなり、自らチャンスを潰した。あるいは、レアルによってチャンスの芽を摘まれたと言えるだろう。
球際で果敢にチャレンジもレアルに圧倒される
最後に、デュエルに関する数値を比較したい(表3参照)。それぞれの項目の回数だけを見れば、両者に大きな差はなく、一見すると鹿島は互角に渡り合っていたように思える。だが、それぞれの成功率を見ると明らかな差が出ており、対人プレーの質においてレアルが圧倒的に上回っている。鹿島は攻撃においても、守備においても果敢にチャレンジしたものの、球際の攻防で相手が一枚も二枚も上手だったことが痛いほど分かる。
シュート、パス、デュエルとデータを使って分析したが、どの分野においてもそのプレーの質に大きな差があることが分かり、DF昌子源やMF安部裕葵が感じた“白い巨人”との差は数値上でもはっきりと表われていた。個人のレベルを上げなければ勝つ可能性が低いままなのは当然だが、チームとしてどの部分の精度を高めて“差”を縮め、世界トップレベルにチャレンジしていくのか。鹿島に限らず、日本のクラブチームにとっても、今後の強化に向けた示唆に富む試合になったことは間違いない。
データ提供元:Instat