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2021年2月2日火曜日

◆鹿島アントラーズ「国内移籍ゼロ」ににじむ凄み「強くあり続ける」理由(サッカー批評)






 プロである以上、ピッチ上で第一に求められるのは結果だ。一方で、内容やスタイルといったプレーの魅力も大事な要素だ。そうした魅力を築き上げ、さらに将来への道筋ともなるチームづくりの「過程」もまた、重視されてしかるべきものである。

 同じことがチーム編成にも言える。特にコロナ禍に見舞われているこのオフの補強では、質量ともにクラブごとに大きな違いが表れた。

 もちろん、勝利にチームを近づけてくれるであろう有力選手を多く獲得できれば、ファンとしては期待が高まることだろう。逆に即戦力の獲得がなければ、不安が顔をのぞかせるかもしれない。だが、選手獲得という「結果」と同様に、そこに至るまでの過程もまた、重視されるべきだ。チーム編成までの流れから、クラブの計画性が浮かび上がるからだ。

 その計画性をうかがえる要素の一つが、選手補強のタイミングだ。例えば、かつてのエレベータークラブから一転、着実にJ1での地歩を固めている印象がある北海道コンサドーレ札幌は、1月6日までに選手の補強を終えている。クラブの規模により大きな動きはできないという側面もあるかもしれないが、動き出しも早かった。

 圧倒的な強さで昨季のJ1を制した川崎フロンターレは、1月4日までに小塚和希ら日本人選手の獲得を完了した。その後に守田英正のポルトガル移籍や、齋藤学の名古屋グランパス行きを発表しているが、その穴埋めをするような後追いの補強は施していない。コロナ禍においてどのクラブも例年より資金繰りが難しい状況において、計画性の重要性はさらに増す。


■新しい鹿島の土台はすでに完成
    

 そうした観点から見ると、別格のクラブがある。鹿島アントラーズである。 年が明けてから鹿島が発表した新加入選手は2人いるが、ともに国外から迎えるブラジル人選手だった。つまり、昨年のうちに補強はほぼ完了していたのだ。

 それも当然ではある。何しろ、このオフに他クラブから獲得した選手はゼロ。今季新たに加入した日本人選手はすべて、ユースからの昇格、あるいは高校や大学から加入してくる新卒選手だけなのだ。その事実こそ、鹿島の計画性を強く示している。

 鹿島にはもともと、新卒選手をメインに補強をしてきた歴史がある。外国人選手を除いて他クラブからの獲得がないシーズンもざらで、多くても年に2人程度。かつてサッカー批評のインタビューで鈴木満フットボールダイレクターは、たとえ実力は日本代表クラスでも鹿島に合わないと思った選手は獲得しない、と話したが、その血の濃さで強さを維持し続けてきた。

 この5年ほど、特にDAZNが支払う莫大な放映権料を原資とした巨額の優勝賞金が出るようになってからは、「勝ち組」になるべく他クラブの主力選手を迎えることも多くなってきた。さらに昨季は異例とも言える、永戸勝也ら5人のJリーガー獲得による補強を施した。東京五輪世代の杉岡大暉ら若手も獲得しており、決して少なくない移籍金も支払ったようだ。

 さらに昨季の鹿島は、ザーゴ監督を迎えてプレースタイルも含めて一新を図っている。序盤こそゴールも奪えず連敗と苦しんだが、一度流れをつかむと7連勝を飾るなど好調を維持。最終的にはACL出場圏内の3位と勝ち点3差の5位でフィニッシュしている。

 その鹿島が、このオフには動かなかった。昨季の新戦力は主力を担い、染野唯月や荒木遼太郎といった高卒ルーキーも台頭した。つまり、数年スパンの補強プランの下で「新しい鹿島」の土台はすでに出来上がっているのだ。凄みすら感じさせる計画性だ。

 放出にも意味がある。山本脩斗、伊東幸敏の完全移籍は、同じサイドバックとして明治大学から迎える常本佳吾に即戦力となる目途が立っているということだろう。FWの補強はないということは、昨季の手応えの裏返しでもある。また、期限付きを含めて鹿島を離れる全選手が、J2以上のカテゴリーを戦うクラブへ移籍した。その「実績」は、選手や関係者からクラブへの信頼度をさらに高める。

 前述の通り、プロは結果で語るしかない。補強の成否も、シーズン後に出る結果によって問われることになる。

 だが、ここまでの歩みを見る限り、今季の鹿島の補強の答えはすでに出ているように思えてならない。


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◆鹿島アントラーズ「国内移籍ゼロ」ににじむ凄み「強くあり続ける」理由(サッカー批評)





◆【コラム】「ワニの街」に「ワニのようなDF」がやってくる。植田直通にかかる即戦力としての期待 | リーグ・アン(DAZN)






【欧州・海外サッカー コラム】1月中旬にリーグ・アンのニームへの移籍が発表された日本代表DF植田直通。DAZN実況でお馴染みのアナウンサー・西達彦氏が、ニームというクラブ、そして植田にかかる期待を解説する。


1月中旬、日本代表DF植田直通(26)がベルギーのセルクル・ブルッヘから、リーグ・アンのニームへ買取オプション付きでレンタル移籍することとなった。

リーグ・アンでは通算10人目の日本人選手であり、CBとしてはトゥールーズでプレーし、鹿島アントラーズの先輩でもある昌子源(現G大阪)以来の日本人となる。ニームの公式SNSは「新しいDFが好きな動物は…ワニです!」と植田の加入を喜んだ。


ワニの街にワニのようなDFが来る


ワニはニームというクラブの、そして街のシンボルだ。ニームの市のエンブレムにも、クラブのエンブレムにも、ワニが描かれている。デニム生地(de Nîmes)の語源とされ、南仏・モンペリエとマルセイユの間に位置するニームには、円形劇場や世界遺産の水道橋など、古代ローマ時代からの遺構が残る。

紀元前1世紀、ローマ皇帝アウグストゥスがクレオパトラ率いるエジプト軍を征服して占領した際、兵士たちにそのご褒美として与えられたのがニームの街だった。ニームの街には至るところに「ヤシの木とワニ」のモチーフが飾られている。ヤシの木は勝利を、そしてワニはエジプトを意味する。ニームというクラブの愛称も「ル・クロコス(クロコダイルズ)」だ。

植田は、高卒新人として鹿島に入団する際、会見で「自分を動物に例えるとワニ」という話をしていた。「ワニは水中に獲物を引きずり込んで仕留める。自分も空中戦や1対1とか、得意な部分に持っていって仕留めたい。」ワニに誇りを持っている街に、「自分はワニのようなDF」と話す男がやってくるのだから、つかみとしては完璧だ。ニームの現地コメンテーターもこの逸話を紹介している。サポーターの心はつかめるはずだ。


ニームはCB陣に大きな問題アリ


セルクル・ブルッヘで出場機会を失っていた植田だが、セルクルは少し特殊な立ち位置のクラブだ。リーグ・アンのモナコのセカンドクラブ的な位置づけがある。

モナコは有望な若手を獲得して高く売るスタイルのクラブだが、モナコで出場機会のない若手を国外クラブにレンタルさせることが多い。セルクルはその受け入れ先のクラブで、モナコからのローン選手が4人(うちCBが2人)いる。今季のモナコはオセール(リーグ・ドゥ=2部)からジャン・マルセランなど二人の若手CBを獲得したが、現状のモナコでは出場機会がないため、セルクルにレンタルされた。彼らの出場機会を確保する必要がある。また、キャプテンも務めるジェレミー・タラベルの存在もあり、事実上、入り込めるCBの枠はなかった。

一方で、ニームはCB陣に大きな問題を抱えていた。

キャプテンも務めるアントニー・ブリアンソンは負傷から復帰したが膝に不安を抱える。実績のあるパブロ・マルティネスとロイク・ランドルも負傷離脱中で、実戦経験のある本職のCBがいない状態が続いていた。

下部組織から昇格させた若いケリャン・ゲッソン、上背のある守備的MFのリュカ・ドーをCBに置くなどしたが、急造のDFラインは失点を重ねた。また、DFに今季限りで契約が切れる選手が複数おり、CBの駒不足は明らかだった。金銭的負担のないローン加入はニームにとって渡りに船であり、他の選手の契約によっては、買取オプションの行使も十分にある。植田にとってもニームやセルクルにとっても、ポジティブなディールだ。


植田には即戦力の期待


ニームは今季からトップチーム初指揮となる42歳のジェローム・アルピノン監督が率いている。「良くも悪くも右サイド」というチームだ。基本システムは4-1-4-1。右MFに入るアルジェリア代表MFジネディーヌ・フェルハトを中心に攻撃を組み立てる。

フェルハトは17/18シーズンにル・アーヴルでリーグ・ドゥのアシスト王(20アシスト)になった経歴を持つアタッカー。スピード豊かなドリブラーで、ドリブル回数もリーグトップクラス。思い切りのいいオーバーラップを見せる右SBのソフィアン・アラクシュとの連携も良い。

フェルハトのもう一つの武器は空中戦だ。ロングパスの受け手としての回数がチームトップクラスで、空中戦の勝率も6割に迫る。フェルハトへのロングボールを起点に、フリックしたボールにチーム全体が反応して攻撃が始まる。

一方で、かなり右肩上がりな分、ボールをロストするとニームにとっての右サイドを一気にカウンターで破られて失点するケースが多い。

昨季まではフランスの年代別代表の正GKのポール・ベルナルドーニが最後の砦となっていたが、彼をアンジェに引き抜かれた今季は、DFラインに怪我人が続出していることもあり、あっけなく失点してしまう。


植田に求められる役割は…?


右CBに求められるタスクは多岐に渡る。右CBはチームを熟知しフィード能力も高いブリアンソンに任せ、左CBで空中戦や1対1の強さを発揮させた方が、植田の能力を生かせるように思える。ビルドアップもさほど重視していないチームなので、植田は自分の強みである対人守備能力の発揮に専念しやすいはずだ。他のCBが復帰したとしてもコンディションの不安は否めない。植田には即戦力の期待がかかる。

ちなみに、現在のニームの正GKはバティスト・レネ。昨シーズンまでトゥールーズに在籍しており、昌子源とチームメイトだった選手だ。レネも日本人選手と組むのは初めてではないし、植田もレネの情報を事前に入手することもできるはずだ。そして植田の強みは、フランス語圏であるベルギーでプレーし、若いDFラインを統率していた経験だ。言語という最大の壁を、ベルギーでの2年半で習得して乗り越えていることは大きい。

ニームは20日のマルセイユ戦で勝利し、8戦未勝利(1分7敗)の泥沼と最下位から抜け出し、プレーオフ圏内の18位に浮上した。負傷者も戻り始め、ようやく巻き返し体制が整いつつある。

24日のロリアン戦は対戦相手に新型コロナウイルスのクラスターが出て中止となったが、この間に植田はチーム戦術を学ぶトレーニングができたはずだ。植田のデビューは早くて31日のアンジェ戦。そして2月3日にはいきなりパリ・サンジェルマンとの試合が控える。世界最高の攻撃陣と植田がどう対峙するのか、そして降格の危機に瀕するチームの救世主となるのか。楽しみは尽きない。


文・西 達彦


ボイスワークス所属(局アナ経験なし)。Jリーグ・リーグアン(DAZN)ONE(abemaTV)なでしこリーグ(YouTube)マリーンズナイター・高校野球(チバテレ)西武ファームなど実況。趣味は乗り物全般、渋谷系音楽。




◆【コラム】「ワニの街」に「ワニのようなDF」がやってくる。植田直通にかかる即戦力としての期待 | リーグ・アン(DAZN)


◆「鹿島アントラーズ」2021年の予想布陣&最新情勢「ザーゴ体制2年目で奪い返す“Jの頂点”」(サッカー批評)






 屈辱から一転して躍進。新しくザーゴ監督を迎えた昨季の鹿島アントラーズのシーズンを振り返ると、こうなるだろう。

 クラブワーストとなる開幕4連敗に、Jリーグ勢では史上初めてとなるACLのプレーオフ敗退を喫する最悪のスタートながら、2020シーズンが終わってみれば、J1で5位。しかも、ACL出場となる3位の名古屋に、勝ち点差4まで迫ってみせた。

 ザーゴ監督の戦術が浸透すると同時に、所属メンバーとJリーグにその戦術を合わせていくことで白星を掴んでいった。就任初年度は、鹿島アントラーズの新しい「幹」を育てた1年だったが、その中で、世代交代も実現。下部組織出身で東京五輪世代のGK沖悠哉が守護神の座を掴み、リーグ戦24試合に出場。プロ1年目のFW上田綺世も、2ケタ得点となる10点を奪ってみせた。

 それだけでなく、MF荒木遼太郎は高卒ルーキーながら26試合に出場し、その豊かな将来性から、2021年シーズンは背番号「13」を着ける。鹿島の13番と言えば、かつて柳沢敦氏や興梠慎三(現・浦和)が務めた重みのある番号。クラブからの期待の大きさが表れている。

 若手の成長が著しいため、2021年シーズンに向けた補強はピンポイントとなっている。ユースからの昇格、高卒、大卒の新人を6人入団させたほかは、外国人選手2人(ディエゴ・ピトゥカ、アルトゥール・カイキ)を獲得するのみとなっている。一方で、GK曽ケ端準の引退に加え、DF奈良竜樹、DF山本脩斗、DF伊東幸敏、FW伊藤翔といった中堅&ベテランを放出。出入りだけみれば放出のほうが多く感じるが、この辺は若手選手の活躍によるA契約締結とも関係している。

 数少ない補強選手であるピトゥカについては、大きな期待が寄せられる。ジーコが惚れたというその逸材は、基本のポジションをボランチやセントラルミッドフィルダーとしながらも左サイドバックや左サイド、さらに、フォワードすらこなせるという器用さを持つ。鹿島の中盤に柔軟性と創造性をプラスする存在となるはずだ。

 もう一人の獲得選手であるアルトゥール・カイキは、左ウイングをベストポジションとしながらも、センターフォワードと右ウイングでもプレーできるアタッカー。4-4-2であれば、左右のサイドでもプレーできるため、ファン・アラーノと強力な2列目を構成する可能性もある。

 ピトゥカもカイキもしばらくは入国できないため、当面の鹿島は昨季のメンバーで戦うことになる。しかし、補強の数を見ても分かるように、すでにチームとしての骨格はできているため、外国籍選手2人は、途中からチームの勢いを加速させる存在となるはずだ。

 また、昨季加入しながらも、その能力を引き出せていない選手にも注目したい。左サイドバックの永戸勝也は、仙台時代に10アシストを記録してリーグアシスト王になりながらも、昨季は22試合2アシスト。バランスを考えながらのプレーに重きを置いた昨季だったが、今季はその左足からのチャンス量産にも期待したい。

 また、右サイドバックの広瀬陸斗は、負傷による長期離脱こともあって15試合出場3アシストに終わってしまった。シーズンを通して定位置を掴み、得点機会に絡む姿に期待したい。

 他チームの追随を許さない8度のJ1リーグ優勝を誇る鹿島アントラーズ。序盤でつまずきながらも最終的には5位でフィニッシュしたザーゴ監督のチーム作りは2年目となり、9度目のJ1制覇は現実的な目標となる。


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◆「鹿島アントラーズ」2021年の予想布陣&最新情勢「ザーゴ体制2年目で奪い返す“Jの頂点”」(サッカー批評)