YBCルヴァンカップ 準々決勝 第2戦
山本が2得点、セルジーニョも決めた!鹿島が川崎Fを撃破、ルヴァンカップ準決勝進出!
3年ぶりの聖杯奪回へ。鹿島が敵地で頂への道を切り拓いた。JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ準々決勝第2戦。川崎フロンターレとのアウェイゲーム、舞台は味の素スタジアムだった。鹿島は28分と37分に山本がゴールネットを揺らし、2-1で迎えた72分にはセルジーニョがとどめの一撃。3-1で川崎Fを破り、2試合合計4-2で準決勝進出を果たした。
4日前、聖地で迎えた“前半90分”。鹿島は不甲斐ない戦いを見せてしまった。遠藤のクロスから西のヘディングシュートで均衡を破ったものの、PKでアウェイゴールを許してしまう。後半は川崎Fに押し込まれる時間が続き、ワンプレーで2本のシュートがポストを直撃する場面もあった。だが、致命的な意味を持つ2失点目を喫することはなかった。1-1。アントラーズレッドのスタンドは選手たちを鼓舞する声を送り届け、準々決勝突破への決意を聖地の夜空に響かせていた。
「最低限の結果」という言葉が並んだが、ミスを連発してしまった90分に納得する者は誰一人としていなかった。土居も「取った後のワンプレー目がいい時と悪い時があった。展開の仕方が変わっていれば」と振り返り、「全てが次に懸かっている」と、敵地での戦いへ目を向けていた。
試合翌日から、第2戦に向けた準備が始まった。先発メンバーはつかの間の充電期間を挟み、それ以外の選手たちは虎視眈々と出場機会を窺う。全選手が集合した金曜日、そして試合前日の土曜日。ミーティングで入念な確認を施し、意思統一を改めて図った。スタンドから戦いを見届ける日々が続いた闘将が、そして指揮官がチームに檄を飛ばす。内田は「剛さんからは『次のラウンドに進むためにも、グラウンドに立ったら戦う姿勢を見せろ』と話があった」と明かしていた。
前日練習を終え、大岩監督は「複数得点を取ってしっかりと勝ち進む」と決意を明かした。百戦錬磨の曽ケ端は「当たり前にやらなければいけない姿勢をみんなで出していければいい」と、一丸での戦いを強調。第1戦はベンチスタートだった鈴木は「勝ちたいという気持ちを出していきたい」と、勝利への渇望を隠そうとはしなかった。思いは一つ、絶対に突破してみせる――。
中3日でのアウェイゲームへ、大岩監督は4名もの先発変更を断行した。最終ラインに内田と山本を起用し、両サイドバックを入れ替える形に。さらに前線にはセルジーニョと鈴木のコンビが入り、重い意味を持つアウェイゴールを狙う。その他、GKは曽ケ端、センターバックは犬飼と町田がコンビを組み、ボランチはレオ シルバと永木のペア。2列目には遠藤と安部が並んだ。そしてベンチにはGKのクォン スンテ、西、安西、小笠原、土居、金森、山口が座る。
青空の日曜日、東京都内は真夏の再来を思わせる暑さに見舞われた。大一番の舞台は等々力ではなく、味の素スタジアム。ベスト4進出を懸けた大一番へ、アントラーズレッドが続々と足を運んでいく。ウォーミングアップへと姿を現した選手たち、そこへ降り注がれるチームコール。ホーム側スタンドを凌駕する情熱が響き渡り、ボルテージが高まっていく。そして19時3分、ホイッスルが鳴り響いた。
アウェイゴールを、そして勝利を目指して戦う鹿島は開始早々に鈴木が最終ラインの背後へ飛び出すなど、果敢な姿勢を示してみせる。次第に川崎Fがボールポゼッション率を高める展開となったものの、「我慢するところは我慢して、低い位置からでもしっかり対応しないといけない」と永木が展望していたように、ペナルティーエリア内での密集と混戦でもしっかりと体を張り続け、集中力を保って時計の針を進めていった。
15分を経過した頃から、鹿島は前線のセルジーニョがボールを収めて起点となり、少しずつプレーエリアを敵陣へと押し上げていく。鈴木は体を張ったポストプレーで基準点となり続け、安部と遠藤の両サイドハーフも労を惜しまない上下動で献身を続けた。19分には中盤左サイドで連動したプレスを仕掛け、ボールを奪ってショートカウンターを発動。鈴木、セルジーニョを経由したパス交換からレオがミドルシュートを放ち、こぼれ球を拾った永木が思い切りよく右足を振り抜く。枠を捉えることはできなかったが、ゴールへの渇望を示してみせた。
少しずつ攻勢をかけていた鹿島だが、25分にピンチを迎える。ペナルティーエリア左奥まで進出され、折り返しからシュートを許すと、枠へと飛んだボールはわずかに逸れてサイドネットへ。曽ケ端はしっかりと軌道を見切っていたが、肝を冷やす場面だった。
すると27分、待望の瞬間が訪れた。殊勲のスコアラーは、どんな時でも任務を遂行する仕事人、背番号16。FKのこぼれ球から二次攻撃を仕掛け、遠藤が右サイドから上げたクロスに山本が飛び込む。ニアサイドから放たれたヘディングシュートは相手GKの頭上を越え、クロスバーをかすめてゴールネットを揺らした。1-0。大きな意味を持つ先制点、アウェイゴールを奪ってみせた。
2試合合計スコアは2-1。優位に立った鹿島は、敵陣でのプレータイムを増やしながら時計の針を進めていく。セルジーニョや鈴木が最終ラインの背後へ飛び出すプレーも増え、川崎Fを脅かしていた。アウェイゴール・ルールは、たった1つのスコアで両者の立場を対照的なものとする。反撃を試みる川崎Fをいなしながら、鹿島が主導権を握った。
そして、37分。極めて重い2つ目のスコアも、山本によってもたらされた。敵陣右サイドから永木が上げたクロスは相手GKに弾かれたものの、落下点に待っていたのが背番号16。「こぼれてくる予感があった」という仕事人は、体を寝かせながら丁寧なインパクトでシュートを放つ。まさにボレーのお手本とも言うべき、正確無比の一撃がゴールに吸い込まれた。2-0。「無失点で抑えながら、チャンスで仕留めて勝てば準決勝に行ける」。その言葉を体現する、殊勲の2得点。川崎Fに大きなダメージを与える鮮やかなゴールで、鹿島がリードを広げた。
アウェイゴールを2つ奪い、ハーフタイムを迎えることとなった。2試合合計スコアは3-1。川崎Fとしては、3得点以上を奪わなければならない展開だ。鬼木監督は長谷川をピッチに送り出し、攻撃陣の陣形に変化を加えてきた。鹿島は劣勢を強いられ、自陣深くまで押し込まれ続けてしまう。ペナルティーエリア周辺でのパス交換に手を焼き、背後を取られる場面も増えてしまった。
そして51分、ペナルティーエリア内でスライディングタックルを試みた遠藤がファウルを取られ、PKに。阿部に決められ、スコアは2-1となった。2試合合計は3-2。勢いに乗る川崎Fは、さらに前掛かりになって2点目を狙いに来た。
鹿島は何とか耐え続けた。そして59分、大岩監督が遠藤に代えて安西を投入する。その推進力で「相手の勢いを削ぐ」任務を課された若武者は、絶え間ない上下動とスピード豊かなドリブルで川崎Fの圧力を弱めていった。相手にボールキープを許す時間は続いたものの、背番号32の登場とともに、鹿島が少しずつ盛り返していった。
次第にオープンな展開へと推移する中、残り20分を切った。次の1点が勝負の分岐点となる――。そんな予感が漂う中、歓喜はビジタースタンドに訪れた。72分、主役は頼もしき新戦力。安部が繰り出したスルーパスに抜け出したセルジーニョが、冷静に左足を振り抜く。相手GKの股下を通ったボール、遮るものは何もない。ネットが揺れる。アントラーズレッドが揺れる。3-1。準々決勝突破を決定付ける、値千金のゴールが決まった。
再び2点リードを奪い、鹿島は集中力を切らさずに川崎Fの攻撃を跳ね返し続けた。81分に投入された土居、そして89分に送り出された小笠原も任務を遂行。全員で戦う姿勢を貫き通し、4分と表示されたアディショナルタイムもしっかりと戦い抜いた。
ベスト4進出を告げるホイッスルが鳴り響いた。3-1、2試合合計4-2。意地と気迫をみなぎらせて敵地で勝利を掴み、鹿島が準々決勝を突破した。聖杯奪回への道のりは続く。準決勝は横浜FMとの激突だ。第1戦は10月10日、ホームでの戦い。そして第2戦は14日に行われる。
そして次戦は5日後、14日に行われるJ1第26節の湘南戦だ。聖地で戦う、今月唯一のリーグ戦。チームは明日のオフを挟み、11日からトレーニングを再開する。
【この試合のトピックス】
・ルヴァンカップで3年ぶりとなる準決勝進出を果たした。
・ルヴァンカップでのアウェイ川崎F戦は4試合目で、初勝利を収めた。
・山本が加入後初の1試合2得点を記録した。
・セルジーニョがルヴァンカップ初得点を記録した。8月28日の天津権健戦、9月1日の広島戦に続いて、先発した試合では3戦連続の得点となった。
・曽ケ端がルヴァンカップ通算79試合目の出場を記録。新井場氏、青木(熊本)を上回り、歴代単独4位タイとなった。
【動画】マッチハイライト
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監督コメント
[ハーフタイム]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
・後半も集中した守りを続けていこう。
・グラウンドコンディションを考え、シンプルなプレーを意識しよう。
・攻撃時の、リスクを負うところ、負わないところをしっかり考えてプレーしよう。
川崎フロンターレ:鬼木 達
・1点づつ、しっかり返していこう。
・攻撃は前を使う、前に進む意識を持って。
・サイド攻撃を上手く使って。
・落ち着いて自分達のサッカーをやろう
[試合後]
鹿島アントラーズ:大岩 剛
前半にいい形で2点を取れたことが全てだと思う。後半は相手に攻められたが、非常に我慢強く守備をして効果的な攻撃を仕掛けることができた。選手たちを非常に高く評価している。
Q.安西選手の投入について
A.ハーフタイム明けに長谷川選手が入ってきて、我々から見て右サイドの推進力が高まった。そこからPKを与えてしまって1失点を喫してしまったが、安西には守備の部分と、裏返しの推進力を出してほしいと。そこで相手の勢いを削いで、効果的なカウンターにつなげることができたと思う。
Q.第1戦から4名の先発変更をしたが、意図と評価は?
A.スケジュールというものが大前提としてある中で、第1戦を踏まえてサイドの強度を攻守ともに高めたいという意図があってメンバーをチョイスした。非常にタイトなスケジュールの中で、トレーニングがままならない中でリカバリーをしながら、頭をしっかりと切り替えて、第2戦の特殊性を踏まえて臨んでくれた。非常に評価しているし(試合後には)「次の試合に向けて準備をしよう」という話もした。
Q.十分にトレーニングができない中でやることが明確だったと思うが、どのような声掛けをしたのか?
A.守備が非常に重要だということについては、第1戦を踏まえて分析をした。選手もそれを体感をした中で、相手の特長やコンビネーションを踏まえて分析してくれた。 対応策を提示したうえで、選手たちがピッチで表現してくれた。守備から攻撃へ、という典型的な試合になった。この試合の特殊性を踏まえて、プレーで表現してくれたと思う。非常に評価している。
Q.セルジーニョ選手の評価について
A.オフ・ザ・ボールやハードワーク、シュートの正確性を持っている。周囲を活かすプレー、自分が犠牲になりながら周りを活かす献身性を非常に評価している。今日もゴールを決めているし、日本のサッカーに慣れて意思疎通ができるようになった。もっと良くなっていくのではないかと期待している。
川崎フロンターレ:鬼木 達
味スタではあるが、本当に多くのサポーターが駆け付けてくれて、ホームのような雰囲気を作ってくれた。勝ち上がることができずに申し訳なく思う。この声援の中で最後まで戦えたことは次につながると思う。試合に関して言えば、一瞬の隙を見せるかどうか、得点を取れるかどうかというところで、第1戦、第2戦を通じて反省する部分があったと思う。
選手コメント
[試合後]
【山本 脩斗】
しっかりと守備から入ろう、複数得点で勝とうと話していた。押し込まれたけど、いい時間帯で取れてよかった。(1点目は)あの角度でヤスが持った時には見てくれるし、うまく抜け出して当てることができた。2点目はこぼれてくるかなという予感があって、当てることだけを考えていた。次のステージに行けるし、試合が続く中でしっかりとトレーニングからやっていきたい。
【セルジーニョ】
自分というより、チームとして3点目を取ることができれば楽になることはわかっていた。このような結果を全員で求めていたので、達成できてよかった。次のラウンドへ進むという大きな目標があって、それを全員で達成できて嬉しく思う。得点という形で貢献できたこともよかった。
【内田 篤人】
第1戦ではDFラインがふわふわしていたと思う。多少は回されてもいいと話はしていた。2-2でも良いのだから、DFラインを集めて「普通にやれ」と言った。せっかくこのチームに戻ってきたのだから、そういうことも伝えていかないといけない。
【安部 裕葵】
戦う姿勢を見せることが大事だと思っていた。自分が戦っている姿は見せられたと思う。アシストの場面では冷静にプレーすることができた。セルジーニョと相手DFが見えていて、自然に体が動いた。優勝を目指すために、次の試合も勝てるように良いゲームをしたい。
【永木 亮太】
守備は中を絞って、縦にパスを入れさせないようにしていた。センターバックの前に1人はいて欲しいと要求されたので、自分とレオが状況を見ながら対応した。アントラーズのベースは気持ちの入った試合をすること。この試合だけでなく、ずっとやらないといけない。
【町田 浩樹】
全員がしっかりと走って戦った結果だと思う。守備ではボールの取りどころをはっきりさせて、意思統一をしてプレーできたのでよかった。今日のような姿勢を全員が見せていかないといけないのだと思う。
◆2018JリーグYBCルヴァンカップ プライムステージ 準々決勝 第2戦(オフィシャル)