日刊鹿島アントラーズニュース

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2024年9月16日月曜日

◆【広島との大一番でドロー。J1タイトルへ崖っぷちの鹿島が見せた可能性】(サッカー批評)






 今季の鹿島は攻撃のギアを上げる存在が乏しいと言われてきたが、ここへきて2人が調子を上げてきたのは朗報だ。後半途中から入った藤井智也も徳田の同点弾につながるドリブル突破で違いを見せており、流れを変える選手として存在感を高めつつある。今回ベンチ外となった田川亨介らを含め、もっともっと攻撃陣が切磋琢磨し、得点力を高めないといけないのは事実。それが短期間に結果となって表れれば、奇跡の逆転タイトルも夢ではないはずだ。


◆【広島との大一番でドロー。J1タイトルへ崖っぷちの鹿島が見せた可能性】(サッカー批評)

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知念慶の復帰で柴崎岳のトップ下起用と「3バック」導入。リーグ終盤へ濃野も強調した鹿島の「伸びしろ」(サッカー批評)




 8月25日の東京ヴェルディ戦で1-2とまさかの敗戦を喫し、アウェー8敗目で4位に後退してしまった鹿島アントラーズ。翌週の8月31日のアウェー・京都サンガ戦が台風10号の影響で中止になり、彼らは9月のインターナショナルウイーク(IW)を含めて3週間のインターバルを得ることになった。

「激しいトレーニングをやったので、だいぶコンディションも上がっている」と鈴木優磨が強調。ランコ・ポポヴィッチ監督も「ここ最近は前半戦で見せていたように奪われた後の反応の速さ、トランジションの速さが失われていた。そういうところを徹底的に再確認した」と原点回帰を図ったという。そのうえでラスト10戦を戦い抜いていく構えだった。

 9月14日のサンフレッチェ広島戦は第一関門。この時点で首位に立っていた相手を本拠地・カシマスタジアムに迎えるということで、勝点3がマストだった。長期離脱していた知念慶も復帰し、指揮官は彼と三竿健斗をボランチに並べ、柴崎岳をトップ下に上げる配置変更に打って出た。右の名古新太郎、左の師岡柊生含めて新編成の攻撃陣が機能するか否かが1つの注目点だった。


■鹿島が3バックに


 この1週間で2つのタイトルを落とした相手は凄まじい闘争心でスタートからぶつかってきた。鹿島は序盤やや主導権を握られたものの、柴崎が組み立てに参加し、パス出しの起点になるなど、これまでとは違った色合いの攻めを披露する。そして前半16分には名古の右CKから知念がドンピシャのタイミングでヘッドを合わせ、幸先のいい先制点を挙げることに成功した。

 だが、直後に広島の新助っ人FWゴンサロ・パシエンシアに同点弾を浴びる。それでも、柴崎を中心とした鹿島のコンビネーションや連携・連動性は見ごたえがあった。鈴木優磨も下がり目の位置でゲームメークに参加。そこで名古らがチャンスを決め切っていたら状況は違っていたが、決定力不足が重くのしかかったと言っていい。

 痛かったのは前半36分の松本泰志の2点目だ。鹿島としてはいい流れで試合を運んでいただけに手痛い逆転弾だったに違いない。ポポヴィッチ監督も巻き返しを図るべく、後半に突入。後半14分に柴崎と師岡を下げ、樋口雄太とターレス・ブレーネルを投入したところで、”秘策”の3-4-2-1へとスイッチ。ミラーゲームにして相手のサイド攻撃を封じようと試みたのだ。

「相手のウイングバック(WB)にウチのサイドバック(SB)が引っ張り出された背後のスペースを使われることによって、センターバック(CB)がケアしなければいけないスペースが広くなった。それを90分間続けているとCBが疲弊し、状況によってはボランチがケアできない展開に陥る。捕まえ切れていなかったWBをまずは捕まえることを意図していた」と指揮官は説明したが、鹿島の3バック採用は滅多にないこと。中断期間に入念な準備を行えたからこそ、踏み切れたのだろう。


■濃野公人が語る手応え


「後半システムを5枚に変えて相手のミラーゲームなった中で、ちょっと攻撃が停滞したかなというのはありますね。お互いがガチッとはまってどっちも守備しやすくなったので。でも今日はこれをやるしかなかった。これからまだまだ伸びしろがあるなと感じます。

 相手が4バックで、4枚4枚のミラーになった時に流れを変えるために5バックを途中から使うというオプションが増えたのは確かだし、チームとしてはより強くなるきっかけになるのかなと思いました。5バックが生きてくるのは相手が4バックの時だと僕は思う。これからに期待してほしいです」

 濃野公人は前向きにコメントしていたが、戦術的な幅が生まれたのは確かにプラスと言える。今回は右CBに入った三竿が最終ラインとボランチを行き来することで、やや守備のバランスが崩れがちな印象もあったが、練習や試合を重ねていけば成熟度は高まっていくはず。その一歩を踏み出したことは、シーズン終盤に向けて新たな活力になりそうだ。

 実際、超過密日程の広島が70分以降、ペースダウンして、危ない場面は減った。そしてラスト8分というところで17歳の新星・徳田誉の2点目が飛び出し、鹿島は何とか2-2の引き分けに持ち込んだ。もちろん欲を言えば3ポイントがほしかったが、広島相手に勝ち点1は悪くない結果。首位に返り咲いた町田ゼルビアとの差は9に開いたが、1試合消化が少ないことを考えると、逆転タイトルの可能性はわずかに残されたと考えていい。

 残り9試合は連勝街道を驀進しなければいけない鹿島。広島戦をベースにして、より多彩な戦いを仕掛けていくべきだ。

(取材・文/元川悦子)

(後編へ続く)


 9月14日のサンフレッチェ広島戦では、長期離脱から復帰した知念慶と17歳の新鋭・徳田誉にゴールが生まれた鹿島アントラーズ。8月は3-0で勝利したサガン鳥栖戦以外、得点が伸びずに苦しんでいただけに、鈴木優磨以外の選手がゴールしたことは朗報だ。

「(先制ゴールの場面は)練習した形だった。チームとしてセットプレーに強みを持っているし、押し込まれた展開でも失点さえしなければ、自分たちはあのようなチャンスを作れるという自信もあったので、それが表れたシーンだったと思います」と背番号13は今季スタート時までFWだった男らしい得点感覚の鋭さを前面に押し出した。浦和レッズ・東京ヴェルディ戦に欠場を強いられた分、チームに目に見える結果を残したかったに違いない。それが叶ったことで、彼は自信を取り戻したのではないか。

 実際、今季J1前半戦デュエル王のボランチ不在はチームに大きなダメージを与えていた。中盤の守備力低下が攻撃のインテンシティや推進力が上がらない一因になっていたのは確かだ。知念が戻ってきたことで、即時奪回の回数は明らかに増えたし、広島の攻撃の芽を摘むシーンも何度か見られた。この守備強度があってこそ、前線のアタッカー陣も思い切って前へ出られる。知念にはここからタフに戦い続けてもらわなければ困るとランコ・ポポヴィッチ監督も考えているに違いない。


■鈴木優磨「僕は戦力だと思っている」


 そしてもう1人の徳田はご存じの通り、まだ高校3年生。鹿島の未来を背負う若きFWが後半37分という追い込まれた時間帯に鈴木優磨のパスを受け、佐々木翔を背負いながら反転シュートを決め切ったのだから、指揮官もチームメートも喜ばないはずがない。

 17歳6カ月27日でのゴールは、かつて内田篤人がマークした17歳11か月22日のクラブ最年少ゴール記録を更新した形。まさに”内田超え”の偉業だったのである。

「負けてる状況だったのでゴールしか見てなかったですし、つねにシュートを狙ってたので、自分の中で打てる形が来たなと思って迷わず打ちました。自分の体もうまく入れることができましたし、ファーストタッチもシュートを打てるところに置けたので、迷わず打てました」と本人も堂々たる口ぶりでメディアの取材に応じていたが、この時点で点取屋の風格を漂わせるところがあった。

「僕は戦力だと思っている。よく決めてくれました。左足に付けてあげれば、彼の能力なら反転して打てるなと感じていた。僕も同じFWとして気持ちが分かるので。ターレスもすごくアクセントが効いていて、今後、すごい力になってくれると今日やって感じましたね」と鈴木優磨も徳田、ターレスが後半途中から入った効果を絶賛。チャヴリッチが長期離脱している今、新たな攻撃のピースが迫力をもたらしてくれるという手ごたえをつかんだ様子だった。


■攻撃のギアを挙げる存在に


 今季の鹿島は攻撃のギアを上げる存在が乏しいと言われてきたが、ここへきて2人が調子を上げてきたのは朗報だ。後半途中から入った藤井智也も徳田の同点弾につながるドリブル突破で違いを見せており、流れを変える選手として存在感を高めつつある。今回ベンチ外となった田川亨介らを含め、もっともっと攻撃陣が切磋琢磨し、得点力を高めないといけないのは事実。それが短期間に結果となって表れれば、奇跡の逆転タイトルも夢ではないはずだ。

 このからの鹿島は柏レイソル、湘南ベルマーレ、アルビレックス新潟、アビスパ福岡と確実に勝たなければならない相手との試合が続く。さらに9月25日には天皇杯準々決勝でヴィッセル神戸とも激突する。タイトルを1つでも取りたいなら、それも落としてはいけない。ここからがポポヴィッチ監督体制1年目の鹿島の真価が問われるところ。チーム全体としてラストスパートをかけることが肝要である。

(取材・文/元川悦子)



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